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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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197/821

暴れん坊皇子

 宰相シェフチェンコの屋敷に侵入したフィーナ達はヘルムートを先頭にザックとガイが後に続く形で敷地の中庭に向かって歩みを進めていた。

 すると男達が宴でもしている様な物音が聞こえてきた。

 先頭を歩くヘルムートの合図で全員が息を潜めて事の推移を見守る。

「はっはっは、宰相も相当な悪でいらっしゃる」

「何を言う、ウィンクラー。お前程ではあるまいよ。お前はキングを帝都に差し向けているではないか」

「それを利用して陛下も皇子も亡き者にしようとなさる宰相は抜け目が無い様で」

「使えるものは何でも使う、アピッツ卿。よく覚えておくのだな」

 男達はなにやらせっせとフラグを構築中の様だ。時代劇であればあと十五分も掛からずに全ては終わるのだが……

(そううまくいけば良いんですけど……)

 姿を消しているフィーナはイレーネの後ろから周囲の警戒に当たっていた。

 彼女達は、もし敵兵がわらわらと出てきたら完全に囲まれる位置に居る。

「サラちゃん、その辺よーく見ててね?」

 イレーネが近くで浮いているサラマンダーに指示を出す。

「あぎゃ!」


ービシィッ!ー


 一方のサラマンダーは敬礼みたいなポーズをすると彼女の指示通り周囲を見回し始めた。

「週末には例の者達の処刑も行われる。皇子に近付く厄介者は早い内に排除しておかなければな」

「それが終われば次は皇帝と皇子に消えてもらうと?」

「宰相がこの帝国の皇帝となられるのもそう遠くはありませんな。」

「そうだな。ウィンクラー卿、アピッツ卿、頼りにしているぞ?」


ーチーンー


「はっはっはっはっ!」

 部屋の中から酒を酌み交わす男達の声が聞こえてくる。彼らの話を聞いていたヘルムートは怒りのあまりワナワナと震えている。

「奴らめ、帝国を何だと思っているのだ……!」

 剣を手に今にも突っ走ってしまいそうなヘルムートをザックとガイが嗜めている。

「斬り掛かるのはいいが、勝ち目はあるのか? こっちは四人と一匹、イレーネの魔法があるとは言え数の差があったらおしまいだ」

 ザックはここに来て慎重な意見を口にした。正直、それを口にする段階はとうに過ぎている気がしなくもない。

(…………)

 なんというかザックは転生前の記憶が無いせいか転生者テンプレのイキりや不遜な態度が全く無く、転生者らしくない性格をしている気がする。

「俺は敵が来れば戦うだけだ。考えるのはあんたらに任せる」

 一方のガイは完全な脳筋タイプで非常に分かりやすい行動様式をしていた。

「大丈夫だ。宰相の屋敷と言えど居るのは使用人がほとんどだろう。少なくとも城の兵士よりは少ないはずだ」

 ヘルムートは討ち入りの前に希望的観測を述べた。確かに時代劇でもないのだから完全武装の兵士が高官の屋敷に詰めているとは考えにくい。

「よし、いくぞ!」

 ヘルムートは宰相達がいる部屋の前にある中庭に立つと

「宰相シェフチェンコ! お前の悪事は露見しておるぞ! 観念して出て来い!」

 窓の向こうで酒を酌み交わしているであろう宰相達に向かって叫んだ。

 何事かと宰相シェフチェンコは貴族二人を伴って中庭へと出てきた。

「これは皇子様、こんなお時間に何か御用でしょうか?」

 白々しい台詞と共に宰相は跪いた。しかし、

「黙れ! 貴様が他国と内通していた事、あまつさえ皇帝陛下すら亡き者にしようとしていた事、今更言い逃れは出来んぞ!」

 ヘルムートの一喝に宰相はさすがに狼狽え

「な! なぜそれを……!」

 自分達でさっきまで得意気に語っていたのを忘れているのか他の二人の貴族は今にも逃げ出しそうな態度だ。

「うぬぅ〜! こいつは皇子様の名を騙る偽物だ! 出合え! 出合えっ!」

 宰相が大声を発すると、待ってましたと言わんばかりに剣を手にした大勢の男達がゾロゾロと現れた。

 彼らは剣こそ手にしているものの鎧は装備しておらず、一部が皮で出来ている簡単なインナーだけを着て駆け付けてきていた。

 完全武装のヘルムート達に比べると装備に差がありすぎた。唯一彼らが勝っているのは彼我兵力差だけである。

 ワラワラと出てきた敵兵達に対しヘルムート、ザック、ガイの三人は剣を手に敵に斬り掛かっていく。

「はあぁーっ!」

「うおらぁっ!」

「おりゃあぁっ!」

 三人を前衛に置いたイレーネはすぐさま魔法の詠唱に入った。

 無防備な彼女を護衛するのはサラマンダーの役目でありサラマンダーはイレーネが攻撃されないよう周囲を飛び回って威嚇している。

(う〜ん……)

