表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
天界の日常編(壱)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/821

女神の憂鬱

 相田冬弥の後にやってきた転生候補者達は素直に転生先に行ってくれる人達ばかりだった。

 どきらかと言うと自分が死んだ事にショックを受けてフィーナの説明に言われるがままと言った感じだったが……。

 それでも数人くらいは勘違いした転生候補者も混じっていた。

 異世界転生にどんなイメージがあるのか……ある意味、非現実的な高望みをしている様な者達ばかりだった。

「え? 異世界に転生なんだからチートくれんの当たり前だよね?」

 フィーナに対してもタメ口は基本。終始上から目線での暴言が浴びせられており、本日の仕事が始まって間も無いというのに彼女は疲れ切ってしまっていた。

 ソファーの上からフィーナ達のやり取りを見ていたミレットが少し暇になったフィーナの元にトコトコと近付いていき

「先輩、結構大変なお仕事してるんですね〜……ニャ」

 伏し目がちに話すミレットだが子猫の姿である彼女は非常に愛くるしい。仕事に疲れたフィーナはミレットを見るなり抱き抱えると

「ミレットさん、聞いてくださいよ〜。今日の人達酷いんですよ〜! 私がチートとかありませんって言ったら駄女神とか女神ガチャ外れとか……言いたい放題なんですよ? 挙句の果てには性癖の欲張りセットとかぁ〜!」

 彼女にしては珍しく怒涛の勢いで愚痴り始めた。ミレットは彼女らしくまぁまぁとフィーナを宥めているが彼女の愚痴は止まる事無く続いている。

「立て続けにチートチート言われるとなんだか自分が間違ってるのかもと思えてくるんですよね。なんか流行ってるんですかね? そういうの」

 異世界出身のミレットにチートなど言っても通じるはずも無くミレットに出来るのは苦笑しつつ首を傾げるだけである。

「もう、今日は通常の業務は終わりにして出張に行きましょうか。フレイアさんからの仕事もある事ですし」

 フィーナが気分転換がてら出張へ行こうかと思い立ったその時


ーピンポーンー


 次なる転生候補者の通知が来た。本日はまだ続くのかもしれない。あらかじめ出張の申請をしておこうかとフィーナが考えていると


ーブウゥゥゥンー


 新たな転生候補者がフィーナの元に送られてきた。転生候補者は学生服を着た中学生くらいの内気そうな少年だ。

 オドオドした様子で状況が分かっていないのか辺りをキョロキョロと見回している。

「こちらです。ソファーにお掛け下さい」

 フィーナが少年に声を掛けると少年は辺りを見回しながらソファーに腰を掛けた。

(斎藤秀一さん……、え〜と略歴は……)

 フィーナは転生課から送られてきた彼の略歴に目を通していく。

 彼の死因はよくある交通死亡事故ではなく自ら死を選んだ自殺であった。

 この場合の自殺とは自撮り等で高所でウェーイしていたら滑落死した様なおバカな不注意による事故死は含まれない。

 明確に自分の人生を終わらせる意志を持って天界に来たものに自殺の判定がなされるのだ。

 天界においては自殺による死亡者はあまり歓迎されないが、それは現世から逃げ出したとかそういった戒律や高尚な判断によるものでは無い。

 単純に天界の仕事が増えるからである。だから、そういった自殺者は纏めて魔界送りになる事が多いのだが……。

 彼の様にこうしてフィーナの元に送られてくる事自体が稀である。

(…………)

