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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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最大限の警戒

「雪風兄弟みたく、地中深くに拠点を移せたら一番安全なんだけどな」



 推測だがあいつらの方法としては、まず雪風の【氷結】で地中に巨大な氷塊を生成して空間を作り、次に雪風弟の【入替】でその氷塊と適当な部屋を入れ替え、そこを拠点としたのだろう。現在俺はどちらのスキルも所有しているので一見真似できそうだが……。



「それって秋人以外は地上と地下を自由に行き来できないじゃない。トイレにも行けないなんて不便にも程があるわ」

「……確かに」



 それ以前に俺はマルチプルでもなければ空間認識能力も乏しいので、あの兄弟ほどスキルの力を引き出せていない。要は真似したくてもできないのだ。



「しばらくこの部屋で三人暮らしってわけか……」



 ん!? てことは俺、真冬と春香の二人と同じ部屋で寝ることになるのか!? うおおおおお緊張してきたあああああ!!



「何言ってるの? 秋人は隣りの部屋だから。はいこれ」



 俺に鍵を差し出す真冬。ですよねー。



「アタシは別に三人一緒でもいいけど? 旅行みたいで楽しいじゃない。お風呂上がりにトランプとか人生ゲームやりたい!」



 そうだ言ってやれ春香!



「遊びに来たんじゃないから!! それに秋人と一緒に寝て夜中に、へ、変なことされたらどうするの!?」

「そんな怒らなくてもいいじゃない。てか変なことって何? コチョコチョとか?」



 六歳児の純粋さが眩しい。



「そ、それは……!!」



 顔を赤くした真冬が横目で俺を見てくる。正直、真冬達と一緒に寝て絶対に手を出さないという自信はないです。



「と、とにかく秋人は別室!! これは決定事項だから!!」

「はいはい、分かったわよ」



 結局二人とは別室になってしまった。まあ寝る時以外は全然来てもらって構わないと言ってくれたし、もし二人と同じ部屋で寝ることになったら理性を保つのに精一杯で変身女どころじゃなくなりそうだしな。


 その夜、俺は駄目元で陸奥高校へ赴いて日付が変わるまで待ち構えてみたが、変身女が現れることはなかった。やはり昨日の今日では姿を見せないか……。




   ☆




 拠点を移した翌朝。今日は学校があるため、俺と春香はホテルを出た。真冬が極力陸奥高校から遠くないホテルを選んでくれたので、登校距離はアジトとほぼ変わらない。



「いつもと違う道を歩いて登校するのって、なんか新鮮よね」

「……ああ」



 俺は今、極限まで警戒心を高めながら歩いていた。



「……顔が怖いわよ秋人。すれ違う人達がちょっと引いてるじゃない」

「仕方ないだろ、あの変身女のことを考えたら」



 俺が陸奥高校の生徒というのはバレてるだろうし、この登校中にも一般人に化けて襲ってくるかもしれない。そう思うと、なんだか周囲の人間が全員怪しく見えてしまう。いくら俺でもいきなり背後からナイフで刺されでもしたら一溜まりもない。



「不意打ちを狙おうにも近づいてきた時点でアタシの痣が反応してくれるから、そこまで警戒しなくていいんじゃない?」

「……それもそうだな」



 春香の言う通りだ。春香はまだ変身女と出くわしていないため、誰に姿を変えていようと春香の痣で分かる。たとえ一般人に化けていても痣は問題なく反応するはずだ。あまり度が過ぎると人間不信に陥りそうだし、程々にしておこう。


 それに参加者同士の闘いは深夜にやるのが暗黙の了解みたいなところがあるし、あの変身女もこんな朝早くから現れたりしないだろう。まあ雪風のように白昼堂々と仕掛けてきた奴もいたから一概には言えないが。


 結局何事もないまま、俺と春香は陸奥高校に着いた。だが油断は禁物、もしかしたら陸奥高校の生徒の誰かに化けているかもしれない。


 もし俺があの変身女だったら、一般の生徒には化けないだろう。万が一正体がバレて即戦闘になったら、一般人の姿では対処が遅れるからだ。そしてこの高校には参加者がもう一人いる。



「春香ちゃーん!! 秋人くーん!! おっはよーにゃー!!」



 噂をすれば、遠くから元気な声と共に朝野が走ってくるのが見えた。俺が生徒の誰かに化けるとしたら間違いなく朝野だ。実力は申し分ないし、俺達と交流もあるので油断を誘いやすい。しかし春香の痣は無反応なので、ひとまずこの朝野は本物のようだ。



「朝っぱらからうるさいのが来たわね……」

「聞いて聞いて! この前の再々々テスト、合格だったんだよ! もうテンション爆上げにゃー!!」



 結果は気になっていたが、無事に合格できたらしい。もし駄目だったら退学になっていたわけだし、そりゃテンションも上がるだろう。



「へー、それは良かったわね。チッ」

「なんで舌打ち!? 私に勉強教えてくれたの春香ちゃんじゃん!」

「そうね。せいぜい感謝しなさいよ」

「うん!! 本当にありがとう春香ちゃん!! 大好き!!」

「ちょっ、抱きつかないで!」



 迷惑そうにしているが、春香も満更ではなさそうだ。いろいろと忙しい中で朝野に勉強を教えていたわけだから、その苦労が報われて多少なりとも嬉しいのだろう。



「ま、その調子で今度の期末テストも頑張ることね」



 春香がそう口にした瞬間、朝野の動きがピタリと止まった。




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