地味に苦労人キャラかもしれない麗人騎士様
長らく更新しなくて申し訳ありません!
言い訳になっちゃうんですけど、色々と忙しくて……。
今後も気長にお待ちくださると幸いです。
ではでは、よろしくどうぞっ( ・∇・)ノ
(どうするべきかなぁ……)
シルビアは穏やかに眠る夫の寝顔を見つめながら、考える。
彼女の頭によぎるのは、ソフィアとレインのことを女王に報告するか否かという問題だった。
シルビア・アイスフィールドはアマーレ王国の騎士として女王に忠誠を誓っている。
女王の盾となり、剣となり、利益を齎すことこそが使命。
ゆえに彼女は……ソフィアとレインが言っていた、エロイーズの脚を治せるかもしれないという情報を、女王に伝えるべきか否かで悩んでいた。
普通であれば、速やかに報告すべきだろう。
もし、二人の言っていることが本当ならば。ソフィア(※姉弟子としてそれなりの付き合いなので、レインが治癒師ではないことは分かっている)は聖女と同等レベルの治癒師だということだ。いや、もしかしたら聖女以上なのかもしれない。
神殿に囲われている聖女は、多額の金という名の賄賂をせねば、診てもらうことすら叶わない。診てもらえたとしても、治せるか治せないかはまた別の話になる。
それでも人々は治る可能性が少しでもあるのならばと、神殿に救いを求める。
だが、その神殿に属さぬ治癒師がいるのならば。
その治癒師を求める、各国の争奪戦が起きてもおかしくない。
それもそうだろう。
なんせ〝欠損すら再生し得る〟治癒師だ。大抵の傷は癒せてしまえる。
となればどれだけの人々が救われるか。どれだけ戦が有利になるか。治癒能力を対価にどれだけのことが可能となるか。その利用価値はどれほど高いか。その影響は計り知れない。
だから、シルビアは敬愛なる女王陛下に、国に莫大な利益を齎すであろうレイン達のことを話すべきであった。
しかしーー……。
(ワタシの勘が告げているんだよなぁー……彼らのことを報告するべきじゃないって)
シルビアは騎士であり、Sランク冒険者だ。
既に人外へと足を踏み入れかけている存在であり、常人よりも遥かに優れている生物だ。
ゆえに、そんな自分の勘を、馬鹿にすることは出来ない。
(…………もしも女王陛下に報告したら。なーんか〝とんでもないこと〟が起きそうな予感がするだよなぁ……)
そして、その勘はまさに的中していた。
もしもソフィアに害をなせば……彼女の守護役として選ばれているレインは、ほぼ確実にシルビア達に敵対することとなるだろう。
だが、レインが敵になるだけならまだマシだ。
もしもソフィアに利用しようとしたならば。レインよりももっとヤバい奴が……モンペが、アマーレ王国に厄災を振り撒くだろう。
そう……この世界の女神という、ソフィアの信奉者が。
(…………なんだろう。すっごい危険な予感が……とんでもない、寒気が、する)
シルビアは感じたことがない危機感という名の寒気を感じて、ぶるりっと身体を震わせる。
氷魔法を得意とする彼女は寒さにも耐性があるはずなのに、そんなシルビアでも堪えるような寒気だ。逆にどれほどの危険度なのかが分かるというモノ。
(…………うん。これは報告するのは止めた方が良いな。ワザと報告しなかったのがバレたら、ワタシの立場が悪くなるだろうが……多分、ソフィアになにかあったら。そんなことよりも遥か〜に、ヤバいことが起きそうだ)
その後ーー。
シルビアはSランク会議でソフィアの秘密を知り、この時の自分の英断を自画自賛することになるのだが……。
そんなこと、今の彼女は知る由もなかった。
(取り敢えずもしもこのことが陛下にバレたら知らなかった、ということにしよう。隠し事は無理に暴かないと、ソフィアにも約束してしまったし。それにしても……はぁ〜……本当に、困らせてくれるなぁ〜!? あの弟弟子夫妻は!)
ぶっちゃけ、夫婦揃ってレインに迷惑かけまくってる癖に、お前がそれを言うか……という感じだったが。
自分のことを棚に上げたシルビアは、グチグチと心の中で愚痴り続ける。
その内ーー……何故か彼女の恨み言は弟子時代のレインにさせられた苦労の方に対するモノへと変わっていき……。(←なお、これも特大ブーメランである。)
眠りにつくまで、心の中の愚痴は延々と続くのだった。
一方その頃。
「へっくしょぉぉぉんっ! …………ずびっ」
寝ていたレインが大きなくしゃみをしたとか、しないとか。




