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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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非情な介錯

コロナEXで連載中のコミカライズ版5話が更新されました!是非読んでみてください!

  ☆



 作戦は成功した。朱雀の変身が解けた直後、俺は力尽きて地面に倒れた。無論これもフリである。



「しまった、変身が……!!」



 俺は横たわりながら、薄目で朱雀の様子を窺う。たった今スキルの有効範囲から出てしまったことに気付いたらしく、明らかに動揺している。


 さて、奴がこの後どういう行動に出るか。何かの罠を察して引き返すか、直に死ぬだろうと俺を放置するか、確実に殺しておこうと俺に近づいてくるか。



「ふっ、まあいいわ。どうせあいつはもうすぐ死ぬ。でも念には念を入れて……」



 朱雀が道路脇の溝蓋を持ち上げ、ゆっくりと俺に近づいてくる。答えは三番目。あの溝蓋で俺の頭を殴ってトドメを刺すつもりなのだろう。つい俺は笑みをこぼしそうになる。これが俺達の作戦だということも知らず……。


 この位置からだと愛城が死んだ公園は鮫島が死んだ路上よりも遠いため、鮫島への変身が解けたということは愛城にも変身できないことになる。つまり今の朱雀はスキルを持たないも同然というわけだ。もはや倒すことなど造作もない。


 だがまだだ、まだ早い。スキルの有効範囲まで引き返されたら再び変身されてしまうので、ギリギリまで引きつける必要がある。



『秋人、私が合図が出す』



 俺の意を汲み取ってくれたらしく、真冬がそう言った。そして朱雀の足音がすぐそこまで迫ってきた、その時――



『今!!』



 真冬の合図と共に、俺は素早く立ち上がり【怪力】を発動し、朱雀に拳を炸裂させた。



「なっ……!?」



 驚きの声を上げる朱雀。しかし咄嗟に溝蓋を盾にされてしまい、代わりに俺の拳はそれを粉砕した。その反応速度は見事だが、これで朱雀を守るものはなくなった。



「まさか、罠……!!」



 溝蓋の破片が飛び散る中、スキルの有効範囲まで戻ろうと走り出す朱雀。どうやらこちらの作戦に気付いたようだが、もう遅い。


 有効範囲内にいたなら愛城に変身して【潜伏】を使えば容易に身を隠せただろうが、今の朱雀にはそれもできない。俺は【氷結】を発動して一本の氷の槍を生成し、必死に走る朱雀に狙いを定める。敵に背を向けた時点で勝負はついた。



「がはっ……!!」



 俺の放った氷の槍に身体を貫かれ、朱雀は倒れた。地面に大量の血が広がっていく。これまで闘った中でも、かなり手を焼いた相手だった。



『お疲れ様、秋人』

「ああ、真冬の作戦のおかげだ。ありがとな」

『ん。秋人の演技があまりにも下手でヒヤヒヤされられたけど』

「なんだと!? 誰がどう見ても名演技だったろ!」

『…………』

「……無言はやめてくれよ」



 まあ正直なところ自分でも三文芝居だと思ったが、朱雀を騙すことはできたので無問題だろう。



「秋人!」



 程なくして春香が駆けつけてきた。真冬から決着がついたと報告があったのだろう。



「勝ったのね!」

「……ああ」



 あとは【略奪】でスキルを奪うだけ。消滅する前に手早く済ませよう。俺は横たわる朱雀に近づいていく――



『二人とも逃げて!!』



 突然、インカムから真冬の叫び声がした。俺は反射的に春香の腕を掴んで【重力】を発動し、共に空中へ退避する。



「ちょっ、何よ急に――」



 直後、爆音と共に凄まじい衝撃波が発生し、俺達が立っていた路上の半径数メートルが粉々に四散した。その光景を見て背筋に悪寒が走る。ほんの少しでも退避が遅れていたら、今頃……!!



 俺と春香は無事だったが、朱雀はもろに巻き込まれてしまい、その身体は跡形もなく消し飛んでいた。一体誰の仕業か、もはや考えるまでもない。間もなく俺の〝88〟の痣が光り出した。



「よう、チート野郎。初めましてだな」



 俺達の更に上に、空中に浮かぶ男の姿があった。右腕には〝22〟の痣。間違いない、あいつが赤来だ。昼山との戦闘で負傷したのか、右目が出血している。今の衝撃は空気弾丸のバーストによるものだろう。



「……何やってんだ、お前」



 俺は拳を震わせながら、赤来を睨みつける。



「んん? 何ってそりゃあ、お前が朱雀のスキルを奪おうとしてたから阻止したんだよ。敵のパワーアップを見逃す馬鹿がどこにいるよ?」

「朱雀はお前の仲間だったんだろ!? どうして仲間を殺した!?」

「おいおい責任転嫁はやめてほしいなあ。朱雀を殺したのはお前だろ? 遅かれ早かれあいつは死んでいた。俺様はただ介錯してやっただけだよ」



 微塵も罪悪感を抱いていない様子で赤来が言った。何の躊躇いもなく仲間を攻撃するなどイカれているにも程がある。春香が見限るのも無理はない。



「久し振りだなー青葉。元気にしてたか?」



 今度は春香の方に目を向ける赤来。春香は嫌悪感を露わにした顔で赤来を睨んでいた。



「俺様のチームを抜けて今はそいつと組んでるってか。いやはや妬いちゃうなあ。どうだ青葉、俺様の所に戻ってくる気はねえか?」

「誰が。アンタと組むなんて二度とごめんよ」

「あちゃー、随分と嫌われたもんだなオイ。ま、今のは冗談だ。俺様には逃げた女の尻を追いかける趣味はねえしな」



 そう言って赤来は、自ら破壊した路上に視線を落とす。




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