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今度こそ出発!※なお、何も問題なくとはいきませんでした(遠い目)


うわぁ。珍しい二日連続更新だぁ〜。


今後ともよろしくどうぞ(・∀・)ノ

 





 事情聴取で午前中が潰れてしまったが……正午頃には街を立つことができた。

 ※なお、ワズのその後は興味がなかったので二人とも聞こうとすらしなかった。一応、ガガに対して慰謝料を払わせろよとは要求したが。


 そんなこんなで。

 燦々と輝く太陽の下ーーソフィアとレインは、ほどほどに整備された土の道を、ペースを落とすことなく歩き進めていた。




「いやぁ〜……ケチが付いた出発だったが。街を出ちまえば問題なく進めてんな、今んところ」


 頭の後ろに組んだ両手を当てながら、のほほ〜んと呟くレイン。

 その言葉に、ソフィアは嫌な予感がした。特に最後の部分に嫌な予感をビシビシ感じた。

 彼女は隣を歩くレインの腕をベシッと叩きつけて、鬼気迫る様子で抗議をした。


「ちょっと!? 今のところとか言わないでくださいます!? そんなこと言ったら逆に、何か起こるかもしれないじゃありませんの!」

「えっ!? まさか俺、フラグ立てちまったかっ!? マジでなんか起きたらすまん!」

「貴方、言霊という概念ご存じ!? 言ったら本当になってしまうでしょう!」

「じゃあ、なんか起きるな。そんな気がするぅ〜」

「嫌ですわっ!! 確定してしまいましたわっっ!!」


 嘆くソフィアであったが、遺憾せん。こういう時は当たるのだ、悲しいことに。

 そして、実際に的中した。



 ーーなんと道の真ん中に……緑がかった金髪のエルフが俯せで、落ちていたのだ。



 二人は〝スンッ〟と真顔になった。

 だって、もう面倒事の気配がプンプンしていたのだ。頭の中の警戒センサーが大音量で警報を鳴らしまくっていた。

 多分、ほぼ確実に巻き込まれることになるんだろうけれど。可能であれば逆らいたい今日この頃。

 ソフィアとレインは無言のまま視線を交わし、アイコンタクトで通じ合い、無言のまま、音を立てずに倒れているエルフの横をスススッと通り過ぎようとした。

 ………………が。


「ちょっとぉぉぉ……!?!? 倒れているエルフを無視して行こうなんて、非道過ぎるんじゃないかなぁぁぁぁ!?!?」



 倒れていたエルフが、両手両足をカッサカサ動かして地面を這うサ◯子スタイルで追いかけてきた!!



