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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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保護者同伴

 フィーナがイレーネを連れて帝都の街中に戻ってきた頃にはすっかり日が落ちてしまっていた。

 相変わらず二人の後をレアが付いてきており

「帰らないんですか? 向こうの仕事ありますよね?」

 と、フィーナが遠回しに天界の仕事の事を問うてみても

「大丈夫よ〜! それより今はフィーナちゃんが心配なの〜!」

 帰る素振りは全く見せなかった。むしろ

「そろそろご飯にしない? お腹すいちゃった〜♪」

 これから食事時だというのに空気を読んで帰るつもりは無いらしい。

「それなら、私良いお店知ってますよ。海鮮のお鍋が美味しいお店なんですけど……」

 イレーネの提案にレアは迷うこと無く食い付いた。

「あら、お鍋なんて良いわね〜! 行きましょう行きましょう♪」

 レアがノリノリなのは言うまでもないがフィーナも鍋という言葉の響きに頭が一杯になっていた。

(海鮮系のお鍋って……何でしょう?)

 彼女の頭の中ではサーモンやタラが舞い踊りをしておりホタテが音頭を取り、エビが賑やかす龍宮城の様な有り様となっていた。

 この時点でフィーナが思い描いていたのは純日本的な鍋料理である。

 該当の店舗に入ってすぐに自分の浅はかさに後悔する事にはなるのだが……この時点ではそんな未来に気付く由も無かった。

「いらっしゃいませ〜! 三名様ですね?」

 店員さんに案内されテーブルへと移動するフィーナ達。その間もフィーナは

(お鍋♪ お鍋♪)

 と、久しぶりの和食にウッキウキだった。そして、海鮮鍋を注文し運ばれてきた鍋を見たフィーナのテンションはダダ下がりとなってしまった。

(ぶ、ブイヤベース……!)

 別にブイヤベースが嫌いな訳では無い。海鮮に野菜も摂れる料理は有り難いし美味しい事には間違いない。

 しかしフィーナが想像していたのは和風な寄せ鍋的な出汁の味が効いたあの鍋である。

 例えて言うならカレーが出てくると思っていたらホワイトシチューが出てきた感じだろう。

 勝手に誤解して勝手に期待していたとは言え……そのショックは言葉では言い表す事が出来ない程だった。

 何ならシメはうどんにするか雑炊にするかで天使と悪魔が頭の中で死闘を繰り広げていた位である。

 付け合せに運ばれてきたバゲットにフィーナは完全に落ち込んでしまっていた。

 唯一の救いは鍋に関する話をイレーネにもレアにも話していなかった事だろう。

 もし、欲望剥き出しで語ってなんかいたりしたら、なんだコイツ?的な目で見られていたであろう事は想像に難くない。

 イレーネにブイヤベースを取り分けて貰ったフィーナは

「あ、ありがとうございます……」

 覇気無く答えるのがやっとだった。

「あら〜! 美味しそうじゃない! 頂きましょう♪」

 一方のレアは相変わらずのテンションだった。三人で頂きますをしてブイヤベースを食べ始める。

「あの〜……お母様はどうして帝都に?」

 イレーネがずっと気にしていたであろう疑問を口にした。

「そりゃもう娘が心配で心配で、どこかで酷い目に遭っていたらどうしようって……この娘ったらまだまだ頼りなくてね〜」

 レアが母親然として答えている間、フィーナは一人ブイヤベースを味わっていた。魚介と野菜の旨味が詰まったスープは確かに美味しい。

 おまけにレアの話は全部口からでまかせな為、下手にフィーナが口を挟んで話に矛盾が生じるのを避ける必要がある。

 ここぞとばかりにフィーナは沈黙は金と、二人の話の聞き役に徹する事にしていたのだ。

 それはレアに話の主導権を委ねる事を意味しているのだが……話に矛盾が出てイレーネに不審に思われるより良いと割り切る亊にしたフィーナだったが……

「この娘ったら慌てん坊でしょ? だから心配で心配で。他の同僚の皆さんにご迷惑掛けていないかしら?」

「そんな亊ありませんよ〜。むしろこっちが助けて頂いてるばっかりで〜」

 レアとイレーネの会話は和やかに進んでいたが、二人がお酒を注文し飲み始めた辺りからフィーナは気が気じゃなくなってしまった。

 二人の話題はもっぱらフィーナに関する亊ばかりであまり聞かない様にはしていたものの、話題が彼女の過去の話に及んでくると無関心という訳にはいかなくなってきた。

「あの〜……アルさんって、どんな方なんですか? フィーナさんってあんまり昔の事話したがらないんですよね〜」

 酔いが良い感じで回ってきたイレーネが、フィーナが触れて欲しくない話題に突っ込んできた。

 フィーナは小さくなりながらレアが自分の気持ちを察してくれる彼女の良心に期待したのだが……

「あ〜、アルフレッド君の事かしら? 黒髪の可愛い年下の男の子でね。この娘も随分入れ込んじゃっててね〜!」

 レアに期待するだけ無駄だった。彼女はフィーナの背中をバンバン叩きながらアルフレッドの事を包み隠さず話していった。

 彼が小さい頃からフィーナが献身的にアルフレッドの世話をしていた事。

 メイド服を着てノリノリで家事をこなしていた亊。そんな二人に新たな感情が芽生えない訳も無く……レアはアルフレッドの年齢についてはぼかしながら話していたが

(小さい頃から知ってたって事は……フィーナさんって年下好き? というかショタ……)

 イレーネがその結論に至らないはずもなく彼女がフィーナを見る目が少し変わったのは自然な流れであった。

(でもまぁ、エルフ族は寿命が長いって言うし……人間の価値観とは違うのかも)

 イレーネは酒を口に運びつつそんな事を考えていた。この世界でも人間とエルフが恋に落ちる事は珍しい亊ではなくハーフエルフと呼ばれる存在も見ない訳では無い。

 その間、彼女はフィーナが真っ赤になって俯いているのに気が付いた。

(これ以上は止めておこうかな)

 空気の読める女であるイレーネはそれ以上アルフレッドについて深堀りする亊は無かった。

 しかし、すでに九分九厘は彼に関する話は終えてしまっていたので聞く必要が無くなっただけとも言える。

 話していないのは最終的な彼の年齢と別れる経緯くらいである。後はレアが懇切丁寧に面白可笑しく語り終えてしまっていた。

 食事もしながらだったのでかなりの時間くつろぐ形になってしまった。明日の早朝からの仕事に響かない様に三人の食事はそこで終了となった。

 フィーナとレアはイレーネと別れ宿屋へ向かう事に。サラマンダーを肩にのせたフィーナはかなり不機嫌だった。

「もぅ〜、フィーナちゃんったらどうしたの〜?」

 レアが話し掛けても

「別に……何でもないです」

 フィーナは素っ気なくあしらうばかりで完全に思春期の女の子とその母親という構図に落ち着いてしまっていた。

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