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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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終わらない仕事

 救援が来るまで洞窟の外で一夜を明かしたフィーナ達は集落の人達の差し入れにも預かりながら翌日を迎え、無事に冒険者ギルドから派遣された冒険者達にバトンタッチする事が出来た。

 ザック達はフィーナとマリーを残して救援にやってきた冒険者達と再び洞窟内に入っていく。

 自分達が倒したタイラントスパイダーの数は把握しておかないと冒険者ギルドに請求も出来ないし、救援に来てくれたとは言え戦果を横取りされても困るので実況見分がてら洞窟内を確認しに行く感じだ。

(よくあんな怖いトコ入れますね……)

 フィーナは洞窟の中が軽くトラウマになっているのか洞窟に近付く素振りすら見せなかった。

 自分の報酬なんて良いからと後退るフィーナにはベテラン冒険者の風格も天界の女神であるという絶対的な信頼感も無かった。

 申し訳程度にサラマンダーを呼び出し同行させているが、完全に人任せな女神に人々を超越した存在であるという説得力は無い。

 とりあえず、ザック達の全滅の危機は回避出来たと判断したフィーナは天界との連絡を試みる事にした。

(レアさん……聞こえますか……? フィーナです…)

 呼び掛けても返答が無いことなど日常茶飯事である。

 特に上からの正式な案件ではない個人的な出張の時などはそれがより顕著である。

 いくつもの異世界を掛け持ちしているレアだから仕方が無い事ではある。

 フィーナが連絡を諦めたその時

(ニャ? 先輩……? レアさーん! 先輩が呼んでますよー!……ニャ)

 留守番していたミレットがフィーナの呼び掛けに気付いたらしい。

 声の感じからしてレアを呼びに行ってくれた様だが……

(…………)

 その後は待てど暮らせど天界からの連絡がフィーナに届く事は無かった。

 連絡を諦めたフィーナはマリーと一緒にザック達の帰りを待つのだった。



「いや〜! まいったまいった。奥にあんなに居るとはなぁ!」

 冒険者ギルドへの帰り道、ザックが洞窟での出来事を話していた。

「まぁね。私らだけで進まなくて良かったわよホント」

「これで今回の報酬も期待できそうだな。タイラントスパイダーの情報提供に討伐数も二十は下らねぇ。加えてゴブリンの討伐も加えりゃ……家畜分のペナルティを差し引いても十分だぜ」

 報酬の話で盛り上がる三人の後をフィーナはどこかぼんやりとしながら歩いていた。

 握った右手を左手で確かめる様にしながら……洞窟でタイラントスパイダーに捕まり助けを求めた時の事が頭から離れない様だった。

 助けを求めた手を誰かが握ってくれた様な……恐怖で怯えきった自分を安心させてくれる様な暖かな感触を感じた。

 しかし、あの場にはフィーナしか居なかったのだからそんな感覚が生じるはずがない。

 そもそも、この異世界は、以前に降りた異世界とは何の繋がりも無い同士で天界を通さなければ行き来は出来ない関係性なのだ。

 だからこの世界に降りているフィーナがアルフレッドと関わる事などありえない話だ。それなのに……

(アル……)

 フィーナはついありえない事を考えてしまう。自分は彼の居る異世界への干渉をブロックされているはず。

 だからそんな事は出来るはずがないのだ……と。

 とんなに考えたところで正解が見つかるはずもない。

 大体、手だけ向こうの世界に干渉出来たとして、フィーナの手だけが向こうの異世界に現れたらただのホラーである。

 アルフレッドがそんなホラーな状況で正体不明の手だけ妖怪を握るはずがない。

(あり得る訳ありません……よね)

 フィーナはそう思う事にして考えるのを止める事にした。

 街に着き冒険者ギルドに入ったザック達のパーティーを出迎えたのは老練な帝国騎士だった。彼の側には何故かドヤ顔のビリーの姿もあった。

「君達がタイラントスパイダーを発見した者達か。私は帝国軍のトラファルガー中佐だ。細かい説明は省略するが、君達の情報のおかげでキングの動きを察知する事が出来た。進路上の村々への避難指示も迅速に行う事が出来そうだ」

 フィーナには彼が何を話しているのがさっぱり分からなかったがザック達はある程度理解できている様だ。

 トラファルガーと名乗った騎士はキングが現れたらザック達にも協力してもらうかもしれないと言い残して冒険者ギルドから去っていくのだった。

 ザック達は冒険者ギルドの受け付けに向かうと受付嬢に今回の仕事の顛末を一から十まで説明した。特にタイラントスパイダーが依頼のあった集落の近くの洞窟に住み着き始めていた点を強調して。

 受付嬢はギルドの上層部で協議して後日報酬の額が決定する旨をザック達に伝えてきた。

 今日のところはゴブリン達から村を護衛した報酬を貰う事になった。

 角銀貨が五枚に丸銀貨が五枚というあまり高くない報酬だったが、本来はもっと楽な仕事になるはずだったのだからこの報酬では割りに合うはずが無い。

 ザック達は追加の報酬に期待しつつも、今回の報酬を公平に分ける為に席に着いて話し合いを始める事にするのだった。



「よし、今回はこれで文句は無いな?」

 各メンバーの前に角銀貨と丸銀貨が一枚ずつ分けられ話し合いはお開きになりかけていた。

「ちょっと待ったぁ! 僕の取り分は? 何もないっておかしいだるぉっ!」

 ビリーが一人抗議の声を上げた。一人鼻息荒く息巻くビリーに対しザックが

「お前、勝手に持ち場離れたろ? そのミスを帳消しにするだけの戦果を挙げた訳でもないなら、これが妥当だろ? 冒険者家業は実力第一だ。ただ居るだけで報酬が貰える様な楽な仕事じゃない」

 冷ややかに言い放った。

「まぁ、この話はあくまでゴブリン関連の報酬だ。タイラントスパイダー絡みの話は報酬が出てからだ」

 ザックは話を纏めて終わりとばかりに会議を打ち切った。フィーナが疲れた身体を休めていると

「ねぇ、フィーナさん? ちょっと飲みにいかない?」

 イレーネが何だか含みのある様な物言いで冒険者ギルドの外を指し示してきた。

「は、はい……」

 騒がしい冒険者ギルドでは落ち着けないからかフィーナはすんなりイレーネの誘いに乗るのだった。

「マリー、あなたもどう?」

 イレーネの誘いにマリーは躊躇した。成人したばかりでお酒に強くないのかもしれないが……。イレーネがフィーナから見えない様に彼女を指差し悪戯っぽくニヤついて見せるとマリーは彼女の意図を理解した様だ。

「わかりました。……ご一緒します」

 マリーは溜め息を付きながら席を立った。

「それじゃ、あなた達も男同士親睦を深めておきなさい。さ、行きましょう?」

 イレーネはフィーナの背中を押しながら冒険者ギルドを後にするのだった。

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