「きゃぁぁぁあっ!? なんなんですのっ!? こっわっ!! すっごく怖いですわぁっ!?!?」

「ぎゃぁぁぁあっ!? 怖っ!? メッチャ速っ!? に、逃げるぞ、ソフィア!!」


 そう言ったレインは涙目で悲鳴をあげるソフィアをお姫様抱っこで抱き上げて、全速力で逃げる。めっちゃ全力で逃げた。

 それぐらいヤバかった。金髪を振り回して、両手両足をバラバラに動かして追っかけてくるエルフが、それぐらいおっっそろしい姿だったのだ。

 よくある展開ならば、ここで逃げ切れずに捕まるモンなんだろう。

 しかし、忘れてはいけない。レインは若干人外に足を突っ込みかけているSランク冒険者様だ。

 つまり……。



 ーーーーレインの超人的な脚力によって、普通に逃亡に成功したのだった……。





 *****





「はぁはぁはぁはぁ……ソ、ソフィア……大丈夫か……舌噛んでたり、してねぇ……?」


 次の街の外壁が見えるところまで来たところで、レインは足を止める。

 はぁはぁと息を荒げる彼に、ソフィアは不安そうな顔をした。


「わ、わたくしは大丈夫でしたけれど……レインは大丈夫ですの……? わたくしを抱えて走るなんて、疲れたのでは?」

「いや、別に? 肉体的には全然疲れとらんけど、さっきの◯ダ子エルフで精神的に疲れただけ」


 そう言うなりスッと普段通りになるのだから、実際に肉体的な疲労はないのだろう。

 全然問題なさそうな彼の姿に、ソフィアはホッと安堵した。


「それなら……良かったですわ」

「おぅ。心配してくれてありがとな」

「貴方の妻ですもの。慮るのは当然ですわ。それに……わたくしを運ばせてしまいましたし。重かったでしょう?早く降ろしてくださいませ」

「えぇ? このままずっと持ってても大丈夫なくらい軽いぞ、ソフィアは。てか、軽過ぎて心配になるぐらいだわ」

「…………最近はきちんと食べているからか、前よりもふっくらしてきた気がするのですけれどね」


 ソフィアは自身のお腹辺りを触りながら、そう呟く。

 王太子の婚約者時代は忙し過ぎたのとストレスとて、食事をまともに摂れなかった。そのため、必然的に少食になり……けれど女神の加護で見苦しくはない程度には、痩せていた。

 しかし、今は王妃教育もないし、強制転移も落ち着いている。ストレスからも解放され、少しずつ食べる量が増えてきていた。そうなると必然的に体重も増えていく。

 だが、レインから見るとまだまだソフィアは痩せ過ぎだ。彼はそっと彼女を地面に降ろし……華奢なその身体を見て、ほんの少し眉間に皺を寄せた。


「確かに多少は肉がついてきたけど、それでもやっぱり細い。痩せ過ぎも健康に悪いから、もうちょい体重増やした方がいいな」

「…………レインがわたくしのことを思って言ってくれているのは分かっておりますけれど。それでも、淑女レディに体重を増やそう、などと言わないことですわ。特に他の方には。配慮に欠けますわよ」

「ん? あー……こんなこと、ソフィアにしか言わねぇーよ。デリカシー云々以前に、他人の健康コトをそこまで心配する気もないしな」

「そうですの……」

「おぅ。だから、ソフィア。健康第一で、俺と一緒に長生き出来るよーに頑張ってくれよ?」


 本当に、女性に対して体重のことを言うなんて配慮に欠けると思わずにいられないが。

 それでもレインがこう言うのは、自分ソフィアの健康のためだとも理解しているため、文句も言いづらい。

 ソフィアは自分のことを考えてくれる嬉しさと、配慮の足りなさに対する呆れ混じりの溜息を零した。


「…………はいはい、分かりましたわ。健康第一、ですわね」

「そそ。じゃなきゃ、将来的にも大変だしな」

「…………ん? 将来的?」

「あははははっ。取り敢えず、街に入っちまおうーぜ。それからギルドに顔出して、情報収集して。特に目ぼしいモンがなかったらまた出発だ」

「……え、えぇ(なんか……誤魔化された気がしますわ……)」

「んじゃ、行くか〜」


 スタスタと歩き出したレインは、ソフィアの手を引いて街の入り口へと向かっていく。

 当のソフィアは「ん? んん?」と首を傾げていたが、レインがそれ以上話してくれそうになかったので、諦めて大人しくそれについて行った。

 冒険者タグを門番を務めている兵に見せ、中に入る。その際に冒険者ギルドの場所を忘れずに聞き、賑やかな市場を抜けてギルドを目指す。

 目的に着くなり、扉を開けて中に入った。

 そして…………。



 入るタイミングを間違えたことに、ソフィア達は心の底から後悔した。



「だ〜か〜らぁぁぁ! アンタ達みたいなガキがドラゴンを倒そうとするなんて百年早いわ! 出直してきな!」

「何を言う!? わたし達はここらで一番の実力がある冒険者パーティーだぞ!? 我らにかかればドラゴン程度、簡単に討伐出来るわっ!」

「ここら辺ってこの街だけの話でしょーがっ! Aランク冒険者パーティー程度の、井の中の蛙がなぁに言ってんのよ!? それに、討伐危険度が上がってんのっ! アンタらじゃぜぇぇぇったいに無理だから! 諦めな、人の話を聞かないお馬鹿どもがっ!」

「なんだとぉぉぉぉ!?!?」


 昼時を少し過ぎた頃だから、冒険者の姿は殆どない。

 けれど、その代わりに……ショッキングピンクの巻き髪を豪勢に結い上げた真っ赤なドレスを着た厳つい男性(?)ギルド職員と、まだ若い冒険者パーティーのリーダーらしきキラッキラした貴公子然とした金髪の青年が、怒鳴り合いに近い言い合いをしていた。

