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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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別れの時

 唖然とした顔で、俺を見つめる千夏。



「ど……どうしてですか? もしかして私、自分で気付かない内に秋人さんに嫌われるようなことをしてしまったりとか……」

「違う。千夏は何も悪くない」

「では、どうして……?」



 震える声で、千夏が尋ねる。千夏にとっては全く意味が分からないだろう。


 だが千夏が参加者ではないと分かった以上、もう千夏は俺に関わるべきではない。俺の近くにいたら、いつどこで転生杯に巻き込まれてもおかしくないからだ。



「詳しくは言えないけど、俺と一緒にいたら千夏に迷惑がかかる」

「そんな、私は迷惑だなんて思いません!! いえ、たとえどんな迷惑をかけられても構いません!! だから――」

「駄目だ」



 俺は冷たく言い捨てた。千夏が俺に好意を抱きつつあることは、なんとなく分かっている。さすがの俺もそこまで鈍感ではない。だからこそ、俺にはそれをハッキリと拒む義務がある。


 本音を言えば、凄く嬉しい。こんなに優しくて可愛い子が俺に好意を寄せてくれるなんて、生前でも一度としてなかった。もし今の俺が普通の人間だったらと思わずにはいられない。千夏と付き合うことができたなら、きっと毎日が幸せだろう。


 だが本来なら俺は、もうこの世には存在しないはずの人間。支配人の力によって一時的に蘇っているに過ぎず、転生杯に勝ち残るにしろ脱落するにしろ、いずれ月坂秋人という存在は再び無に帰すことになる。だからどうあっても、俺と千夏が共に未来を歩むことは有り得ないのだ。



「俺のことは忘れてくれ。明日から俺達は……赤の他人だ」

「……どうして……そんなこと言うんですか……?」



 とうとう千夏の目から涙が溢れ出す。胸が痛い。心が悲鳴を上げる。だがここで情に流されるわけにはいかない。



「これは千夏の為なんだ。どうか分かってほしい」

「……うっ……ううっ……」



 千夏は両手で顔を覆い、声を殺して泣き始めた。



「……俺も、今日は楽しかった。ありがとう」



 そう言い残し、俺は千夏を置いて噴水広場から立ち去った。本当は自宅まで送ってあげたがったが、とてもそんな雰囲気ではなかった。





 重い足取りで、俺は帰路を歩く。あんなに良い子を一方的に拒絶して、挙げ句泣かせてしまった。俺は最低の男だ。胸の痛みは当分消えてくれないだろう。だが俺は間違ったことはしていない……そう何度も自分に言い聞かせた。


 もうすぐアジトに着くという時、ポケットの中で携帯が振動した。春香か真冬だろうと思いながら、俺は携帯の画面を見た。



「……っ」



 思わず息が詰まる。それは千夏からだった。あんなことがあった直後なのに、一体何の用だろうか。正直今は話したくない……が、無視するのも憚られたので、俺は躊躇いつつも通話ボタンを押した。



「……どうした、千夏」

『はぁ~い彼氏さ~ん。今日のデートは楽しかったかしら?』



 俺は足を止めた。明らかに千夏の声じゃない。聞き覚えのない女の声だ。



「誰だお前……!?」

『私は神崎美奈。よろしくね、月坂秋人くん』

「……転生杯の参加者か!?」

『あら、察しが良いわね。貴方の彼女さんには今、私と遊んでもらってるの。貴方も混ざりたいでしょ?』



 こいつ、千夏を人質に……!!



「千夏は無事なんだろうな!?」

『今のところはね。ほら』

『秋人さん、私なら平気です!! だから絶対に来てはいけません!!』



 携帯から千夏の叫び声が聞こえる。さっき俺にあんな酷いことをされたというのに、自分よりも俺のことを心配して……!



『あらあら、イジらしいこと。彼女さんはこう言ってるけど、見捨てることなんてできないでしょ? 地図を送ってあげるから、そこに一人で来てちょうだい。もしこのことを誰かに話したら……分かってるわね?』



 そこで神崎からの通話は切れた。



「……くそっ!!」



 俺は全力で走り出す。怖れていた事態がこんなにも早く……!! やはり俺が千夏を自宅まで送るべきだった。危機意識が足りていなかった俺の失態だ……!!





 午後十一時過ぎ、俺は地図で示された場所に到着した。奇しくもそこは、当初真冬が復讐を遂げる場として予定していた廃工場だった。痣も反応しているので、この中に神崎という女がいるのは間違いない。おそらくは千夏も。


 人質を捕られている以上、真冬達には頼れない。つまり俺が一人でなんとかするしかない。俺は意を決して工場の扉を開けた。



「……千夏!!」



 真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、太い縄で支柱に縛り付けにされている千夏の姿だった。



「秋人さん!? まさか私を助けに……!!」

「当たり前だろ!!」



 目立った外傷はなさそうなのでひとまず安心したが、早く助けてやらなければ。



「ふふっ。ようやく彼氏さんのご登場ね」



 そして千夏のすぐ傍に、廃材の上で優雅に足を組む女の姿があった。まるでモデルのような容姿と体型、そして右腕に〝57〟の痣。あの女が神崎か。


 ん? あいつの顔、どこかで見覚えが……。いや今はそんなことどうでもいい。もしや学校内で痣が反応したのもこいつが原因かと一瞬考えたが、さっき反応したということは別人だろう。同じ参加者に痣が二度以上反応することはないはずだ。



収入がピンチなので、とりあえず色々な賞に応募してみることにしました。応援よろしくお願いします。

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