 やる事も居場所もないフィーナは適当なスペースを見つけると皆の邪魔にならない様に小さくなっているしかなかった。

 姿を消している彼女は敵味方の立ち回りの最中に邪魔になってしまうのはもちろんの事、下手をすれば味方の剣に斬られてやられてしまうかもしれない。

 そんなマヌケな事は避けたいフィーナは敵味方が入り乱れる殺陣の中では何もする事が無かった。

 仕方なく敵の後方に陣取る様にしている宰相達の動きを注視する事にした。

 下手に逃げられても面倒だし宰相以外の二人は魔法も使えていたはず……

(あの二人……!)

 地下牢での出来事を思い出したフィーナに彼らに対する復讐心が沸々と湧いてきていた。

「だああぁぁぁーっ!」


ーザシュッ!ー


 ヘルムートは剣の扱いにも長けており敵兵に遅れを取る事はまるで無い。

 どこかの征夷大将軍よろしく次々と敵兵を打ち倒していく。

「はああぁぁぁっ!」


ーズバアッ!ー


 ザックも彼に劣らず多数の敵兵をものともせずに戦っていた。

 だが、彼は敵を倒す事より後方のイレーネを護る事に比重を置いている様で陣形が崩れる様な無理な追い打ちなどはしなかった。

「ぬううぅん!」


ードゴオッ!ー


 一方のガイは完全に脳筋な戦い方だった。近寄るものは片っ端から叩っ斬る。近付くものは敵味方お構い無しの様た。

 もし近くにいたら問答無用で斬られていただろうと思うとフィーナは背中に冷たいモノを感じるのだった。

「そぉれぇ! マジックミサイル!」

 サラマンダーによってしっかり護衛されていたイレーネは大魔法を完成させ無数の魔力の弾丸を敵兵達に放った。


ーピュピュピュピュピュン!ー


 誘導された魔力の弾丸を受けた敵兵達は大きく吹き飛ばされそのまま戦闘不能となっていった。

敵兵達とヘルムート達との力量の差は歴然であり、敵兵は次々と打ち倒されてき数の優位もそろそろ保てなくなってきていた。

 こうなったらもう『先生、お願いします』的な強敵が出てこない限りは大丈夫だろうとフィーナが気の抜けた顔で戦いを眺めていると、貴族の二人がなにやら魔法を唱えているのが見えた。

 周囲の敵兵も動ける者は大分減ってきている様でフィーナが動いても特に問題は無さそうだった。

(魔法を撃たせる訳には……!)

 フィーナは素早く貴族達の前に移動すると

「な、何奴!」

「どこから現れた!」

 敵の気を引くために姿を見せ間髪入れずに

「はあっ!」


ーバキッ!ー


 貴族の股間を恨みを込めた渾身の一撃で蹴り上げた。

「うふん!」


ードシャッ!ー


 フィーナの蹴りをまともに受けた貴族の一人は内股になりながら苦痛に顔を歪めて崩れ落ちていった。

 彼に子供が居なければ御家断絶は不可避かもしれない。

「この麦わら帽子の狼藉者め!」

 もう一人の貴族の魔法は既に完成した様だ。彼は右手をフィーナに向けると

「ライトニングボルト!」


ーバババババッ!ー


 電撃の束がフィーナ目掛けて向かってきた。そのタイミングではもはや防御も回避も不可能に見えた。

「えい!」


ーパアアァァ!ー


 フィーナは瞬時にホーリーウォールを展開し電撃を防いだだけでは無く一部を貴族に叩き返した。

「ぎゃあああぁっ!」


ーブスブスブス……ー


 一部とは言えライトニングボルトの魔法をまともに浴びた貴族にそれ以上戦う力は無かった。


ードサッ!ー


 彼は全身のいたる所から煙を上げながら地面に倒れていった。

 残るは宰相だけだが……フィーナは自分の仕事では無いと判断すると再び姿を消しその場を離れるのだった。

「宰相! 覚悟!」

 敵兵の包囲を突破したヘルムートを止める者は何も無かった。

「ひいぃぃぃ!」

 宰相は剣こそ抜いていたがとても戦いが出来る体型では無かった。

 なんだったら転がった方がよほど有効な攻撃になるのではないかと思える程。


ーズバッ!ー


「こ、皇帝となるべきこのワシが……」


ードサアァァァッ!ー


 ヘルムートの一閃により宰相はその場に倒れ伏した。

「さ、宰相が……!」

「逃げろ!」

「うわあぁぁっ!」

 主が倒れたのを見て残った敵兵達も慌てて逃げ出していった。

 横から見ていたフィーナの目にも結果は明らかだった。全ては終わったのだ。

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