のほほ〜んがホラーになる。
【注意】
残酷表現あり。苦手な人はバックしてね!
なんか書いてたらジェットコースター化しました。タイトル通り、ある意味ドタバタしてるかも??
書いた本人が一番驚いてます。
この場を借りてお礼!
誤字脱字報告ありがとうございます! とても助かります! 今後ともよろしくお願いします!
それでは〜よろしくどうぞ!
アリステラは幼い頃から、ちょっと夢見がちな女の子だった。
ーーいつか素敵な王子様が現れる……。
そんな日を夢見て育った、恋に恋する乙女なのである。
そんなアリステラが出会った王子様は、誰もが憧れるSランク冒険者だった。
話が通じないSランクと言われる彼らだが、彼だけは違う。
凛々しい顔立ちに、油断のない立ち振る舞い。
ちょっとニヒルな笑み。
優しい態度。
一線を画した技量。
豊富な知識。
その全てがまさにアリステラの理想だった。
けれど……彼の隣にはもう既に一人の少女がいた。
美しい顔に、洗練された所作。
誰もを魅了するような笑み。
一線を画した品格。
非常識でありながら、とんでもない潜在能力。
そして……彼女は王子様の甘い視線を一心に受けていた。
ーー王子様の隣には、もう既にお姫様がいたのだ。
…………最初は、狡いと思った。
あんなにも綺麗なのに、王子様の愛すら手に入れているのだ。狡いと、思わずにはいられなかった。
けれど……。
ーーーー今はすっっっっごい、ソフィアに同情していた。
*****
護衛の旅が始まって早五日ーー。
ーーカポカポ、カポカポ。
やっと調子を取り戻したソフィアとレインは馬車を引く馬と並んで歩きながら、阿呆っぽい会話を交わしていた。
………まぁ、本人達(及び内容)はすっごい真面目なのだが。
「ブワッてのをグワッとしてガッッとして、ギュッとすんだよ」
「ぐわぁ、ぎゅっ……こうですの?」
「そうそう〜。んで、ニュッとしてみ?」
ソフィアは〝ムムッ〟と険しい顔をして、手の上の赤い塊を団子を丸めるようにコネコネする。
そしてーー……勢いよく掴むと、みょーんっと伸ばした。
「にゅっ」
「おっ。出来たんじゃね?」
「……! やった、やりましたわ! 見てくださいませ、レイン!」
「うん。上手い、上手い。よく出来たな、ソフィア」
それは、随分とのほほ〜んっとした制御訓練だった。
いや、ぶっちゃけなんでそんな擬音塗れの説明で成功してるの? って感じでもあったが。
ソフィアとレインの会話は、まるで子供に遊び方を教えるような会話だが……やっていることはそれなりに高度だ。
膨大な魔力をこれまた魔力で圧縮し、縮小化する。それを今度は変化させて……細長いカタチにしたり、しなりを帯びた鞭のようにしたりする。
本来であれば、学園で学ぶ魔力制御。だが、それは理論と呪文で理詰めした制御法を学ぶ訳であって……こんな擬音塗れな制御法なんて有りはしない。というか、普通であれば失敗する。
なのに……。
あんな擬音塗れの説明で成功しているのだ。ガッッ、グワッ、ギュッでなんとかなるはずがない!!
横から訓練を見守っていたダナ達は、今までの常識が崩壊するような気分だった。
……………が!!
次に放たれたレインの言葉の方が、常識崩壊よりも数百倍レベルでヤバかった!!
「じゃあ、次。俺の身体で練習な」
「……………ハイ???」
その言葉に、戦慄するダナ達。
レインのやろうとしていることを知らないソフィアは、ポカンッと口を開けて固まっている。
ダナ達は思った。
〝まさかこんなに、事前練習も何もなしで……それも歩きながらいきなり本番なんて、思いもしなかった!〟ーーと。
彼らは〝えっ!? マジでやるの!?!?〟と内心大慌てだ。
しかし、レインは止まらない。
「魔力の流れを強制的に詰まらせる。失敗したら俺の身体が壊死するか、爆発するか、ソフィアの魔法の属性で燃えるだろうけど……まぁ、頑張ってくれ。んじゃ、まずは右手で止めんぜ」
「ちょっと待っーー!?!?」
ソフィアが止める間もなく、レイン言葉通り……彼の右手の色が変わり始める。
青く青く、それから白へ。その次は黒。
そして、数秒と経たぬ内にレインの右手首から先が……腐った果実のように……。
ーー〝ぼたりっ……〟と落ちた。
「「「………………エッ????」」」
「あっ、落ちた」
ソフィア達の訓練を見守っていたダナ達は、衝撃映像に言葉を失う。
口を開けたまま固まるソフィアは、キョトンとしながら自身の手首を見つめるレインを信じられないようなモノを見るような目で見つめ……。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
ーー天を劈くような、悲鳴をあげた。
「「「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?!?!?」」」
ソフィアの悲鳴に釣られて、馬車を操る手を止めざる負えなかったダナとエイジン、アリステラも悲鳴をあげる。
いや、何するかは知ってたけど! 本人に言うなと脅されていたため、何も言えなかったけれど!
