らっぱはらっぱのきゅうり小太郎とアルパカ大寒波
よろしくお願いします!
短編小説書きました!
「うーんとね、らっぱはらっぱさん、とても面白かったです。コンビ組んで三年の実力にはとても見えませんでした。もちろんいい意味で。いろんな要求をしてくる宇宙人と交渉する地球人、二人の掛け合いのテンポが良かった。うん。そしてー、中盤の爆発力で、もう観客をグッと、らっぱはらっぱさんの世界観に引きずり込んで離さない。素晴らしい。私もね、うん十年と審査員をしてきましたけど、特にツッコミの、えー、きゅうりさん? きゅうり小太郎さん? 変な名前だね〜。あぁすみません、きゅうりさんはもう少しゆっくり喋った方がいいかな。うーん、早口だと何を言っているのか分かりませんからね。それで、ボケのアルパカ大寒波さん、あはは、これもまた変な名前だねぇ〜。あ、すみません、なんだか面白い名前だったもんで。んでアルパカさんは、もっと舞台の端から端まで広く使って、動いた方がいいね。うーん、せっかくの宇宙人姿のアルパカさんをもっとたくさんの人に見てもらわなくちゃ。二人の、もっと磨かれたコントを見てみたい。今後の期待も込めてこの点数にしました」
人間役のきゅうりは真面目なサラリーマン風の衣装を着ている。髪型は六ミリの坊主頭。
アルパカは緑の宇宙人をイメージした着ぐるみを着ている。顔ハメパネルのように、顔面を楕円にくり抜いて、親しみのある丸いフォルムが馬鹿らしい。
「はい、ありがとうございました」と真剣な顔つきで深くお辞儀をしているきゅうり小太郎。
「ありがとうございました〜」と笑顔でカメラに手を振っているアルパカ大寒波。
司会の女性が、「らっぱはらっぱのお二人でした」と、締める。
テレビの映像はここで次のコント師の紹介映像に切り替わる。
きゅうりは顔をあげ、アルパカは手を振るのをやめた。スタッフが、裏へはけるように指示を出す。そして二人はテレビの舞台からはけていく。廊下にいるスタッフの横を通り過ぎる時も一人一人の目を見て会釈をしているきゅうりと、笑顔の仮面をつけたようににこやかに歩いているアルパカ。
楽屋についた途端、きゅうりは、怒りを露わにするように拳で壁を殴った。
アルパカは宇宙人の頭部を脱ぎ、「落ち着けよ」と、額にかいた汗を拭きながら言った。
「お前はあんなこと言われてなんとも思わねぇの?」と、語尾を強くしていうきゅうり。
「これが俺たちの実力なんだよ」
「これが? あんなに練習して、給料も出ない舞台に立って、ジジイにボロクソ言われて、それで最下位の点数つけられたんだぞ」
「ボロクソには言われてないって」
「言われてんだろ!」
きゅうりは血が出てしまうのかと思うほど頭を掻きむしっている。
アルパカは、きゅうりの熱すぎる漫才への想いに相違を感じて、ため息をついた。水の入ったペットボトルのキャップを開け、乾いた喉を潤した。
きゅうりは、かきむしる手を止めた。
楽屋に沈黙が流れる。
そして低い声で「だから、もっと大きく動けって言ったのに」とアルパカを睨んだ。
アルパカはペットボトルの水を飲んでいた手を止め、「え? 僕のせい? 早口でセリフが聞こえないから笑いが取れないんだよ」と嘲笑うように言い、また水を一口飲む。
きゅうりはそのへらへらして掴みどころのないアルパカに腑が煮えくり返るほどの怒りを感じた。
怒り狂ったきゅうりがアルパカに近づいていた時、バン! と勢いよく楽屋の扉が開いた。
マネージャーだ。走ってきたのか、髪が乱れている。
きゅうりとアルパカは切羽詰まったマネージャーの顔を凝視した。
マネージャーは「カメラ回ってるんで!」と言い、そして、観葉植物に隠されたカメラを指差した。両手で、すっぽり収まるほど小さい黒いカメラ。そのカメラの存在にきゅうりとアルパカは言われるまで気が付かなかった。
息を殺すように二人を撮っていたその映像はのちに上手く編集され、テレビで放送された。SNSや業界では称賛の声が多く、らっぱはらっぱは時の人となった。
しかし、きゅうりとアルパカは思った。
あとほんの少しマネージャーが扉を開けるのが遅かったら、アルパカは解散を言い出し、きゅうりは壁を殴ったその拳でアルパカを……。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
小説家目指してます!物語を作ってそれがお仕事にできたらなあと夢見ています。
何卒宜しくお願いします。




