コミュ障魔法使いの独白〜彼女は危機察知に優れてる。〜
ルルさん目線ですね。
という訳で、よろしくどうぞー。
ルルは魔法に関してのみ饒舌だが、基本的には人見知りだしコミュ障だ。
しかし、人を見る目だけはあると思っている。
魔法学校ーー魔法の才能がある人ならば、平民だって入学出来る学校のことーーで、人見知りを理由に虐められていたので……どの人は安全とか見分けられるようになったとも言う。
まぁ結局、何が言いたいかというと……。
ーールルは、レインから漂う危険な匂いを敏感に察知した。
Sランクにしては話が通じる部類ーー多分、頭おかしい人の集まりの中では一番マシな人ではあるのだろうけれど、それでもやっぱりSランク。
上手く取り繕っている裏側で、ちょいちょい垣間見える闇(?)が恐ろしい。
だって、選ばなくてもいいのにワザと酷い方の選択をして。他の人が傷つけるよりも自分が傷つけた方がマシだからと、勝手に命を賭けるのだ。相手に何も言わずに自分の命を背負わせるのだ。
重い、重過ぎる……。
顔があまりにも良いからルルは惚れかけたが。流石にシレッと命を背負わせてるような男はご遠慮願いたい……。
あぁいう男は、下手をすると……更にヤバい方向に超絶危険系進化しかねない……。
恐い、恐過ぎる……。
世界には〝私のために命を賭けてくれるのね♡〟ってなるタイプの女性もいるだろうが、ルルは至って普通な小心者なので無理だ。
というか……そんな危険そうな男を相手にしているソフィアは大丈夫なのだろうか? とルルは不安を抱いた。
その内、監禁とかされちゃうんじゃないかと他人事ながら心配になる。だが……彼女は直ぐにその考えを改めた。
だって、思い返せばソフィアも時々、目が濁っていた。レインと同じベクトルの危険度を感じる時があった。
魔物が襲ってこない状況が平和過ぎて吐きそうだとか言っていたぐらいであるし。なんだかんだでレインのスキンシップを受け入れて、照れて殴って、一緒の部屋で寝てたりしてるのだ。なんか理由があればなんでも受け入れちゃいそうなソフィアではあるけれど……。
今の二人の間には明確な関係性とか感情とかはなくても……多分、あの二人は噛み合ってなくて上手く噛み合っているのだ。
なんだかんだで甘やかされてるソフィアは嬉しそうだったし。レインも甘やかしてる時はヤバそうな感じはしないので。
多分、ソフィアという生贄ーーごほんっ。相棒がいる限り、レインという闇深魔もーーごほんっ。Sランク冒険者は、ソフィアのことでいっぱいになるから逆に安全(?)になるのだろう。欠けてる部分がある方が不安定ってヤツである。レインの欠けてる部分をソフィアが補っているのだ。
だからルルは、ソフィアとレインの関係に割り込むべきではないという考えに至った。
レインに抱いていた淡い恋心なんか存在しないかったことにしたルルは、傍観者に徹するという正しい選択を選んだのだ。
…………なお、あの二人を横から冷静に鑑賞してみると結構面白いと後に知る。
そんなこんなで……。
シレッと安全圏に逃げたルルの心の中に残った懸念は後一つ。危険圏内にいるアリステラの抱く、彼への淡い恋心のことだった。
アリステラの安全(?)のためには、直ぐにでも木っ端微塵に叩き折って、諦めさせるべきなのだが。生憎と彼女は箱入り娘、恋に恋する女の子なのだ。ついでに言うと、ルル的には可愛い妹分だと思っている。
なので、出来ればアリステラの夢を壊さないであげたい。〝叶わない恋だったけど、良い思い出だったな……〟って感じで、自然にフェードアウトさせたい。
…………まぁ。自然にイチャイチャしている二人なので、否応なしに自分には望みがないと理解するだろうが。というか、理解しなかったらアリステラの未来は多分ない。ヤバい。
(…………なんと言う、か……特に普通の護衛依頼のはずが……思わぬ護衛依頼に、なりました……?)
そう心の中で呟いたルルは、スンッ。とした顔と薄目で……ソフィアをお姫様抱っこするレインの後ろ姿を見つめるのだった……。
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