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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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春香と神崎

「信じられないな。お前だって転生権が欲しくて転生杯に参加したはずだ。そんな簡単に転生権を諦めるとは思えない」

「……まあ、そう思うのが普通よね」



 神崎は遠くの風景を見つめながら、言葉を続ける。



「以前、貴方から聞かれたことがあったわね。『アイドルをやるなら転生権を獲得して新しい人生で、とは考えなかったのか?』って」

「……ああ。確かお前は『今もアイドルをやって、転生してからもアイドルをやる』とか答えてたな」

「ええ。でも、あの時とはちょっと考えが変わったのよ」



 神崎は一歩一歩、屋上の端の方へ歩いていく。



「あれから『アステロイド』の曲が大ヒットして、人気アイドルとして脚光を浴びるようになって……。気付いたら生前の私の夢、ほとんど叶っちゃったのよね。そして気付いたら転生権にも興味がなくなってたのよ」

「……仮転生の時点で満足してしまった、ってことか」

「そういうこと。だから私にはもう、転生杯を最後まで勝ち抜く気はないの」



 出任せの可能性は低いだろう。それはこいつの表情と言葉でなんとなく分かる。



「でもあくまで〝ほとんど〟であって、100%叶ったわけじゃない。アイドルとしてこれからが本番というのもあるし、まだ死ぬわけにはいかないのよ」

「それで、取引か」

「ええ。なんだか今の貴方って前よりかなり強くなってる感じがするし、きっと私に勝ち目はないもの」



 神崎は俺の【略奪】のことは知らない。だから俺が強くなったというのは何の根拠もないはずだが、アイドルとして大勢のファンと触れ合ってきただけあって、そういう人間の観察力も優れているのだろう。


 しかしそれとこれとは話が別だ。今は死にたくないからという理由だけで安請け合いするほど俺はチョロくはない。



「で、俺がその取引に応じるメリットは何だ? 言っておくがサイン程度では――」

「今度開催される『アステロイド』のライブ、その最前列席のチケットをあげる」

「なん……だと?」



 神崎がポケットからチケットを出してヒラヒラと見せてくる。『アステロイド』のライブチケットの倍率の高さは当然知っている。一般販売は購入希望者が殺到しすぎてサーバーが落ちたという話だ。それほどまでに入手困難なチケットが今まさに目の前に、しかも最前列席だと……!?



「舐めるな!! そんなもので俺が喜ぶとでも――」

「あ、手が滑った」

「ちょおおおおおい!!」



 なんと神崎がチケットを手放した。風に流されていくチケットを、思わず俺はダイビングキャッチ。しまった、身体が勝手に……!!



「ふふっ、身体は正直ね。これで取引成立よ」

「はあ!? 応じるとは一言も言ってないだろ!!」

「チケットを掴んだということは、そういうことでしょ? 別に返すなり捨てるなりしてくれていいけど、それは自分の心を裏切る行為に他ならない。違う?」

「くっ……!!」



 いかん、ずっと神崎のペースに乗せられてしまっている。こいつの言葉には妙に説得力があるから困る。とりあえず俺はチケットを右ポケットに入れた。



「しかし分からないな。アイドルとして今が一番大事な時期だろうに、何故わざわざこんな高校に転入してきた? お前の目的と関係してるのか?」

「まあ、そんなところね。事務所の許可を取るのに相当苦労したわ」



 転生権を諦めたというのが本当なら、少なくともこの学校にいる転生杯参加者を排除する気はなさそうだが……。



「何なんだ、お前の目的って――」



 その時、背後で屋上のドアが開く音がした。まずい、一般生徒か!?



「そういえばもう一人、屋上に招待してたんだったわ」

「何……!?」



 もしやと思いながら、俺は振り返る。俺が予感した通り、それは春香だった。怪訝な表情で俺達の所まで歩いてくる。



「久々に連絡してきたかと思えば、まさかA組の転入生がアンタだったなんてね」

「また会えて嬉しいわ、春香。元気にしてたかしら」

「まあね」



 睨み合う二人。やはりどちらの痣も反応している様子はない。つまりこの二人は初対面ではないということだ。



「黄崎こそ元気そうじゃない。とっくに脱落してると思ってたわ」

「その名前で呼ぶのやめてくれる? 本名は非公開にしてるんだから。今は神崎という名前でやってるのよ」

「神崎……?」



 どうでもいいけど神崎って芸名だったのか。



「で、どうして秋人までここにいるの?」

「まあ、こいつとは色々あってな。それより春香と神崎って……」

「察しの通り、黄崎はアタシの元仲間よ」

「だから神崎だってば」



 やはりそうだったのか。ずっとそんな気はしていたので、それほど驚きはなかった。二人の雰囲気から察するに、あまり良好な関係ではなかったようだ。



「彼とはお知り合いみたいね。もしかして今のお仲間?」

「ええ、アンタなんかよりよっぽど頼りになるわよ。ちょっとアタシの裸に夢中になりがちだけど」

「一言余計だ!」

「ふーん、こんな偶然ってあるのね。まあ今の貴女が誰と仲良くしてようがどうでもいいわ」

「あっそ。アタシもアンタのことなんてどうでもいい、って言いたいところだけど……」




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