 どうしよう。本日二度目の嫌な予感だった。

 更に悲しいことに……レインはその言い合いをしている片方を見知っていた。

 まさかこんなところで会うとは思ってもなかったし、可能であれば出会いたくもなかったので、割と本気で沈痛な面持ちになった。

 その間も勿論、目の前の言い合いは続いている。

 忙しそうだな、と思ったソフィアは時間を改めようとレインに言うため横を向く。

 そこで彼の顔が険しいことに気づき、キョトンと首を傾げた。


「レイン?」

「…………………………なぁに」

「大丈夫ですの? すっごい顔ですわよ?」

「………………………………うん」

「えっと……もう少ししてから改めて、顔を出しますか?」

「……………………………………うん、そう、する、か……」

「え、えぇ……そうしましょーー」

「あら? あらあらあら? もしかしなくても……レインちゃんじゃないの!?」


 ーービクリッ。

 レインの身体が思いっきり震えて、顔がピシリッと固まる。

 どうやらギルド職員の方が冒険者パーティーの背後にいたソフィア達に気づいたらしい。

 前を振り向くと、そのギルド職員は嬉しそうな顔でレインのことを見ている。

 彼(?)は今まで言い合いしていた冒険者をシッシッと手を払って追い払うと、来い来いとソフィア達を招く。

 レインは「えぇ……」と嫌そうな顔をしたが、「いいから来なさいよっ!」と叱り気味で言われて嫌々前に進んだ。勿論、ソフィアの手を掴んで道連れにすることも忘れずに。


「久しぶりねぇ、レインちゃん! 元気だったかしら!?」

「…………あー、うん……久しぶり。ジーー」

「エロイーズか姐さんって呼びなさいって、前から言ってんでしょぉ!? シバくわよぉ!?」

「あ、はい……。あねさん……お久しぶりです……」


 死んだ魚のような目で挨拶をするレインに、ソフィアは驚く。

 目が濁るのは駄女神関連だけかと思っていた。なのに、今も濁っている。つまり……目の前にいる人は駄女神ぐらい、とんでもない相手だということだ。

 それを感じ取ったソフィアは、本能的な恐怖から微かに身体を震わせた。

 何が言いたいかというと、めちゃくちゃ逃げたい気分だった。

 しかし悲しいかな……そう易々と逃げ出せない。キラーンッと自称・姐さんの目が光った(ような気がする)と思えば、組んだ手の甲に顎を乗せ……にっこりと微笑みながら、レインに問うた。


「ところで? そのお隣のお嬢さんは? 紹介してくれないの?」

「…………え。あー……紹介、いるか?」

「いるに決まってんでしょお!? アタシはアンタの姉貴分よ!? 紹介して当然よぉ!」

「…………えぇ……面倒くーー」

「レインちゃぁん? シバくわよぉ?」

「…………」


 レインは嫌そうな顔をしながら溜息を零す。

 そして、仕方なさそうに渋々と紹介をした。


「こちらはソフィア。俺の相棒で嫁さん」

「へぇ〜! ソフィアちゃんって言うのねぇ〜……って。嫁ぇ!?」

「ソフィア。こっちはエロイーズ姐さん。こんな見た目でも元Sランク冒険者だ。なんでこんなとこにいんのかは知らんけど」

「…………」


 ソフィアは耳に入った言葉を、直ぐに理解することが、出来なかった。


「…………えっ。元Sランク冒険者!?」

『はぁぁ!? 元Sランク冒険者ぁ!?!?』


 だが、理解した瞬間のソフィアの驚愕した声と、未だにそこにいた冒険者パーティー(with居合わせた他のギルド職員達)の悲鳴のような声が重なる。

 シンッ……と静まり返るギルド内。誰もが黙り込み、互いに互いの顔を見回す。


『……………………』


 そして、そのまま数分ほど。ずっとそのままになった。

 なんかもう……うん。なんかもう、アレだった。



 混沌ここに極まりけり……。






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