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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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雪風の過去

 五体の氷人形を全て破壊した俺は、その勢いのまま雪風に向けて突っ走る。



「何度やっても同じことだよ」



 雪風の姿が消えて椅子が出現した。やはりここで弟のスキル、思惑通りだ。俺は即座に走る方向を弟の方に切り返した。俺の推測だと弟のスキルは短時間での連続使用はできない。これで決める!



「!?」



 しかし俺が拳を振るう寸前、弟を取り囲むように氷の壁が出現した。くそっ、また再生する壁か。これでは手が出せない。



「残念だったね。君が貴史を狙うのも想定内。貴史には指一本触れさせないよ」

「あ、ありがとう兄さん」

「お安い御用さ。弟を守るのは兄の役目だからね」



 悔しいが、雪風の対応力の高さは認めざるを得ない。しかし想定内は俺も同じだ。



「僕を差し置いて貴史を傷つけようとするなんて、卑劣極まりない。これはお仕置きが必要かな」



 そう言って雪風が一冊の本を俺に向けて投げる。また本と位置を入れ替えて奇襲をかける気か。同じ手が二度も通用すると思うなよ。雪風が空中に現れた瞬間、俺の拳で返り討ちにしてやる。



「っ!?」



 だが雪風は空中に現れず、そのまま本は俺の顔面に当たった。フェイントかよ!


 俺の視界が本で塞がれた一瞬の隙に、雪風が俺との距離を詰める。そして再び氷の拳を腹に叩き込まれた。



「がはっ……!!」



 吹っ飛ばされた俺は後方の壁に衝突した。当たり所が悪かったらしく、一発目よりもかなり効いた。


 今のはしてやられた。驚くべきは、雪風から何の指示もなかったのに弟が雪風の意を汲み取り、敢えてスキルを発動しなかったこと。本当に厄介なコンビネーションだ。



「見事に引っ掛かってくれたね。戦術に関しても僕らの方が遥かに上手のようだ。些細な判断ミスが命取りになることもある、覚えておくといい」

「……ご高説どうも」



 勝ち誇っているようだが、この程度でくたばる月坂秋人ではない。俺はすぐに体勢を立て直そうとしたが――身体が動かない。いつの間にか俺の両手両足が氷で固定され、俺は壁に磔となっていた。



「ふふっ、実に良い眺めだ。さて、どうやって殺してあげようかな」



 どうやらこれで俺の身動きを封じたつもりらしい。こんな氷、その気になればすぐに破壊できる。



「そうだ、まだ君には僕達の真の目的について話していなかったね。冥土の土産に教えてあげるよ」



 さっき口にしていた偉大な目的のことか。そんなもの興味はない――と言いたいところだが、こいつが春香の大切な人を殺したのも、その目的とやらに関係しているのかもしれない。



「僕と貴史が死んだのは……十五年くらい前だったかな。ほら、ちょうど新型ウイルスが蔓延していた時期さ」



 俺が殺人容疑で捕まる以前の出来事なので、俺もよく覚えている。元々は外国発症のウイルスだったが、その驚異的な感染力で瞬く間に世界中に拡がり、日本でも多くの感染者と死者を出した。



「お前らはそのウイルスに感染して死んだってことか?」

「ははっ、違うよ。感染したのは事実だけど、大した症状じゃなかった。だいたいその程度の死因だったら転生杯の参加者に選ばれたりしないだろう」



 確かに。支配人が参加者に選出するのは、強い憎しみや悲しみを抱いて死んでいった者のはず。ウイルスで死んだくらいでは選ばれる理由としては弱いだろう。



「当時、僕は高校三年生、貴史は一年生だった。僕達は平穏な学生生活を送っていたのだが……それは突然終わりを告げた。僕達が通っていた高校に、日本初の新型ウイルス感染者が出たんだ」



 ひとまず俺は動かず、雪風の言葉に耳を傾ける。



「感染経路はすぐに判明した。感染者が出る少し前、新型ウイルス発症の国に旅行に行っていた家族がいたからだ。その家族の一人が、感染者と同じクラスだったんだよ」

「まさか、それが……」

「そう、僕だ。それを機に感染は日本中に拡がり、僕はウイルスを撒き散らした大悪人として酷いイジメを受けた。僕だけではなく、弟の貴史もね」



 雪風弟が悲しげな顔で目を伏せる。



「日本政府の対応が遅れたせいで、全国の学校が休校となったのは半年以上も先のことだった。その間、僕と貴史は高校でイジメを受け続けた。それでも感染が終息するまでの辛抱だと、僕は耐えた。だけどある日……貴史がイジメを苦に自殺してしまった」



 怒りと悲しみを滲ませた声で、雪風は言葉を続ける。



「僕は気付いてやれなかった……貴史がそこまで追い詰められていたことに。貴史は何も悪くなかった。全ては僕のせいだ。僕が弟を殺したようなものだ。自らの罪に押し潰された僕は、弟の後を追うように、自ら命を断った……」



 そして二人は転生杯の参加者に選ばれた、というわけか。



「蘇った僕は考えた。悪いのは僕じゃない。新型ウイルスでもない。学校という環境のせいだ。イジメを生み出す環境と、そこに生きる者達が、僕と貴史を死に追いやった。そして気付いた、そんなものは全部潰してしまえばいいと」



 雪風は静かに右手を広げ、力強く握りしめる。



「ただし、ただ潰すだけでは駄目だ。僕達が味わった以上の苦しみを、皆には味わってもらわなければならない」

「……だから氷の牢獄で生徒達を閉じ込めたのか」

「その通り。そしてこれはほんの序章にすぎない。やがて日本中の学校で同じことが起きるだろう。そう、僕達の手によってね。これは僕達の復讐なんだよ」



現実のウイルスと作中のウイルスに関連性はありませんので、あしからず。

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