SOS
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俺だって春香・真冬という仲間と協力してここまで勝ち残ってきた。敵が何人で来ようと、それをとやかく言うつもりはない。
「悪いがお前の相手は後だ。そこをどけ」
「はい分かりました……なんて言うと思う?」
俺は舌打ちをした。早く爺さんを避難させないといけないってのに。
「だったら力ずくでどかしてやる!」
俺は【氷結】を発動して無数の氷塊を生成し、一斉に放つ。赤来は【潜伏】のスキルでこれを回避。この隙に俺は走り出すが――
「がっ……!!」
再び地面から現れた朱雀に足蹴りをお見舞いされ、俺は後ろに大きくよろめいた。爺さんを背負ってるせいで避けることもままならない。
「随分と闘いづらそうね。そんな荷物をおんぶしてるからよ。いつまで守りきれるかしら楽しみだわ!」
朱雀が鮫島に変身して駆け出す。今度は【怪力】か。俺は【氷結】を再発動し、行く手を阻もうと氷壁を展開する。
「無駄よ!!」
朱雀の拳が炸裂し、氷壁は一撃で粉砕されてしまった。
「【怪力】の威力は貴方が一番よく分かってるでしょ? こんな壁はハリボテ同然よ」
「……っ!!」
俺も【怪力】で反撃したいところだが、両手が塞がっているので拳を放てない。爺さんを【入替】で遠くの物体と入れ替えて一時的に避難させ――いや駄目だ。このスキルを自分以外の人間に適用させる場合は本人に〝入れ替わる〟という意志がなければ不可能なので、スキルのことを何も知らない爺さんにそれを求めるのは無理だ。【潜伏】も同様の理由で不可能。【重力】で空中に回避しようものなら赤来の空気弾丸の標的となるだけ。周囲に乗り物も見当たらないので【操縦】は使えない。【息吹】はそもそも使いこなせていない。
つまりこの状況において、唯一まともに使えるのは【氷結】だけだった。ジワジワと選択肢を奪われていくこの感じ、将棋で追い詰められる王将になった気分だ。これも赤来の策略なのだとしたら大した奴だ。一旦爺さんを下ろすことも考えたが、それで爺さんが狙われたら余計に闘いづらくなる。
俺は走りながら後方に氷壁を何重にも展開する。朱雀は【怪力】で強化した拳でそれらを次々と粉砕していく。やはり人間を一人背負いながら走るのはハードであり、なかなか朱雀を引き離すことができない。俺の体力もいつまで持つか。
「そんな老人見捨てちゃえばいいのに! 貴方はこれまで何人もの参加者を殺してきたんでしょう!? そんな貴方が誰かを救おうとしてるなんて笑わせるわね! 貴方のような人間を偽善者って言うのよ!!」
俺を挑発するかのように朱雀が言い放つ。偽善者で結構、こっちは参加者どころか一般人を四人も殺してるよ。
朱雀を振り切るのは難しいと悟った俺は、足を止めて振り返り、頭上に巨大な氷塊を生成した。最後の氷壁が破壊された瞬間を狙えば回避も間に合わないだろう。氷壁に視界を遮られて氷塊にも気付くまい。こいつを放って押し潰してやる。
が、数秒経っても氷壁が破壊される気配がない。まさか朱雀の奴……!!
素早く振り返ると、愛城から鮫島に変身途中の朱雀の姿がそこにあった。【潜伏】で地中を経由して俺の背後に移動していたのか。やられた、氷壁に視界を遮られていたのは俺も同じだった――
「がはっ!!」
朱雀の一撃が炸裂し、俺は地面を転がる。瞬時に腹部を氷で覆ったので致命傷は免れたが、俺は爺さんを放り出してしまった。
「大丈夫……ですか……!?」
横たわってる場合じゃないと、俺は歯を食いしばって身体を起こす。朱雀がまた攻撃してくる前に爺さんを拾わないと……。
『秋人逃げて!!』
インカムから真冬の大声が響き、ハッとビルの方に目を向ける。まずい、この場所はビルとの間に遮蔽物が何もない。赤来の空気弾丸で直接狙われてしまう。
すぐに【潜伏】で地中に回避を――いやそれだと爺さんを見捨てることに――だけど今は自分の命を優先しないと――
その刹那、雪風との闘いで俺を庇って死んだ石神の姿が脳裏を過ぎる。そして気付けば俺の身体は爺さんのもとへ駆け出していた。もう誰かを見捨てるのはゴメンだ。
しかしこれは判断ミスだった。この時点で既に赤来は空気弾丸を放っているだろう。つまりどう頑張っても間に合わない――
「!?」
突如、凄まじい突風が吹き荒れ、思わず俺は転倒した。直後、遠くの方で大きな水柱が立ち上るのが見えた。俺も爺さんも無事だ。
一体何が起こった? 突風で空気弾丸が逸れてどこかの池にでも着弾したのか? しかし何故急に突風が……?
まさかと思い、俺は顔を上げる。一匹の巨大なワシが飛行しており、その上には見覚えのある人物が乗っていた。
「どうやらピンチのようだな、月坂秋人」
「……昼山!?」
それはかつての強敵にして、俺達と同盟を結んだ『ムーンライト』のメンバー、昼山だった。先程の突風はあのワシの羽ばたきによるものだろう。確か名前はツーだったか。
「どうしてお前がここに……!?」
「お前の仲間からSOSがあったものでな」
「SOS……!?」
『よかった、間に合って……』
インカムから真冬の安堵の声がした。真冬が昼山を呼んだのか。いつの間にそんなことを……。だが昼山が来てくれなかったら、俺と爺さんは空気弾丸の餌食になっていただろう。また仲間に助けられてしまったな……。
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