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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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さらなる敵

 王国軍は辛うじて戦線を支えているといった状況だった。

 戦列の重装歩兵達も披露が蓄積し始め、必死の形相で戦線を支えるのがやっとという現状だった。

 それでもゴブリンを始めとした魔物達は引っ切り無しに攻撃を続け手を休める気配は全く見られない。

 考えてみれば、魔物達はは王都に来るまでの数日を歩き通しで休むことなく戦闘に突入しているのだ。

 魔物達の体力の出鱈目さには敵ながら感心させられる。

 フィーナは絶え間なく運ばれてくる負傷者の対応でパンク寸前になっていた。

 負傷者は門の向こうの聖職者達にも均等に振り分けてほしいのだが、戦場に近く重傷者だろうと完璧に治療してしまうフィーナが選ばれるのは仕方の無い事だった。

 そろそろフィーナは一人ずつ治療するのを止めて一定の範囲の人間を纏めて治療しようかと考え始めていた。

 もちろんそんな事が出来る人間など普通は居ない。

 しかし、今のフィーナは聖女として通っている。それならば少しくらい目立つ事をしても聖女だからですませられるのではないだろうか?

 それに今は人間の世界の危機である。少しくらい業務上横領になっても過失であって故意では無いし……目の前の負傷兵を治療しながらフィーナは自分の頭の中で天使と悪魔が戦っているのを眺めていた。

 しかし、天界の上司は何かと細かくちょっとした不正でも見逃す事は無い。

 私欲ではなく止むを得ない判断であっても規則第一の堅物なのだ。

 そんな上司の目の黒いうちに業務上横領などすれば、良くてサービス残業や仕事終わりの飲みという名の接待。

 悪ければシトリーよろしく魔界への出向である。

(……今は出来る事の中で最善を選ぶだけですね)

 負傷兵の治療を続けていたフィーナの脳内での天使が辛勝した頃、魔物の軍団の中でも新たな動きが出てきた。

 ゴブリン達の後方から大きな人影が出てくるのを待っているかの様に自分達の後ろを見てギャアギャア言っているのだ。

 フィーナが彼らの様子を見ているとゴブリン達の後ろから一際巨大な影が姿を表した。

 牛の頭部に下半身、筋骨隆々とした肉体は筋肉モリモリの変態マッチョマンと言えよう。

 王国ではまず見る事の無いミノタウロスの登場に王国の重装歩兵達からは驚きの声が上がる。

 ミノタウロスは大きな戦斧を持っており、あんなのを持って暴れられたりなんかすれば重装歩兵の戦列と言えどひとたまりもない。

 自信満々で前に出てきたミノタウロスにゴブリン達は重装歩兵の戦列を指差し『あいつら倒しちゃって下さいよ〜』みたいな仕草をしている。

 まるで不良の高校生が力のある先輩に頼るが如く、時代劇で言うなれば『先生お願いします』そのものである。

 しかし、その先生は王国軍後方からのファイアーボールによってゴブリン子分もろとも吹き飛ばされてしまうのだが……。

 しかし、うまく退けられたのは一部に過ぎず広域に渡る王国軍の戦線はミノタウロスやリザードマンの出現により後退を余儀なくされ始めていた。その時


ーバサッバサッバサッバサッー


 空から多数の何かが羽ばたく音が聞こえてきた。フィーナも負傷兵の治療を続けながら空を見上げてみたものの、満月の夜と言う訳でもない夜間では、飛んでいるモノが何なのかは分かるはずも無い。

 少なくとも相手が地上に近付かなければ……しかし、羽ばたきの音からそれなりの大きさのモノが飛んでいるというのが推察出来る。

 見上げると翼の生えた大きなドラゴンが悠然とこちらに向かっているのが見えた。

 フィーナに見えているという事は他の者にも見えていると言う事で……

「あれはドラゴンだー!」

「あんなの相手に戦えるのかよ!」

「もう駄目だ、おしまいだー!」

 兵士達からはさらなる敵の出現に諦めの声が出始めた。

 空を舞う影はドラゴン一匹だけでは無く他にも飛行生物が多数飛んでいる様だ。

 さすがに今の王国軍に新手を迎え打てる様な余力は無い。今、地上の魔物達を押し止めているだけでも精一杯なのだ。

 これはもう自分が相手をするしか無いと、フィーナが光の矢で空中の敵を撃ち落とす為に自分の片目に暗視の技能を付与してみたところ

(……あれ?)

 空を飛ぶ一際大きなドラゴンの頭に何か白いモノがゆらゆらと揺らめいているのが見えた。

 暗視で見ているので対象は緑がかった白い色で見えてしまうのは仕方がないのだが、どうも人らしき何かが乗っている様にも見える。空を見たフィーナがただただ困惑していると

「我が魔族領の者達が大変な御迷惑をお掛けしている! 私は魔族領の責任者、魔王サタナエルである!」

 空を飛ぶ大きなドラゴンから地上に向けて魔王の声が響いてきた。

 王国内で魔王の存在を直接知っている者は無く、もはやおとぎ話上の存在に近い。

 魔族領も呪われた大地として近寄らない様に代々伝えられているものでしか無い。

 そんな程度の周知具合なのだからサタナエルの人と成りを知る者など王国内にはフィーナとアルフレッドくらいしか居ないのである。

 突然空想上の存在に近い魔王が部下を引き連れてやってきた事に王国軍内では動揺が走っていた。

 絶望する者、神に助けを乞う者、達観している者……と、その反応は様々だった。

「これより我々は貴軍の援護に移る! 我々魔王軍のワイバーン隊五百! 不躾な者共に分からせてやる!」

 魔王のその言葉を合図に空中のワイバーン達は三方に散っていく。その詳細はフィーナにしか見えていないが王国軍としては成り行きを見守る事しか出来ない。

 ワイバーン達の背には魔族が乗っておりその姿は竜騎兵そのものだった。魔王の登場に動揺していたのは王国軍だけでは無く魔物の大群に関しても同様で空を仰ぎ見てギャアギャア叫ぶ者が増え始めた。

 自ずと魔物達が王国軍に加えている圧力が弱まり、その隙に王国軍では戦列の亀裂を元に戻す事が出来た。

 それでもリザードマンやミノタウロスの攻撃には依然劣勢を強いられていた。

 フィーナも次々に運ばれてくる負傷兵の治療に当たっていたが、魔王サタナエルが助けに来てくれた事に感謝していた。

 もしかしたらシトリーが魔界に帰るついでにサタナエルに何かしら頼んでいったのかもしれない。

 三方に別れた魔王軍のワイバーン隊は二方が東西から魔物の大群を挟み込む様に、一隊が頭上からの急降下を見せる機動を始めた。

 その様は無誘導の攻撃を少しでも命中率を高めるための同時攻撃だった。

 左右から吐き出されるワイバーンの火球、上空から降り注ぐワイバーンの火球に魔物達の大群は大混乱となった。

 特にゴブリン達は火球から逃れようと両翼の者達は中央に殺到した。

 その影響で、中央の者達は左右から挟まれて過密となり動きが取れなくなり、頭上から降り注ぐ火球の雨に為す術もなく焼かれ吹き飛ばされていった。

 空を飛ぶワイバーン相手には魔物達にも対抗策は無く、総勢五百のワイバーン隊相手にみるみる数を減らしていった。

 その時、魔物の大群の後列から何かが空に向けて放たれたのだった。

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