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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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闘う理由

 トントン、と真冬が隣りの席を叩く。ここに座ってということらしい。俺は緊張を抑え込みつつ席を立ち、真冬の隣りに移動した。


 それからしばらく沈黙が流れる。どうやら真冬は頭の中で言葉を整理している様子なので、真冬が口を開くまで待つことにした。



「……実は、秋人に謝りたいことがあって」



 やがて真冬が切り出した。



「ん? 参加者が現れたかもって話が嘘だったことならもう……」

「それじゃなくて、昨日のこと」

「……昨日?」



 真冬は小さく頷き、どこか思い詰めた顔で言葉を続ける。



「私が的外れな推理をしたせいで、細道が九年前の事件で秋人を陥れた真犯人だと勘違いさせてしまった。一つの考えに囚われず、もっと他の可能性も探るべきだった。戦闘面では力になれない分、こういう時こそ役に立たないといけなかったのに……」

「なんだ、そのことか。確かに復讐を果たせなかったのは残念だったけど、真冬が責任を感じることじゃない。俺なんて推理するという発想すらなかったからな。だから気にしなくていい」

「……ん。ありがと」



 それに真冬の存在は十分すぎるほど俺の力になっている――口に出すのは気恥ずかしかったので、心の中でそう付け加えた。



「こんなこと言ったら、怒るかもしれないけど……。秋人の復讐が先送りになって、ちょっとだけ安心してる」

「……なんでだ?」



 少しの間を置いて、真冬は躊躇いがちに口を開けた。



「秋人は自分の復讐に協力してもらうという条件で、私達の仲間になった。だから復讐を果たしてしまったら、私達と一緒にいる理由もなくなって、どこかに行っちゃうんじゃないかと――いたっ」



 俺は真冬の頭を軽くチョップした。



「……何するの」

「ったく、そんなこと本気で思ってるのか? 確かに俺が真冬達の仲間になったのは復讐を果たす為だ。でも、今はそれだけじゃない。真冬、春香、そして千夏の存在が、俺の闘う理由になってるんだ」

「……!!」

「だから真犯人への復讐を果たしたとしても、俺が真冬達のもとから去ることは絶対にない。それくらい察してくれよな」



 我ながらキザな台詞だが、紛れもない俺の本心だ。



「ごめん。ただ、ちょっと不安だったから」

「真冬だって、同じ思いだろ?」

「ん。四人で転生杯を生き残ることが私の願い。転生権を手に入れる為にも」



 ――仮にお前が転生権を手に入れることができたとしても、お前は月坂秋人としての記憶を全て失うことになる。それってさ、赤の他人と何が違うと思う?



 真冬から転生権という言葉を聞いて、ふと大地の台詞が脳裏を過ぎった。



「秋人? どうかした?」

「あ、いや……。真冬は転生権、欲しいよな?」



 何故そんなことを聞くのか、という顔で首を傾げる真冬。



「当然。私だけじゃなく全ての参加者が欲しいと思ってるはず」

「……だよな」



 愚問だった。その転生権を手に入れる為に、転生杯参加者は闘ってるんじゃないか。大地の戯れ言に惑わされてどうする。



「ただ……」

「ただ?」

「これは、例えばの話。転生権か、大切な人の命か。どちらか一つを選べと言われたら、私は大切な人の命を選ぶと思う」



 迷いのない目で真冬は言った。そんなの、俺だって――



「私が言いたいのは、必ずしも転生権の優先順位は一番じゃないってこと。秋人だって転生権か服が透けて見える眼鏡か選べと言われたら、迷わず眼鏡の方を選ぶでしょ?」

「はは、そんなの当たり前――って何言わせんだ!」

「秋人って、ほんとムッツリ」

「くっ……!!」



 見事に引っ掛かってしまった。そりゃ健全な男ならそのような眼鏡、欲しくないわけがないだろう。



「てか、まだ話してもらってないぞ。真冬が俺を遊園地に連れてきた理由」

「……ん」



 短い沈黙の後、真冬は静かに口を開いた。



「理由は二つある。一つ目は、秋人に元気になってほしかったから」

「えっ……?」



 予想外の答えに、俺は呆気にとられた。



「昨日の一件で秋人は酷くショックを受けてた様子だったから、遊園地で思いっきり遊べば、元気になるかもと思って……」



 俺は胸の鼓動が高鳴るのを感じた。真冬は外が苦手なのに、落ち込んでいた俺のことを想って、この遊園地まで連れてきてくれたのか。



「だったら普通に誘えばよかったのに。なんであんな回りくどい……」

「その、なんか、恥ずかしかったから。誰かを遊園地に誘ったことなんて、一度もなかったし……」



 顔を赤くして俯く真冬。なんて不器用な子だろう。だけど真冬のそういうところも俺は好きだ。



「ど、どうだった秋人。少しは元気出た……?」

「ああ。少しどころか、もうバッチリ。凄く楽しかった」

「……よかった」



 胸の前で手を握りしめ、安堵の顔を浮かべる真冬。



「でも今回ばかりは春香には内緒にしといた方がいいかもな。春香が知ったら『二人だけで遊園地なんてズルいわ!』とか喚きそうだし」

「……確かに」



 俺も真冬も苦笑い。気付けばゴンドラは頂上付近まで来ていた。遠くの街並みまで一望できて、まさに絶好の景色だ。春香にも見せてやりたかった――あ、そういや春香は高所恐怖症だった。ならこの景色を見ても震えるだけだろうな。




おかげさまで250話達成です。これからも頑張ります。

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