 とりあえずフィーナは転生候補者の前世の良し悪しを批評する立場では無い。

 異世界に転生する気にさせて送り出すのが彼女の仕事である。

「あの〜、ここは一体……?」

 オドオドした様子の斎藤秀一はさすがに自身の置かれた環境が気になった様だ。

 飛び降り自殺をしたと思ったら、真っ白な空間に送られ背中に手羽先を背負った女性が居るのだから状況をすぐに理解しろと言うのが無理な話と言えるだろう。

 開口一番チートなどと口走る様な、状況を超速理解する様な転生候補者ばかりでは無いのだ。

「ここは死後の世界です。あなたには異世界への転生をお願いしたいのです」

 フィーナは転生先が記された何枚かの書類を斎藤秀一に差し出した。

 今回の転生先はやや無鉄砲な性格の男性ばかりだ。いずれも冒険者や城の兵士等で比較的短い期間で戦死している人生ばかりである。

「斎藤さんは思慮深い性格の様ですから、あなたの魂が転生先の魂と協力する事でいい人生になるものと思います」

 フィーナは斎藤秀一に転生する事のメリットと彼じゃなければ駄目な理由を暗に匂わす程度に留めている。

「僕なんかで……役に立てるんですか? 僕、何も出来ませんよ?」

 斎藤秀一は恐る恐るといった感じでフィーナに尋ねてきた。

「あなたはこれから新しい人生を歩まれていくんです。前世の事は忘れてしまってかまいません」

 フィーナの案内にも斎藤秀一はあまり乗り気では無い様だ。

「死んだら全部終わると思ってたのに……」

 斎藤秀一からは依然後ろ向きな発言ばかりが出てくる。

 彼の前世の救いの無かった人生を考えればある程度無気力になってしまう気持ちは分からなくも無い。

「……私には転生を無理強いすることは出来ません。どうしてもと言うのであれば……」


ーパアァァァー


 フィーナが斎藤秀一に向け手を翳すと彼の足元に法陣が展開された。

「こ、これは……!」

 突然の法陣に彼はここに来て初めて驚きの表情を見せた。

「私がお手伝い出来るのは少なくとも生きようとする意思のある方です」

 フィーナは斎藤秀一に冷たい声で現実を告げる。本人にその気がなければ女神の力を持ってしても転生先の魂を救える見込みは無い。

「ぼ、僕はこれからどうなるんですか?」

 自分の身体が透き通っていくのに戸惑いながら彼は自身の今後が気になる様だ。

「恐らく食物連鎖の最下層となって世界に貢献していくのでしょう。次の生命、頑張って下さい」

 フィーナはあえて冷たく彼に言い放つ。その口調に斎藤秀一は初めて現実を理解したのか

「ま、待って! 待って下さい! 嫌だ! そんな人生は嫌だ!」

 斎藤秀一はここに来て初めて慌てた様子で転移の中止を求めてきた。フィーナは手を下げあっさりと転移を中止すると

「それでは、先程お見せした転生先に気になる案件はありましたか?」

 と、彼に転生先を勧める事にした。半ば脅しとも取れる様なやり方だったが生きようとする意志が無い者を救う事は女神にも出来ない。

「あの……、この人生が良いんですけど……」

 斎藤秀一は一人の人生が記された書類をフィーナに差し出してきた。


【ノイマン】

商人の家に生まれ、比較的順風満帆な幼少期を経て魔法学校に入学。魔法学校を首席で卒業後、力試しとして挑んだ魔物退治の仕事に失敗、非業の死を遂げる。


「わかりました。あなたの前世の記憶は失われますが、あなたは転生先の人間としてきちんと自我が形成されていきます」

 フィーナは彼がこれから異世界で新たな人物となって人生を全うしていく事を伝えていく。

「過去の思慮深さはお忘れになりません様に……。それでは、あなたが未来を変える事を心からお祈りしております」

 フィーナは早速レアの元に転移させる準備を始めた。再び法陣を彼の足元に出現させると、すぐさま転移作業を始める。

「それでは転生先の人生をお願いします。よい人生を」

 フィーナが言葉を言い終える頃には斎藤秀一はレアの元へ転移されていった。

「ふぅ……」

 今回の転生者も一癖ある魂だった。ソファーの背もたれにどっしりと身体を預けたフィーナは本当に疲れたといった様子で溜め息を付いた。

「先輩、大丈夫ですかぁ〜……ニャ」

 フィーナの様子が気になったらしいミレットが声を掛けてきた。どうも相当に疲れている様に見られているらしい。

「大丈夫ですよ。それじゃ、少し気分を変えて異世界への出張に行きましょうか」

 仕事の気晴らしに別の仕事をしようとするフィーナの姿勢には異論もあるかもしれないが他に気晴らしの方法が無い以上は出来る事をする以外には無い。


ーブウゥゥゥンー


 フィーナはミレットを連れレアの仕事場への転移を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