悪役令嬢と転生冒険者のデコボコパーティー結成
本日2話目! 暫くは同じ時間に、連日投稿します!
では、よろしくどうぞ〜!
さて……少し、話は変わるが……。
ーーーーこの世界は、女神に見守られている。
しかし、その女神は根っからの女神ではなく。
とある異世界からの転生者であり、先代の女神(この世界産)から女神の力を受け継いだだけに過ぎなかった。
元異世界人女神は、俗に言うオタクだった。
そして、自分が守護することになった世界が乙女ゲームの世界だということに「テンプレやんっっ!」とツッコんだ。
《愛のベーゼで世界を照らす〜五人の王子と光の聖女〜》。
RPG要素がかなり強く、ダンジョンに学園メンバーと潜ることでレベルを上げ……ついでに学園生活で攻略対象達の好感度も上げ。
最後は愛と勇気と、武力を持ってとあるダンジョン(魔王城)に住む魔王を倒す乙女ゲーム(疑)である。
ここまで話せば、察しの良い人は理解しているだろう。
ソフィア・スターリン公爵令嬢は、ご想像の通り〝悪役令嬢〟だ。
艶やかな黒髪に鮮やかな紺碧の瞳。キツめの顔立ちと出るとこ出ている身体つき……もうソフィアの存在自体がテンプレである。
そして、乙女ゲームのシナリオも勿論テンプレで。簡単に流れを説明すると……。
一、聖なる力を持つ主人公アルルが学園入学。
二、その天真爛漫さやら聖なる力を持つやらで、高位の子息達(王太子など)と親しくなること。
三、王太子の婚約者ソフィアに敵対視される。
四、成績の都合上アルルとソフィア、高位の子息達は同じパーティーを組むことになる。
五、実習で潜ったダンジョンでアルルが転移トラップを踏んだことで、ダンジョン最下層に転移し……ミノタウロスに襲われる。
六、アルルはヒロインなだけあって、攻撃され意識を失う程度で助かるが……ソフィアは助からず死んでしまう。
七、自分の所為でソフィアが死んだことにアルルは後悔する。だが、王太子達の交流で傷ついた心を癒していく。
八、だが、そんな中で魔王による進軍が始まり……ダンジョンで死んだため魔王の支配下に入ったソフィアを始めとした魔物達と戦うことになる。
九、愛の力で魔王を倒し、世界を照らす(?)
だいたいこんな感じである。
ぶっちゃけ、自分の婚約者と親しくされたら敵対視されるのは当然だし……素晴らしくご都合主義であるし、シナリオがちょっと杜撰だし。
というか、レベリングが中々に鬼畜(レベルが上がらねぇ)なため……「これ、乙女ゲームじゃねぇよっっ! RPGだよ!」と、数多のファンを泣かせてきた。
そして……当代女神は、「悪役令嬢悪くないよねっ!? いや、確かに敵対するけど……ヒロインの所為で死んで、死んでからも魔王に利用されるとか一番の被害者じゃねっ!?」勢であった。
…………とまぁ、そんなこんなで。
当代女神は考えた。
「私が見守る世界なんだよね? なら、都合よくしてもいいよね?」
…………ある意味、悲劇の始まりだったかもしれない。
女神は誤魔化しようのない、脳筋だった。
RPGではタンクとかヒーラーとか魔法とかをバランス良く配置するタイプではなく、物理で殴れと判断するタイプだった。攻撃が最大の防御だと本気で思っていた。
そのため、ミノタウロスに殺されるなら、悪役令嬢が強くなればいいのだという考えに至ってしまった。
ゆえに、彼女はパパッと塩をかけるようなノリでソフィアに女神の祝福を与え……ソフィアを物理攻撃強化と身体能力上昇と火属性特化(※攻撃力が上がる)という、ヤベェ令嬢に進化させた。
そして、「力をゲットしたら訓練が大事だよね!」とか考えちゃって……ソフィアを幼い頃から色んなダンジョンに放り込むことにしたのだ。
当時、ソフィア六歳のことである。
いきなり女神の祝福を与えられて、日常的に「今からダンジョンに転移させるよ〜」とか暢気な声が空から降り注ぐと共に、唐突にダンジョンに転移させられて。
「貴女には物理攻撃力と火魔法があるよ! 頑張って!」なんて他人事なアドバイスだけもらって、レッツサバイバル。
幼いソフィアが女神を怨むのは至極当然だった。
だが、生き残りたいソフィアは死に物狂いでなんとかするしかなく……。
そうして……魔法を使って優雅に戦う(あるいは戦い慣れしていない)貴族令嬢ではなく……彼女は《武闘派令嬢》とも言える存在になってしまった。
悲しいことに、拳(※武器はソフィアの怪力に耐え切れず、壊れてしまう)で敵を殴り(抉り?)殺していくスタイルは王太子妃としてちょっとドン引かれるモノだ。
そのため、ソフィアは他の貴族子息令嬢の目が多い学園では基本的に拳を使わずにいたのだが……。
今回、気を失ったアルルを守るために自身の婚約者が攻撃してきて、生贄としたことで、ソフィアはその拳を解放した(これ冒頭ね)。
そして、一応何かあった時用にソフィアを助け隊として用意されていたレイン(転生者であるため、当代女神が「君、ソフィアちゃんに何かあったら助ける係ね!」と強制任命された。同じように祝福され、ダンジョンにランダム放り込まれる日々)と出会うことになったのだ…………。
