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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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変身女再び

 すぐにでも変身女が出没している現場に向かいたかったが、まだ人が出歩いている時間帯だと遠慮なく闘えないため、夜になるまで待つことにした。その間にもスカートめくりの被害者は増え続けてしまうが、直接的な危害を加えられているわけではないので、申し訳ないがその女子達には泣き寝入りしてもらおう。というか今行ったら俺がスカートめくりの犯人として巡回中の警察官に捕まってしまいそうだ。


 そして夜十一時過ぎ、俺はその現場に向かった。この時間帯なら出歩いている女性も少ないので、警察も警戒を緩めているだろう。念の為に予め真冬が嘘の通報をして、付近の警察官を適当な場所に誘導してくれた。これで心置きなく闘える。あとは変身女が現れてくれるかどうかだ。



『秋人。次の十字路を左に曲がった先に、スカートめくりが病みつきになってる変態の秋人がいる』

「言い方!!」



 思わず俺はインカムからの真冬の声にツッコんだ。素直に変身女がいると言えばいいのに、絶対わざとだろ。ともかく奴は逃げも隠れもしないようだ。


 十字路を左に曲がると、一人の男の後ろ姿があった。間違いない、俺だ。正確には俺に変身している変身女だ。奴も俺の存在に気付いたらしく、こちらを振り向いた。


 本当に俺そっくりだ。鏡でも見ている気分になる。俺との唯一の違いは、腰に大きめのポーチを付けていることだ。何に使うのか知らないが、おかげで第三者からも判別がつきやすいだろう。



「よう。俺に変身して随分とふざけた真似をしてくれたもんだな」



 わりと腹が立っていたので、俺の声も自然と怒気を帯びていた。スカートめくりなどという羨ま……じゃなくて許し難い行為に及んだこいつには、きっちり罪を償ってもらう。



「…………」



 先程から変身女は不敵な笑みを浮かべながら、無言で俺を見つめていた。一昨日はあんなにお喋りだったというのに、なんとも不気味だ。



「おい、何か言ったらどうだ――は!?」



 俺は声を上げた。変身女が突然、俺に背を向けて走り出したのだ。俺に怖れをなして逃げた……わけないよな。明らかに何か狙っている。



「待てこら!!」



 かと言ってこのまま見送るわけにもいかないので、俺はその後を追う。間もなく変身女がT字路を右に曲がったので、俺もそれに続いた。



「!?」



 直後、俺は足を止めた。変身女の姿がどこにも見当たらなかったからだ。



『秋人! 変身女は地中に潜った!』



 インカムを通じて真冬が教えてくれた。てことは【潜伏】を使ったのか。俺は四方八方の地面を凝視する。どこから出てくる――



『秋人、上!!』



 上!? 素早く顔を上げると、俺が最初に闘った参加者である鮫島が、落下しながら拳を放とうとしていた。俺は反射的に後方へ跳んで回避し、鮫島の拳は地面に直撃して大穴を空けた。今度は【怪力】か。



「ちっ、外したか」



 俺を睨んで舌打ちをする鮫島。まさか上から来るとは。おそらく地中を経由して塀の裏側に回り込み、そこから跳躍したのだろう。地面ばかり見ていたので気付かなかった。真冬の声がなければ危なかっただろう。



「あん時はよくもやってくれたなあ。ビギナーズラックで俺に勝ったからって調子に乗んじゃねーぞ。今度はテメーが俺に殺される番だ」

「……くだらない三文芝居はやめたらどうだ、変身女」

「ふん。ノリが悪いわね」



 鮫島の身体が変化し、本来の変身女の姿となった。



「てか変身女って呼ぶのやめてくれる? 私には朱雀真鈴って名前があるんだから」



 ご丁寧に名乗ってくれた。真冬が欲しがっていた変身女の名前が手に入ったわけだが、こうして再び相見えた以上、もはや不要だろう。



「俺の姿でスカートめくりなんて犯行に及んだ理由を聞かせてもらおうか」

「そんなの貴方を誘き出す為に決まってるじゃない。せっかくだしちょっと貴方の人間的評価を落としてやろうと思っただけよ」



 ちょっとじゃ済まないだろそれ。下手したら学校に通えなくなるんだが。



「そうそう、ついでにパンツの色の統計を取ってみたんだけど、聞きたい?」

「…………頼む」

『秋人!!』



 真冬の怒鳴り声が耳に響いた。



「じょ、冗談だよ冗談」



 そうだ、今の俺が優先すべきはパンツの色ではなく、変身女こと朱雀を倒すことだ。こいつは存在自体が危険だし、必ずここで脱落させる。俺は【氷結】を発動して無数の氷塊を生成した。



「興味ないの? 残念」



 俺が氷塊を放つ寸前、朱雀は愛城に姿を変えて地中に避難した。また【潜伏】か。次はどこから来る……!?


 背後の気配を察知して振り向くと、朱雀が地中から飛び出すのと同時に、再び鮫島に姿を変えて拳を放ってきた。しかしこれは読めていたので、俺は【重力】を発動して危なげなく空中に回避した。



「ちょこまかと、よく動くわね」

「それはお互い様だろ」



 俺は朱雀と距離を取って地面に着地した。どうでもいいが鮫島の姿と声で女口調というのは結構シュールだ。



「……やっぱり分からないな。どうして俺の姿で闘わない?」



 わざわざ鮫島や愛城に変身せずとも、俺なら【怪力】も【潜伏】も使えるのでコロコロ変身する手間は省けるはずだ。




高橋和希先生は僕の人生に大きな影響を与えてくれた方でした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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