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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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跳梁跋扈

 何もする事が無いフィーナは情報収集と称して城の中を一人散策していた。

 目的もなく歩いた所でフィーナの場合は遭難の可能性が増すだけかもしれないが、じっとしているだけでは相手も動きは見せないだろうという事で自分から動いてみたという訳だ。

(…………)

 違う、そうじゃ無い。物理的にフラフラ動いた所で相手が都合よく動きをみせるはずも無く……。

 いつしかフィーナは自分の部屋への帰り道も分からなくなっている有り様だった。

 そういう時に限って誰とも行き会う事すら無い。城の中で進むべき方向を見失ったフィーナは途方に暮れていた。

 城というのはなぜこうも覚えにくい造りになっているのか、フィーナは異世界の城のあり方に疑問を感じずにはいられなかった。

 そんなこんなで城の中を歩いているフィーナだったが、何の収穫も無いまま日が傾き始めていた。

 一日中城の中を歩き通しだったフィーナは、疲れもそうだが足が痛くなってきていた。ヒールの高い靴はやはり疲れる。

 フィーナがどこかで腰を下ろしてヒールを掛けようかと周りをキョロキョロしながら歩いていると

「レティシア……様……?」

 ふいに後ろから声を掛けられた。振り返るとそこには少しやつれた感じの皇子ヘルムートが居た。

 なんとなく気まずくなったフィーナが軽く会釈をして立ち去ろうとしたその時

「お待ち下さい。少しお話を……お時間よろしいですか?」

 ヘルムートに呼び止められた。彼の表情にいつもとは違う何かを感じたフィーナは彼の提案に従う事にした。



 ヘルムートに案内されたのは馴染みのバルコニーだった。ここからなら帰りも安心とフィーナが考えていると

「レティシア様、私はどうしても貴女を諦められない。貴女の事を思うと居ても立っても居られなくなるのです」

 ヘルムートが自身の思いを語り始めた。いかに自分がフィーナの事を恋い焦がれているか、ルイゼが自分に思いを寄せている事を知っているが自分の感情に嘘は付けない事などを切々と語り始めた。

 いつの間にか、今の彼は最初に出会った頃の自信に満ち溢れていたヘルムートでは無くなってしまっていた。

(ヘルムートさん……)

 フィーナは今更ながら責任を感じてしまっていた。本来の歴史では自分はここには居なかった。

 能動的に動いた訳ではないとは言え、一つの国家の未来を担う青年の歴史を変えてしまったのだ。

 自分の気持ちはこの前盗賊に襲われた後に彼に伝えてはいる。彼の他に好きな人が居る事を仄めかした言い方だったが、それで諦めて貰えるものと思っていた。

 しかし、それでもヘルムートは自分の事を好きだと言ってくれている。

(……ヘルムートさん)

 受け入れて貰えないのを承知で告白してきたヘルムートに対し、フィーナは彼に返す言葉が見つからないでいた。

 二人の間に重苦しい空気が流れていたその時

「……失礼します」


ーガチャー


 給仕係の男がお茶を手に二人の所へやってきた。ヘルムートが手配していたのだろうか?

 重苦しい空気だったところなのでお茶が飲めるのはとてもありがたく思えた。

 ヘルムートも同様だったらしく出されたお茶をそのまま口に運ぶのだった。


ーカシャン!ー


 突如ティーカップが割れる音が鳴り響いた。ヘルムートが手にしていたティーカップを取り落としたのだ。

「ぐ、ぐぅ……うぁ……」

 そして喉を抑え苦しみ始めた。突然の出来事にフィーナが呆然としていると

「う、うわぁーっ! 皇子様がぁー! ひ、人殺しー!」

 給仕係が叫びながらバルコニーから出て行ってしまった。

(た、大変……!)

 フィーナは急いでヘルムートに駆け寄ると苦しむ彼にキュアを掛け始めた。


ーパアアァァー


「くはぁ……はぁ……はぁ」

 少し経つとヘルムートは苦しさが和らいだのか呼吸の乱れも収まってきた。

 キュアは解毒効果がある訳ではなく内科的な治癒効果があるだけなので体内の毒に関してはどうする事も出来ない。

 今は毒に侵された部分を瞬時に治しているに過ぎないのだ。

 だから毒の効果が無くなるか体外に排出されるまで治癒魔法は掛け続けなければならないのだが……

「お、皇子様! その娘が下手人だ! 捕えろ!」

 給仕係が呼んできたのか城の兵士達がバルコニーにやってきた。

「ま、待って! 待って下さい!」

 兵士達は治癒魔法を掛け続けているフィーナの言葉には耳も貸さずあっという間にフィーナを拘束してしまった。

「離して下さい! 今のままじゃヘルムートさんが……!」

 治癒魔法が途中なのにヘルムートと引き離されたフィーナは必死に叫んだが、大の男の力に敵う訳も無く彼女はそのまま地下牢へと連れられていくのだった。



 地下牢に入れられたフィーナを待っていたのは取り調べと言う名の暴行だった。


ーバシン!ドガッ!ー


「きゃっ! うぐっ!」

 両手に枷を付けられ天井に吊り上げられる格好で両足も枷で自由を奪われている。


ーガチャガチャー


 何の抵抗も出来ない彼女に殴る蹴るの凄惨な暴行が続けられていた。

「いい加減、白状したらどうだ!」

「バルトゥジアク卿の養女だとか言ったって所詮は落ち目の家の売女だろうが!」

「皇子様を手に掛けた事、目撃者も居るんだぞ! 言い逃れなど出来ると思うなよ!」


ーバシィッ! ドスッ!ー


「うぐっ……かはっ……」

 兵士達は理不尽な事を言いながらフィーナを代わる代わる痛めつけていった。

 散々殴られたフィーナが意識を失いかけた辺りで、何も話そうとしないフィーナに諦めたのか兵士達は地下牢から出て行ってしまった。

「強情な奴だ! 明日はもっと可愛がってやるぞ!」

 兵士達は口々にフィーナを酷く罵っていった。誰も居なくなった地下牢でフィーナが一人殴られた痛みに耐えていると何人かの男達が地下牢の中に入ってきた。

(だ、誰……!)

 また暴行されるのではとフィーナは身構える。しかし、やってきたのは兵士達では無かった。

「これが皇子が入れ上げていたエルフか」

「なるほど、確かに上玉だ」

「ぐふふ、これは楽しめそうだ」

 身なりの良い貴族と思われる中年の男性達がやってきた。

 真ん中に居る男は縦幅よりも横幅の方が長いのではないかと思える程のだらしのない肥満体だった。

「これで口うるさいバルトゥジアクも終わりだな」

 真ん中の男性が勝ち誇ったかの様な口調で話し始めた。

「残るは老いぼれの皇帝が残るだけ、宰相が皇帝となられる日も遠くはありませんな。ハッハッハ」

 真ん中の男性の右隣に居る貴族風の男がおべっかを使う。

「宰相、例の件のもみ消しはお願い致しますですぞ」

 今度は左隣りの貴族風の男がすり寄っている。殴られて意識が朦朧としているフィーナには彼らのやり取りを見ている事しか出来なかった。

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