*****
「マジであの駄女神殺してぇ」
「わたくしもですわ」
殺伐と、魔物達を殺していくソフィアとレイン。
ソフィアはダンジョン攻略(帰還?)の片手間で、レインの事情を聞いて呆れたように溜息を零した。
「…………というか、あの駄女神……自分の同郷の方(無関係)を巻き込むとか……馬鹿じゃないんですの……? 申し訳ないですわ……」
「それ言ったら、アンタも巻き込まれたんだろ。何そのクッソな人生。悲劇過ぎんだろ……」
「殺意の多い人生でしたわ」
「だろーな」
レインは双剣を巧みに操り、牛型魔物の首を搔き斬る。
周りに魔物の気配がなくなったことを確認してから、二人は戦闘態勢を解いた。
「というか。聞いてた話だと、あんたの仲間? パティメン? があんたを攻撃するようなシナリオじゃなかったよな?」
「…………そうなんですわよね……。確か、駄女神の話だと、わたくしが他の方達に追いつけなくて、殺されるといった流れだったはずなのですが……。普通にパーティーメンバーに攻撃されて、生贄させられましたわ」
「これ、駄女神の所為だと思う?」
足を進めながら、周囲への警戒を怠らないレインはポツリと疑問を零す。
ソフィアはその後を追いながら……顎に手を添えて、考え込んだ。
「…………どう、かしら。あの駄女神は気に入った人間にしかちょっかい出さないと思いますが……」
「あー、確かに……。ってことは、少なくともアンタの婚約者達が駄女神の影響を受けてる可能性は低いか」
「ただ、女神の祝福を受けているわたくしから派生した影響がある可能性はありますが」
「あははっ、まっさかぁ〜…………いや、あの抜けてる馬鹿女神なら、あり得そうだな……かけた本人だけじゃなく周りにも悪影響与える感じの……」
「…………でしょう……?」
「そう考えると、本当に碌でもねぇな……アイツ……」
「「…………」」
……無言で顔を見合わせたソフィアとレインは、取り敢えず、再度出口に向かって歩き出すことにした。
少し歩いてから……レインはふと思い出したように「あぁ、そうだった」と呟く。
そして、沈黙を破るように彼女に質問した。
「ところで……アンタ、これからどうすんの?」
「……どうする、とは?」
「下手したら死亡したって伝えられてんじゃねぇーの? 自分を殺しかけた奴らんとこ、戻れる?」
「…………あぁ……」
ソフィアは大きく目を見開き……眉間を揉みながら、疲れ果てた声で答えた。
「無理、ですわね」
「だよなぁ……」
もし無事に戻ったとしても。
ソフィアが真実を話したとしても、真実は隠蔽されるだろう。
向こうの方が多数であるし、王太子の凶行など隠さずにいられない。
それどころか、死にかけた所為でこちらが狂乱していると判断されるのは想像に容易い。
下手をすれば……再度、命を狙われるかもしれない。
ソフィアは大きな溜息を零して、呟いた。
「…………これから……どうすれば……」
「そんなの、俺と一緒に来るしかないだろ」
「…………え?」
「俺は思うんですよ、ソフィアさん」
レインはピタリと足を止めて、にっこりと笑う。
だがその笑顔は純粋なものではなく……中々にドス黒い殺意を内包した笑みだった。
「どっかの国じゃあ女神と言葉を交わせる巫女なんてもんが存在するらしいじゃん? ってことは、この世界のどこかに、女神に直接会う手段があるんじゃないかなぁって」
「………まさかっ……!」
ソフィアは彼の言いたいことを察し、口元を手で覆う。
「ちょっと駄女神にクレーム言うための旅に出ません?」
「乗りましたわぁ!」
こうして。
世にも奇妙な悪役令嬢と異世界転生者のデコボコパーティーが成立したのだった……。
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【駄女神祝福(という名の呪い)・説明】
《ソフィア》
・強制ダンジョン転移
駄女神が脳筋だったため、「強ければ破滅しないよね!」的な理由でソフィアを鍛えるために強制的にダンジョン転移させられていた。
ところ構わずなので、無駄にサバイバル能力が上がった。
ダンジョンボスを倒した後は、女神の力(?)で帰らせてもらえていたので……そこだけは救いだった。
・物理攻撃強化
そのまんまの意味。
・身体能力上昇
ダンジョンサバイバルで更に成長したよね。
・火属性特化(※攻撃力が上がる)
属性ごとに補正が入る。
火…攻撃力アップ
水…魔力アップ
土…防御力アップ
風…素早さアップ
光…回復量アップ
闇…状態異常耐性アップ
《レイン》
・強制ダンジョン転移
駄女神と同郷だからいう理由で、「悪役令嬢ソフィアを救うために強くなってね!」と強制転移させられていた。
なお、ソフィアと違ってダンジョン攻略後の帰りも自力。アフターサービスがない。




