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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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【入替】のスキル

 それが偉大な目的の全容か。同情はするが、共感は全くできない。



「復讐と言うのなら、お前達をイジめた奴等にだけ復讐すればいいだろ。関係のない人間を巻き込んで何の意味がある?」

「意味ならあるさ。僕達以外にも学校という環境のせいで苦しんでいる者達は大勢いる。全ての学校を消してしまえば、そういう不幸な者が生まれずに済むだろう?」



 俺の脳裏に真冬の顔が過ぎる。真冬もその環境の犠牲となった者の一人だ。しかし真冬はこいつらとは全く違う。真冬は無関係な人間を巻き込んだりなど絶対にしない。



「滅茶苦茶だな。お前のやっていることは復讐じゃない。ただの八つ当たりだ」

「何とでも言うがいい。君みたいな凡人に僕の考えを理解してもらおうなんて思ってないからね」



 ま、こいつの考えなんてどうでもいい。別に俺は説教しに来たわけじゃないしな。それにどうせ俺がこいつを殺せば、その野望も夢と消える。それよりも一つだけ分からないことがある。



「だったら何故、児童養護施設の先生を殺した?」



 そう。一見こいつの目的と、春香の先生の殺害は何の関係もない。俺の問いに、雪風は怪訝な顔で首を傾げた。



「……児童擁護施設?」

「惚けるな。殺したのがお前だということは分かっている」

「全く身に覚えがないな。人違いじゃないかい?」

「……!?」



 そんな馬鹿な。春香の話だと、犯人は氷のスキルの使い手のはず。だから俺達はその犯人が雪風だと確信した。しかし雪風が嘘をついているようにも見えない……。



「いやしかし、あの時は驚いたよ。いざ氷世界を展開しようとしたら、なんと君達が屋上で闘い始めたんだからね。他の参加者が現れたのはさすがに想定外だった」



 校舎の屋上で俺と朝野が闘った時のことか。俺もまさか新たな参加者が介入してくるとは思わなかったから、こっちこそ驚きだった。



「最初からお前の狙いは俺達ではなく、陸奥高校に通う生徒達だったのか」

「そう。正直僕は転生杯には何の興味もない。復讐さえ果たせればそれでいいんだ。しかしまあ、僕達に敵う者なんていないだろうし、結果的に僕達が最後まで生き残ることになるだろうね」

「……ハッ」



 思わず俺は失笑した。



「何がおかしいんだい?」

「地中に引き籠もるような臆病者が、転生杯で最後まで生き残るだと? これが笑わずにいられるかよ。現にお前は俺一人にすら手こずってる有様だ。もっと現実を見たらどうだ?」

「……ふん。身動きも取れない状態で、よくそんなことが言えたものだ。これから僕に殺されるというのに、現実を見るべきなのは君の方だよ」



 どうやら俺が動けないとすっかり思い込んでるようだ。そろそろこいつの自分語りを聞くのも終わりにしよう。肝心なところは話が噛み合わないし、時間の無駄だったな。



「お前、言ったよな? ここは僕にとって圧倒的に有利なフィールドだと。それは俺も同じだ」

「……どういう意味だ?」

「俺がどうやってここまで来たか、忘れたのか?」



 俺の身体を固定している氷を力ずくで破壊してもいいが、もっと良い手がある。完全に油断しきっている今が絶好のチャンスだ。


 スキル【潜伏】を発動。壁に磔にされていた俺は、そのまま溶け込むように壁の中へと潜った。


 本来【潜伏】を使って壁に潜ったりはできないが、それは地上での話。【潜伏】は地中に潜るスキルなので、地中に存在するこの部屋においては、どこからでも潜ることが可能というわけだ。



「スキルか。それで僕に奇襲をかけるつもりかい? 姑息な手を――」



 何かに気付いたように、雪風の言葉が止まる。そう、俺の狙いは雪風ではない。地中を移動する俺が向かう先は……。



「貴史! 今すぐ僕の傍に――っ!?」



 雪風弟は動けなかった。何故なら弟は、先程雪風が出現させた氷の壁に周りを囲まれていたからだ。すぐに氷の壁を解除する雪風だったが――



「遅い!」



 既に俺は地中から飛び出し、弟の背後に立っていた。そして弟の首根っこを掴み、宙に持ち上げる。



「貴史!!」

「うぐっ……!!」



 呻き声を上げる弟。そして発動条件が満たされたことにより、スキル【略奪】が発動。俺の脳裏に〝入替〟の二文字が浮かび上がった。


 これが弟のスキルか。なんだか凄く久々にスキルを手に入れた気がする。ともかくこれで弟は完全に無力化できた。その気になればこのまま首を握り潰すこともできるが……。



「安心しろ。お前を殺すのは、兄を始末してからだ」



 愛する弟の死で真の力を覚醒、とかいう少年漫画的な展開は勘弁願いたいからな。ただし、あくまで後回しというだけだ。たとえこいつが雪風の言いなりになっていただけだとしても、共犯者であることに変わりはない。後できっちり殺すつもりだ。



「貴史、スキルを使って逃げろ!! 早く!!」



 無駄だ、こいつは二度とスキルを使えない。もうこいつの中にスキルは存在しないのだから。



「貴史……!? このっ、貴史を放せ!!」



 先程までのクールぶっていたキャラは何処へやら、雪風が血相を変えて叫ぶ。



「ああ。返してやるよ」



 言われた通り、弟の身体を放り投げた。俺は神崎や石神のように人質に捕って追い詰めるような卑劣な手は使わない。



あと少しで100話に到達です。応援よろしくお願いします。

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