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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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魔王

「止めんか!」

 若い男の声が牢屋の外から聞こえてきた。その瞬間、フィーナに襲い掛かっていた魔族達の手が止まる。

 床の上に寝かされているフィーナからは声の主の姿は見えない。

「ま、魔王様……! こ、これはただの尋問でして……」

 魔族の一人がしどろもどろになりながらこちらに近付いてくる足音の主に弁明している。

 どうやら声を掛けて魔族達を止めてくれたのは魔王と呼ばれる者の様だ。

「尋問で女を襲うヤツが居るか! 頭海綿体か貴様ら! とにかく出ろ!」

 魔王の叱責に魔族達は大人しく牢屋から出て行ってしまった。

 魔族達が出ていき一人取り残されたフィーナはとりあえず藁の上に腰を下ろす事にした。

 腕の拘束は既に解かれており、魔王を見るとフィーナの拘束を解除した素振りを見せている。

「あ〜、女! ……ご、御婦人? ……女性! ……マダム!」

 魔王が何かを言おうとしているのは分かるが……。

 とりあえず彼が自分の方をチラチラ見ているので、自分の事かとフィーナが自分を指差すと

「そうだ、お前も出ろ! ……取って食ったりはせん! あ、安心しろ!」

 やや、挙動不審気味に魔王は答える。魔王は魔族達と同じ薄紫色の肌をしているが彼には銀の長髪がありオールバックの様に後ろに無造作に流している。

 黒いヤギの様な角が二本生えており他の魔族とは明らかに別格という雰囲気を醸し出している。

 顔は切れ長のツリ目が印象深い非常に整った顔立ちをしている。

 多分だが、エルフィーネが好きそうなイケメンだとは思う。

 服装は黒のマントにジャケット、黒のパンツ、黒のブーツと全身黒ずくめだ。

 ジャケットは素肌の上に着ている様で前を閉じずに肩もまる出しな為、上半身の素肌率はかなり高い。

 一方の下半身は素材は分からないが皮っぽいパンツだ。

 ブーツにはつま先と踵に金属のプレートがつけられているのが特徴と言えば特徴か。

 黒のマントに特徴は無いかと思ったら裾がジャギジャギになっている。

 よく見ればジャケットの肩の部分も同じ様にジャギジャギだ。

 さっきは魔族達を止めてくれたしこの人なら大丈夫だろうと、フィーナが警戒心ゼロで牢屋から出ると……。


ーペコリー


 さっきフィーナに会釈してどこかへ行ってしまった魔族と目が合い、彼は深くお辞儀をしてきた。

「あ、こんにちは……」

 フィーナが挨拶すると、その魔族は会釈で返してくれた。そのやり取りを見ていた魔王が

「この者が貴女がシトリー様の知り合いだと言っていてな。慌てて牢に来てみれば……危うく部下達が取り返しの付かない愚を犯すところだった。」

 ため息混じりに魔王はここに来た経緯を語った。

 どうやら、この魔族の彼が何処かへ行ったのは、魔王を呼びに行く為だったらしい。

 シトリーの名前が出てきた事でフィーナはその魔族に見覚えがあった事を思い出した。

(そういえば……!)

 いつだったかシトリーが冒険者達とトラブルを起こした時に脅しの為に召喚した魔族が彼なのだ。

 その時はいきなり召喚されたからか、シトリーが帰るまで特に何もせず会釈をして帰って行ったのだが……彼もいい迷惑だったのかもしれない。

 魔王の口からシトリーの名前が出たのはフィーナにとっては幸運だったのかもしれない。

 現在、アルフレッドの身体に乗り移っているらしいソーマを管理しているのはシトリーのはずなのだ。

 彼女に話を聞く事が出来れば事態は色々と解決に向かうかもしれない。

「あの、シトリーさんにお会いしたいんですけど……会わせて頂けませんか?」

 フィーナは魔王に駆け寄ってお願いするが魔王はフィーナの事を視界に入れようともせずに

「……す、すまない。ちょっと距離が近い。せっかくだから……その、お食事でも如何か?」

 と、食事のお誘いをしてきた。それが礼儀的なものであって好意から来るものでは無いと判断したフィーナは

「はい、お言葉に甘えさせて頂きます」

 と、にっこりと満面の笑みで答えたのだった。そんな彼女の対応にさらに挙動不審になっていく魔王だった。



 フィーナは城塞内にある、魔王が会食等で利用する迎賓室に通されていた。

 テーブルクロスのかけられた異様に長細いテーブルに、フィーナは魔王と対面する様に座らされた。

(……遠い)

 長身なはずの魔王の姿はかなり小さくなっており、シトリーの事を尋ねようとしていたフィーナも、それを諦めざるを得ない位の遠距離だった。

(私、避けられてるのかな……?)

 魔族からすれば異邦人である自分が警戒されるのは当たり前なのだが、やっぱり面と向かって避けられるのは精神的にくるモノがある。

 ちなみに、魔王は確かにフィーナを避けていたがそれが不審感からくるものでは無い事をフィーナが自覚する事は無かった。

「お待たせしました。蒸しコカトリスのサラダ、マンドラゴラソースでございます」

 白いコック帽を被った魔族達がやってきて、フィーナの魔王の目の前のテーブルに料理を静かに置いた。

「え、あの……?」

 戸惑うフィーナを他所にコック帽の魔族達は退出して行ってしまった。

 目を凝らして魔王の方を見てみると、普通にサラダを食べている。おもてなしを受けているのだから食べなくては失礼と、フィーナは目の前にあるサラダの皿に目を移す。

(これ、食べても大丈夫なのかな……?)

 いざとなったらキュアで体調は整えられる……と、胃腸薬を常備しているから多少の飲み食いは問題無いみたいなノリでフィーナはサラダを食べ始めた。

(あれ……?)

 野菜と一緒にお肉も口にしたところ肉自体は普通に蒸し鶏であり、ドレッシングもレモンの様な爽やかさがあり、意外にも食べやすいものだった。

 サラダを食べ終えたフィーナはなんとか魔王と話せないかと彼の様子を伺うが……魔王はフィーナの方を見ようともしていない。

 なんだか彼が落ち着きなくソワソワしている用に見えるのは気のせいだろうか……?その時


ーブウゥゥゥンー


 部屋の中央に魔法陣が突然現れた。紫色に光る魔法陣から女性のシルエットが見えてきたかと思うと見覚えのある女性が現れてきた。

「あら、フィーナちゃん。いらっしゃ〜い♪」

 魔法陣から出てきたのはシトリーだった。

 魔法陣から吹き出る風の影響で彼女の銀髪は風に流されていて、そのサラサラ加減を十分に見せ付けている。

(シトリーさん、良かった……)

 早々にシトリーに会えた事にフィーナは安堵し、これでソーマの足取りも追えるかもしれない……と、期待に胸を膨らませるのだった。

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― 新着の感想 ―
フィーナには魔王も緊張するのでしょうか。異様に長いテーブルが頭に浮かびます笑。
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