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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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ライブ対決

 得意気に春香が言う。昨日部活動が長引いてたのはその作業があったからか。しかしアイドル部のライブは今回が初ってわけでもないし、それだけであんなに集まるだろうか。



「ライブって今日の放課後だよな?」

「ええ。みんないつも以上に気合いが入って……んん?」



 言葉を止め、目を凝らして掲示板の方を見つめる春香。



「どうした春香――うおっ!?」



 春香が俺の腕を掴んで人混みを掻き分けていき、俺は掲示板の真ん前まで連れてこられた。



「な、何だよ急に!?」

「……見てよこれ」



 掲示板には、さっき春香が言っていたアイドル部の特大ポスターが貼られている。が、その隣りには更に大きなポスターが貼られていた。驚くべきはその内容である。



「神崎美奈の単独ライブ……!?」



 そう、それは神崎のライブの告知だった。日時は今日の放課後、アイドル部と完全に被っている。明らかに意図的だ。ただし場所はアイドル部が校門前広場なのに対し、神崎はグラウンド。広さに圧倒的な差がある。



「どう? 驚いたかしら」



 そこに神崎が颯爽と登場した。周りの生徒達は空気を読んで道を空ける。



「一体どういうつもりよ!?」

「どうもこうも、言ったじゃない。プロと素人の格の違いを見せつけてあげるって。これならハッキリするでしょ?」



 同じ時間にアイドル部と神崎がライブをすれば、確実に観客(生徒)は割れる。集客数の多い方が勝ちというわけか。



「そ、そもそも放課後のグラウンドは運動部が使ってるから、そこでライブなんてできないはずよ!」

「それができちゃうのよねー。これの力でね」



 親指と人差し指で輪っかを作る神崎。金の力かよ。



「実は私の転入の際に、事務所がこの高校に多額の協力金を寄贈したの。そんなわけで先生方も快く許可してくれたわ」

「何が協力金よ、賄賂もいいとこだわ!! 卑怯よそんなの!!」

「卑怯とは心外ね。これがプロというものよ。それとも今の内に負けを認める?」

「誰が……!!」



 グラウンドに目をやると、既に設営スタッフらしき人達がライブの準備に取り掛かっていた。見るからにガチだ。こんな我儘がまかり通るのも人気アイドルだからこそだろう。



「新星の人気アイドル神崎美奈と、至高のスクールアイドルはるにゃんの対決……!!」

「これは見応えがありそうですな……!!」



 アイドルオタクっぽいおっさん達が熱く語り合っている。なんかもう当たり前のように不法侵入してるなこの人達。



「放課後、楽しみにしているわ」



 悠然と去っていく神崎。早くも勝ちを確信しているようだ。



「絶対あんな奴には負けない……!! 秋人は当然アタシ達のライブを観るわよね!?」

「…………………………勿論だ」

「何よその間!?」



 正直神崎のライブを観たい気持ちはあるが、やはり俺は春香の応援をしたい。問題は、果たして神崎に勝てるかどうか……。





 放課後になり、間もなく両者のライブが始まる。俺はアイドル部のライブが行われる校門前広場に来たが、やはり観客の入りは悪い。普段の三割程度といったところか。いや、むしろよく三割も集まったと言えるだろう。



「やっぱ今日は少ないな……」

「そりゃあっちでは神崎美奈のライブだもんな……」



 はるにゃんファンクラブの奴等もいつもの活気がない。それを見て思わず俺はこう口にした。



「しっかりしろお前等。こんな時だからこそ全力で応援するのが真のはるにゃんファンってもんだろ」

「確かに、リーダーの言う通りだ!」

「流石は俺達のリーダー!」

「やっぱり頼りになるぜリーダー!」

「だからリーダーじゃないっての!!」



 グラウンドにはよく半日で準備できたなと思うほどの豪華なステージが設営されており、もはや完全にライブ会場と化していた。おまけにテレビの取材まで来ているようだ。どちらの観客が多いかは火を見るより明らか。残念だが、もう勝負は決まったも同然……。



「みんなー!! 今日もアタシ達のライブを観に来てくれてありがとー!!」



 アイドル部員達がステージに登場し、春香が元気いっぱい声を張り上げる。観客が少ないことにショックを受けていないはずがない。にもかかわらず、春香はいつもと変わらぬ笑顔を振りまいていた。


 何を弱気になってるんだ俺は。さっき自分で言っただろ、こんな時だからこそ全力で応援するのが真のはるにゃんファンだと。まだ勝負は決したわけではない。今の俺がやるべきことはただ一つ、このライブを最高に盛り上げることだ。



「それじゃ最初の曲、いっくよー!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおーーーーー!!」」」」」



 俺は同志達と共に、喉が枯れるまで声援を送り続けたのであった。





 結局ライブの終わりまで観客が大幅に増えることはなく、集客数はアイドル部の完敗であった。部室棟の入口で待っていると、着替えを終えた春香がトボトボと出てきた。明らかに落ち込んでいる。こんな時、なんと声を掛けたらいいのか。



「えっと……。今日のライブも良かったぞ、春香」



 こんな月並みのことしか言えない自分が情けない。しかしどんな言葉も今の春香には気休めにもならないだろう。



「……しい」

「ん?」

「悔しい悔しい悔しい悔しい悔しいいいいいいいいいいーーーーー!!」



 大声で叫んで地団駄を踏む春香。前言撤回、全然落ち込んでなかった。春香のメンタルの強さをすっかり忘れていた。




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