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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第二章 ザック編

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劣等生

 さらに翌日、フィーナとビリーは朝から射撃訓練に励んでいた。

 ビリーもさすがに身体が覚えてきたのか短弓の射撃については動きの無駄が少なくなってきていた。

 しかし、投石についてはどうにもセンスが無い。正面にきちんと飛んでいくのは三回に二回くらいで一回は明後日の方向に飛んでいく。

 さっきなど手を離すタイミングがズレたせいで石がフィーナ目掛けて飛んでくる有り様だった。

 正直、暇なのでフィーナが精霊魔法の確認でもしようかと考えていた矢先の出来事だった。

(危なくてよそ見はしていられないですね……)

 ビリーの暴投に肝を冷やしたフィーナはビリーの訓練中は目を離さない様にと心に戒めるのだった。

 実技だけではなく座学においてもビリーには問題があった。昨日の今日で教えた事が半分くらい忘れ去られていたのだ。

(はぁ……)

 これにはフィーナも落胆の色を隠せない。

 これでは明日には教えた事がまた半分になり数日でゼロに等しくなってしまうだろう。

 三歩進んで二歩下がるよりはマシだが期日が六日の状態でこれは笑えない。

「こんにちは〜! どう? ビリーの訓練はうまくいってる?」

 イレーネとマリーがビリーの様子を見にやってきた。マリーの手には小さなバスケットが握られていた。

「こんにちはイレーネさん、マリーさん」

 イレーネの質問に対してはフィーナは肩をすくめて首を振って返すのみでイレーネもフィーナの様子を見て状況を察してくれた様だった。

「ビリー、あんた今のうちに色々教えて貰っておきなさいよ? ザックがそろそろ仕事行くか、なんて言ってたから」

(次の仕事……)

 件のゴブリン退治まではまだ間があるはずだから別の仕事だろうか……?

 こんな事なら彼らの当日の行動だけではなく数日前までの行動をきちんと確認しておくべきだったとフィーナは後悔するのだった。

「次の仕事ってどんな仕事を探してるんですか?」

 フィーナがイレーネ達に尋ねてみると

「う〜ん、一番大事なのは報酬の額だからね〜。大体は討伐系の仕事が多いかな。トロールとかゴブリンとか?」

 イレーネは答えながらマリーに目で同意を求めている。そんなイレーネの視線にマリーは記憶を手繰り寄せる様に上を見上げながら

「う〜ん、困っている人達の依頼があったら金額度外視で行く事も多いですよね」

 マリーはこれまでの仕事の内容を思い出しながら語ってくれた。

 二人から話を聞いてみると、もしかしたらゴブリン退治の前にもう一つ仕事が挟まれるかもしれない。

 ビリーのゴブリン退治の予行練習に丁度良いかもしれないとフィーナは呑気に考えていた。

「フィーナぁ、これいつまでやればいいんだよ〜?」

 短弓の射撃を練習していたビリーから訓練について疑問の声が飛んできた。

 無礼な物言いのビリーに対しフィーナは無言で近付いていき


ーグリグリグリグリー


「いでっ! いでででで!」

 ビリーの頭を拳骨で挟み込んで全力で力を加え始めた。

「目上の人にはさんをつける様に。相手との距離感はきちんと図れるようになって下さい。敬語が使えない自分格好良いは早めに卒業しましょうね」

 フィーナは淡々とビリーに説教を始めた。非力で華奢なフィーナの筋力では拳骨の威力もたかが知れたものだったが、ビリーはあまりの痛さに必死にもがいている。

 少年相手に神力での電気ビリビリで分からせないだけ今のフィーナはまだ有情である。

「あの……これ、良かったら召し上がって下さい」

 マリーが手にしていたバスケットをフィーナに差し出してきた。

 フィーナ達が訓練している街外れの広場は近くに飲食店など無かったので差し入れは非常にありがたい。

「ありがとうございます。マリーさん」

 中に何が入っているかは分からないが彼女の事だし、変化球が来る事は無いだろうとマリーからバスケットをフィーナは受け取る。これで今日の昼食の心配は無くなった。



 結局、その日は一日中短弓の射撃訓練に勤しむ事となった。

 標的は藁の塊から精霊のウィル・オー・ウィスプに引かせた吹き流しを狙わせる動く標的への射撃に切り替えたが。

 動かない藁の塊相手にはそこそこの命中率を上げていたビリーも動く相手となったらとたんに命中率が下がった上、弓に矢を番える行動もボロボロになってしまっていた。

「それではギルドに戻りましょうか」

 短弓の訓練で使った矢を拾い集めながらフィーナはビリーに声を掛ける。

 吹き流しを引いてもらっていた光の精霊であるウィル・オー・ウィスプにお辞儀をすると、向こうも似たような仕草をして消えていくのだった。

 藁に刺さった矢と地面に散らばった矢を拾い集めて見てみると、昨日と今日と訓練に酷使したせいか矢の殆どが使い物にならなそうになってしまっている。

(これは……買い足しておかないと)

 訓練の後片付けをしているフィーナにビリーが話し掛けてきた。

「つっかれたぁ〜! フィーナ……さん。ギルドに帰ろうよ」

 一日中短弓の訓練をしていたからか腕が筋肉痛でパンパンな様だ。

「そうですね。ビリー、帰りに矢を買って帰りますよ」

 フィーナの言葉にビリーは大袈裟なリアクションで不満を顕にした。確かに仕事じゃないのに出費だけが増えていくのは懐にも厳しいのだろう。

「今回は私が出します。さぁ、帰りますよ」

 ビリーへの訓練は彼の為でもあるがフィーナ自身の為にもなる。二人は日が暮れていく街外れの広場を後にするのだった。



「よう、来たか」

 フィーナとビリーの二人が冒険者ギルドにやってきた時にはすでに他のメンバーは勢ぞろいしていた。

 フィーナとビリーが席に着くと二人の到着を待っていたのかザックが話を始めた。

「お前達は昼間居なかったから知らないとは思うが、街の近くの集落からギルドに依頼があったんだ。夜にゴブリン共が家畜を強奪しに来るから守って欲しいってな」

 基本的に冒険者ギルドへの依頼は日中に行われるものが多いのだが、中には夜間でなければ出来ない依頼もありこの様な事も稀にだがよくある話と言えるだろう。

「ゴブリンの数は十匹そこそこらしいわ。うちらだけでも余裕でしょ」

 イレーネがザックの話に補足気味に付け足す。パーティーの皆は割高な報酬によりやる気になっており依頼を受ける事自体は確定な様だ。

(…………)

 黙って他のメンバーの話を聞いていたフィーナだったが彼女の記憶の中に彼らがこんな依頼を受けたなんていうものは無い。

 こんなことならきちんと件の全滅の日の数日前から歴史を追っておくべきだったと後悔するのだった。

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