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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第28話

 

 ララちゃんから依頼についての話を聞いた。


 予想した通りペットのモグちゃんは街の近くに潜んでいるようだ。


 私は走って街の外に出た。


 少しでも早く新マップを見たい。その一心で地面をさらに強く蹴りつける。


 疾走すること数分後。私は驚きと戸惑いで足を止める羽目になった。


「何これ」


 視線を注ぐ先には大きな穴。大型車一台くらいならすっぽり入れそうな空洞が空いている。


 こんな穴、アップデートの前にはなかった。


 もしかしてこの中に何かいるの?


「お邪魔しまーす」


 小声での声かけを免罪符にして坑道に足を踏み入れる。


 薄暗い空間に物音が響き渡る。連続するこれは作業音だろうか。


 歩いた先にうごめく背中が映る。


 大きなモグラが二本足で立っている。とがったツメを壁に突き立てて、せっせと土を削っている。


 モグちゃんって、まさかね。


「モグちゃん?」


 試しに呼びかけてみた。


 でっぷりしたモグラが手を止めてバッと振り返った。


 思ったよりも汚い感じはない。デフォルメされているせいか妙な愛くるしさすらある。


「おわっ、人間! いつからそこに!」

「モグラがしゃべった!」


 って、ここゲームの世界だしおかしくはないか。


「ぼくをモグちゃんって呼んだね。もしかしてララに頼まれたの?」

「うん。あなたを探してって依頼されたの。じゃあ戻ろっか」

「やだ」


 即答だった。


 こんなところで穴を掘ってるくらいだし、そんな気がしてたけど。


「どうして嫌なの?」

「ララのもとに戻りたくない。ぼくは穴を掘って新天地を目指すんだ」


 新天地って穴を掘って行けるんだ。正直ちょっと見てみたい。


 でもララちゃんが待ってるしなぁ。モグちゃんの言葉を伝えたら泣き出しちゃうかもしれない。想像するだけで胸がきゅっとする。


「せめて理由を教えてよ。このままばいばいはララちゃんがかわいそうだから」

「食べ物が嫌なんだ」

「食べ物?」

「ララが持ってくる食べ物は全部まずいんだ。毒々しい色合いだし、何かうねうねしてるし、何かにょきにょきしてるし!」


 何かって二回言った。


 これは相当不満をためこんでいそうだ。


「そのことはララちゃんに言った?」

「言ってない」

「どうして言わないの? あらためてくれるかもしれないのに」

「だって、言ったら泣きそうなんだもん」


 モグちゃんが視線を逸らす。


 意図せずふっと口元がゆるんだ。


「優しいんだね」

「よせやい。ぼくはそんなんじゃないんだ」

「素直じゃないなぁ」


 愛嬌あいきょうのある顔がムッとする。


 思わずふふっと笑いがもれた。


「笑うな! ぼくにとっては死活問題なんだぞっ!」

「ごめんごめん。私がララちゃんに話してみるからさ、一度だけチャンスをくれないかな?」


 モグちゃんがう~~んとうなる。


 太い首が縦に揺れた。


「分かった、一度だけチャンスやる。ララを泣かすなよ」

「分かってるって」


 本当に素直じゃないモグラさんだ。


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