それはある意味、運命の出会いーー。
新連載でーす。
他の作品がちょっと行き詰まったので、息抜きで始めました。ご都合主義なので、頭空っぽにして読むのだ!
なお、話が合わないなと思ったらお戻りください。自衛、大事だよ!
「ソフィア。君の犠牲を、我々は忘れないよ」
なんて、最低なのか。
彼女はそう思わずにいられない。
『GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
洞窟型のダンジョンの最下層。
後方から迫る三メートル近い巨大なミノタウロス。
捻り上がった巨大な角、醜悪な牛の顔、屈強は肉体。
その手には簡単に人を真っ二つにできるほどの大斧。
そして、目の前には彼女を攻撃し、ミノタウロスへの生贄として逃亡を図るパーティーメンバーの後ろ姿。
絶望ーーまさにこの一言が相応しい状況下で……。
ソフィア・スターリン公爵令嬢はブチ切れた。
「ふざけんじゃないですわよぉぉぉっ!」
ーーバキンッッッ!
『GUGA!?』
地面にヒビが入るほどの豪力を以って飛び起きた彼女は、自身を囮にした仲間を追うーーことはなく。地を這う獣のような瞬発的な動きで、ミノタウロスと距離を詰めた。
人間という脆弱種がまさか歯向かってくるなんて思いもしなかったミノタウロスは、まさかの行動にほんの一瞬だけ動きが鈍る。
その隙を見逃さなかったソフィアは、胸に満ちた激情ーー怒りに身を任せながら、身体強化魔法を発動し……。
肉食獣が獲物を爪で裂くように。勢いよくミノタウロスを横っ腹に指をめり込ませ、ミノタウロスの肉塊をごっそりと抉り取った。
『GUMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?』
悲鳴のような咆哮がダンジョンに響き渡る。
ミノタウロスにとって、人間とは壊れ易い玩具であった。逃げ惑う玩具であった。絶対的な弱者であった。
だが、目の前にいる女は違う。
荒れ狂う獣のような雰囲気を纏う彼女はーー自身よりも遥か高みにいる強者だ。
紺碧の瞳に貫かれたミノタウロスは、構えられた手刀に、自身の死を悟る。
「死・に・さ・ら・せ・!」
ーーザンッ!!
空気を斬り裂く音と共に、ミノタウロスの首が狩り取られ、噴水のように噴出した赤で、ソフィアの艶やかな黒髪や白磁の肌が染まっていく。
その姿はまさに狂戦士。
ソフィアは荒い息を吐きながら、令嬢らしからぬ般若の如き顔で舌打ちをした。
「ほんっとう信じられませんわ!」
「いやいや、信じられないのはこっちなんだけどな?」
「んぅ?」
ギロリッと背後を振り返れば、そこには口元を手で覆い堪え切れないと言わんばかりの顔で肩を震わせる白皙の青年の姿。
キラキラとした空色の髪やら整った顔やらで服さえ違えば貴族と言われても納得しそうな美貌を持っているが……動き易さを重視した軽装備や帯刀した双剣などから見て、冒険者だと思われる。
ソフィアは指をゴキゴキと鳴らしながら、怒りを隠さぬ様子で告げた。
「誰ですの。今なら貴方の肉も抉り取って差し上げますわ」
「なんでそんな物騒なの!? 肉抉るとかグロテスクだから、止めてくんね!? アンタ、令嬢だろ!? なんなんだよ、その狂戦士っぷりは!?」
「煩いですわ、死んで下さいませ」
「アンタを助けるためにここまで来させられたのに、殺されるぅ!?」
「………………はぁ?」
ピタリッと動きを止めたソフィアは、胡乱な顔で彼をジロジロと見つめる。
「助けるぅ? 後始末の間違いではなくって?」
「んな訳あるか。駄女神にアンタを助けろって命令されたから強制転移させられただけだっつーの」
ーーピクリッ……!
ソフィアは〝駄女神〟と聞いて、一瞬で警戒心を解く。
それどころか……憐れむような視線を、遠い目をしている彼に向けた。
「…………あぁ……もしかして?」
「おう。悲しいことにあの駄女神の祝福を受けちゃってる悲しいSランク冒険者レインとは俺のことだ」
「…………oh……」
ソフィアとレインは互いに遠い目をしながら、乾いた笑みを零す。
そして、無言で歩み寄ると……ポンっと無言で相手の肩を叩きあった。
「同志よっ……!」
「共よっ………!」
二人は若干涙目になりながら、こんな面倒ごとに巻き込んだ駄女神を怨むのだった……。
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