でも、流石にここまでグロテスクな訓練だとは聞いていない!!
冒険者としてグロ耐性のあるエイジンはなんとか我慢出来たが……ダナと左側の護衛を担当していたアリステラはその場で勢いよく顔を背けて、嘔吐する。
「ちょっと!? どうしーー「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?!?」」
前方で起きた悲鳴に何事かと後方担当の護衛をしていたルルとリーフが慌てて駆け寄って来た。
だが、レインの右手に気づくと……ルル達も同じように悲鳴をあげた。もう悲鳴の大連鎖である。
なのに、当の本人は〝あちゃー〟と左手で額を叩いて、暢気に笑っている。
レインは右腕をプラプラさせながら、ソフィアに声をかけた。
「あははははっ、流石にこれは想定外だったわ〜。まぁ、まだ無事な部位はあるし……んじゃあ、次は左手で練習な」
「「「!?!?」」」
「それじゃあ、やるーー」
ーーガシッ!!
「ぞ?」
レインは右の手首を掴まれて、思わず立ち止まる。
掴んだソフィアは気が動転しているのかその場に立ち尽くし……顔面蒼白で、何かをブツブツと呟いていた。
(あっ。光ってら)
至近距離で彼女の顔を見たレインは、ソフィアの瞳の奥に白い光が瞬いているのに気づいた。
白い光は女神の力ーーつまりはあの、駄女神の力だ。
どうやら今のソフィアには、《女神の愛し子》の力が発動しているらしい。
「*****……《癒せ》」
呟きを途切れさせたソフィアは、瞳の奥の光を更に瞬かせながら、レインの手首を真っ白な火で燃やした。
その衝撃映像Part IIを見たなんとか吐いていないエイジン、ルル、リーフは……。
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」」」
ーーまたもや叫んだ。
もう……なんていうか……混沌だった。超絶混沌だった。
右手が落ちたことも、ソフィアがその手を燃やし始めたことも、もう恐怖しか煽らない。
ただの護衛任務のはずが……なんかもう正気度を削ってくるホラーになってしまっている。
だが……本当の恐怖はここからで……。
ーーにゅるっ……。
「あっ。手、生えた」
「「「「「…………………………………」」」」」
その言葉に、ダナ達は本気で言葉を失った。
燃え盛る火の中、にゅるっと再生した手。火が消えると、そこに残るのは傷一つない骨張った手のみ。
ダナ達は絶句する。
普通……人間の手が落ちたら、再生するはずがないのだ。魔法が存在しても、身体の欠損を治すことは出来ないはずなのだ。
なのに……なのに……!!
(((((コイツ……手ぇ、生やした……!?)))))
彼らの視線は化物を見る目である。ドン引きしている。
恐怖が過ぎると、一周回って(?)冷静になるらしい。実際は違うかもしれないが、怖過ぎてダナ達は逆に冷静になっていた。
レインは治った手を天に翳して、グーパーを繰り返す。
そして、にっこりと今だに顔面蒼白なソフィアに笑いかけた。
「まぁ、うん。俺の予定とは違うが……まぁ、おめでとう! 火属性の最高位治癒魔法を覚えたっぽいな」
「……………………」
ーーゆらり……。
ソフィアの目にさっきとは違う胡乱な光が宿り、なのに彼女は美し過ぎるほどの完璧な笑顔を浮かべる。
後にダナらは語る。
「レイン」
「おぅ」
「いっぺん、死んでくださいませ」
ーーバヂィィィィィィィイィンッ!!
「ごふっ!?」
Sランク冒険者の意識を刈り取る平手打ちを見て、絶対ソフィアさんを怒らせちゃいけないと思いましたーーと。
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