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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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命の取引

『まさか例の変身女が現れたの?』



 続けて春香からこの文面が送られてきた。俺は少し悩んだが、



『いや。何もなかったのならいい』



 と返した。直感だが、春香と神崎は会わせない方がいい気がする。しかしあれが変身女だったら春香の痣は反応していたはずなので、あの神崎は十中八九、本物ということになる。それが分かっただけでも大きな収穫だろう。問題は、神崎が何故わざわざ陸奥高校に転入してきたのかということ……。





 放課後。言われた通り屋上に足を運んだところ、神崎が俺を待ち受けていた。幸い他には誰もいない。



「久し振りね、秋人くん。貴方とこんな形で再会するなんて思わなかったわ」

「同感だ。ちょっと見ない間に随分と有名なったみたいだな」

「ええ。おかげで生徒達の目を掻い潜ってここに来るだけでも相当苦労したわ。人気者のツラいところね」

「はっ、嫌味かよ」



 世間話はこれくらいにしておこう。神崎の方から二人きりの状況を作ってくれたのは好都合だ。これで誰にも邪魔される心配はない。


 今の俺は前に闘った時とは違う。たとえ【釘付け】で身動きを封じられようと攻撃手段はある。例えば【氷結】で生成した氷の槍を投擲することも可能だ。



「やる気マンマンって顔ね。私に恨みでもあるのかしら」



 思わず拳に力が入る。この女、自分のしたことを忘れたのか?



「そんなの、あるに決まってるだろ。元はと言えば、お前のせいで千夏は……!!」

「千夏? ああ、以前貴方とデートしてた子ね。彼女とはその後どうなったの?」

「……お前には関係ないだろ」



 千夏の身に起きたことをこいつに話したところで時間の無駄でしかない。一番悪いのは千夏を巻き込んでしまった俺だ、それは分かっている。かと言って神崎のしたことを許すつもりはない。



「やだやだ。女である私にそんな殺意剥き出しの目を向けるなんて、紳士の風上にも置けないわね」

「悪いが俺は相手が女だろうと容赦はしない。なんせ今はジェンダーレスの時代だからな」



 なんか今朝の圭介の戯れ言と被ってしまったが、現に俺は愛城や沢渡達を手にかけている。当然、神崎も例外には当たらない。



「生憎、貴方と闘う気はないの。貴方がこの高校にいること自体、完全に想定外だったし。私の目的は別にある」

「お前にはなくとも俺にはある。そもそも転生杯の参加者同士が出会った以上は闘うのが筋じゃないか?」

「そうね。でも、貴方は私と闘えるのかしら?」

「……どういう意味だ?」

「だって貴方、かなりのアイドルオタクなんでしょ?」



 神崎の発言に、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。



「な、何故それを……!?」

「初めて会った時に貴方が自分から言ってたじゃない」



 そうだっけ!? いや言われてみればそんなことを口走ったような……。生前ほどではないが、今でもアイドルへの情熱は確かに俺の中にある。



「そんな貴方が、今をときめくアイドルの私と闘えるのかって話よ」

「……なるほどな。だがいくらお前が人気アイドルだろうと見逃すつもりはない」

「今ならサイン書いてあげるけど?」

「マジか!? よっしゃ今すぐ色紙とペンを用意するから待って――」



 俺は自分で自分の頬を殴った。何言ってんだ俺は!?



「ハッ、甘くみられたものだな。そんなものに俺が釣られるとでも?」

「わりと釣られそうじゃなかった?」

「とにかくお前はこの場で俺が倒す。腹を括るんだな」

「そう。でも私が死んだら、きっと大勢のファンが悲しむでしょうね……」



 うっ、と思わず息が詰まる。いや惑わされるな!



「心配せずとも、転生杯の支配人が人々の記憶を改竄してくれる。おそらくお前の存在自体がなかったことになるから、悲しむ者は出てこない」

「かもね。だけど『アステロイド』はどうなるのかしら。私は最初からメンバーにいなかったことにされるのか、それとも『アステロイド』というグループの存在そのものが消えるのか。どちらにせよ、今の『アステロイド』は二度と見られなくなるわね」

「……仕方のないことだ」

「でもそうなったら、私や『アステロイド』のファンはどうなるかしらね。私達を応援することで生きる楽しみを見出したり、私達の歌を聴くことで元気を貰っていた人達も多いはず。私が死ぬということは、そんな人達の想いまで奪うことになるのよ。貴方にそんな権利はあるのかしら?」



 くっ、返す言葉が見つからない……!!



「ええい黙れ!! 俺の心を揺さぶって闘いを避けようとしても無駄だ!! 俺はお前を倒す、それだけだ!!」



 俺が啖呵を切ると、神崎は肩を竦めた。



「アイドルオタクの貴方なら分かってくれると思ったのに、残念だわ。だったら取引をしましょう」

「……取引だと?」

「私が目的を果たすまで、私を殺すのはやめてもらえないかしら。その代わり私が目的を果たしたら、この命は貴方の好きにしていいわ」

「何……!?」



 自ら命を差し出すというのか。一体どういうつもりだ。



「それはつまり、目的を果たしたら死んでも構わないってことか?」

「そういうことよ」

「分かっているのか? 死ぬってことは、転生杯から脱落する。転生権が手に入らないってことだぞ」

「別に構わないわ」




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