アイスアーマー
書籍第1巻は本日発売です!よろしくお願いします!
さっきは予想が的中したが、残りの爆弾の位置まではさすがに見当がつかないので、これ以上ピンポイントで防ぐのは厳しいだろう。かと言って移動の度に氷壁を張り続けるわけにもいかない。
『秋人、この公園で闘うのは危険すぎる。やっぱり退いた方が……!!』
「……真冬は心配性だな」
って、俺もあまり人のことは言えないか。俺が逆の立場でも同じことを言うだろう。
「大丈夫。生前、やることがない休日はマインスイーパーばかりやってたからな。爆弾の対処なら任せろ」
『そんな悲しい情報はいらないし何の根拠にもなってない』
「辛辣だな……。まあ見てろって」
爆弾の位置が分からないなら、俺自身を氷で覆ってしまえばいい。俺は【氷結】を発動し、両腕・両脚・胴体・顔周りを鎧のように氷で固めた。
「どうだ、これで爆弾も恐るるに足らず! 名付けて〝アイスアーマー〟だ!!」
『「……ださっ」』
真冬と朱雀の一言が俺の心臓を貫いた。まさか敵味方でハモるとは。俺のセンスはともかく爆弾の威力は把握したし、これだけ身体を氷で覆えば十分凌げるはずだ。
「まあ、身体は守れるかもしれないけど、そんなんで動けるの?」
「…………」
やばい、そこまで考えてなかった。確かにめっちゃ重い。
「はっ。舐めるなよ……!!」
ジムで鍛えた成果を見せてやる。俺は歯を食いしばりながら朱雀の方へ駆け出した。よし、動けるぞ。俺は【怪力】を発動し、右手に力を集中させる。
「その構え、鮫島や愛城を葬ったスキル【怪力】ね?」
「正解!」
朱雀に右の拳を連続で放つ。が、全て容易く避けられてしまった。
「こんなの、スキルを使うまでもなく簡単にかわせるわよ」
「くっ……!!」
当たり前だが動きが鈍くなっている。こんな状態では【怪力】も役に立たない。攻めの手を変えなければ……。
「ほらほら、こっちよ」
滑り台の下を潜って逃げる朱雀。俺はそれを追いかけるが――
「ぐあっ!!」
滑り台が爆発し、その爆風で俺は吹き飛んだ。滑り台にも仕掛けてやがった!
『秋人、大丈夫!?』
「……ああ。アイスアーマーのおかげでな」
土煙が立ちこめる中、俺は即座に立ち上がった。流石は【氷結】で作った鎧、かなり頑丈だ。
「しかし妙だな。なんで朱雀には爆弾が反応しなかったんだ……?」
朱雀は「人感センサー付きの爆弾」と言っていた。それが嘘でなければ朱雀が滑り台を通過した時に反応するはずだ。にもかかわらず爆発は起きなかった。
『多分だけど、変身女は人感センサーを遮断する機器を隠し持ってるんだと思う』
「……なるほどな」
朱雀が腰に付けている大きめのポーチ。中に何が入っているのかずっと気になっていたが、その人感センサーを遮断する機器とやらが入っているのだろう。ならあのポーチを奪えば……!!
俺は地面に落ちていた石を拾い上げ、スキル【入替】を発動。小石と入れ替えることで奴のポーチを奪い取った。
「なっ……!!」
動揺を見せる朱雀。まさかポーチを狙われるとは思っていなかったようだ。これさえああれば俺に爆弾が反応することはない。
「どうだ、これで立場逆転――いだっ!?」
間髪入れず、朱雀の投げた石が俺の右手に当たり、思わずポーチを手放してしまった。なんつー命中率だよ。すぐに俺はポーチを拾おうとしたが、その隙に朱雀が鮫島に変身して突っ走ってきた。
いくらアイスアーマーでも【怪力】で強化された拳をまともに喰らったらタダでは済まないだろう。ポーチを拾いつつ【潜伏】で地中に回避――駄目だ間に合わない。やむを得ずポーチを諦め、俺は【潜伏】で地中に潜った。
直後に俺は地上に出た。奴の拳は回避できたが、ポーチを奪い返されてしまった。
「悪いけど、このポーチには大事な物が入ってるの」
そう言いながら朱雀は愛城に変身して地中に潜る。次に現れた時には、奴はポーチを持っていなかった。どうやら地中のどこかに隠してきたようだ。俺に奪われるくらいなら自ら手放すってわけか。だがこれで奴も爆弾の人感センサーを遮断できなくなった。
「にしても、いろんな味を楽しみたいとか言ってたわりには、さっきから鮫島か愛城にしか変身してないな」
「……貴方には二パターンで十分ってことよ」
朱雀は助走をつけて跳躍し、ジャングルジムの上に登った。爆発は起きない。つまりあの付近に爆弾はないということだ。
「どうしたの? かかってこないの?」
俺を見下ろしながら、あからさまに挑発する朱雀。上等だ、ジャングルジムごと吹き飛ばしてやる。俺は【怪力】を発動して駆け出した――
『待って秋人!!』
インカムから真冬の大声が響く。だが既に遅く、俺がジャングルジムの方へ駆け出した直後、その途中にあったパンダのスプリング遊具が爆発した。
「なっ……!?」
その爆風で俺の身体が派手に吹き飛んだ。さすがに二度は耐えきれなかったらしく、アイスアーマーの大部分が破壊された。どういうことだ、朱雀が通った時あのパンダは無反応だった。もう人感センサーを遮断する機器は持っていないはず……!!
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