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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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奇妙な夢

「でも大丈夫かしらねー。一般人を殺しちゃったわけだし、今頃は結構な騒ぎになってるかもしれないわよ?」



 そう言いながら、春香がテレビをつける。



「何言ってんだよ。どうせいつものように支配人様が痕跡を全て消してくれてるだろうし、騒ぎになりようがないだろ」



 鮫島との闘いで大穴が空いた路上も、愛城との闘いで滅茶苦茶になった公園も、翌日には綺麗サッパリ元通りになっていたしな。でなければあんなに堂々と殺人を犯したりはしない。だから昨日の出来事も世間には一ミリも伝わってないはず――



『昨晩、トンネル内で一人の男性の遺体が発見されました。遺体は酷く損傷した状態であり、警察は殺人事件として捜査を進めています。殺害されたのは検察官の黒田政志さんと見られ、警察は犯人の行方を追うと共に情報提供を呼びかけ――』



 テレビから流れてきたニュースを見て、俺は呆然と立ち尽くした。



「あらあら、なんて残酷な事件なのかしら。犯人の顔が見てみたいわ」

「見たけりゃ見ろ!! それよりなんで普通に報道されてるんだよ!? こういうのは支配人が揉み消してくれるんじゃないのか!? 今までそうだったよな!?」

「アタシに言われても困るわよ」

「な、なんでだ……。今回は参加者同士の闘いじゃなかったからか? いや多分関係ないよな……」



 今すぐ支配人を問い質したいところだが、あの子に会う方法なんて知らないので生憎それはできない。



「あくまで推測だけど、支配人が痕跡を消してるのは、転生杯の進行に支障をきたす怖れのある場合――つまり私達のような特殊な力を使う者の存在が公になる可能性がある場合に限ってるのだと思う」



 冷静な口調で真冬が分析する。



「それじゃ今回は痕跡を消さなくても問題ないと判断されたってことか……!?」

「ん。路上に巨大な穴を開けたり公園の遊具を吹き飛ばしたりといった、常人では不可能な事件が世間に広まれば、私達の存在が公になって転生杯どころではなくなるかもしれない。だから痕跡を消された。逆に言えば世間に広まっても影響がなさそうな事件はスルーされる。そのあたりは支配人の匙加減次第だろうけど」

「マジかよ……」



 その理屈で言うなら、常人には不可能だと見なされるくらい派手に殺しておけばよかったってことか? もう遅いけども。



「俺、このまま捜査が進んだら逮捕されるんじゃ……」



 額から嫌な汗が噴き出てくる。生前の冤罪と違って今回は紛うことなき殺人犯だし。



「大丈夫じゃない? 本来アタシ達はもうこの世に存在しない人間なんだから、捜査のしようがないでしょ」

「念のため監視カメラの映像はすり替えておいたし、私が確認した限り秋人を目撃した人はいなかったから心配には及ばない」

「ま、もし逮捕されても面会には行ってあげるから!」

「ん。ちゃんと差し入れも持っていく」



 なんでこんなに楽観的なんだこの二人は。牢屋の中で仮転生体の使用期限が過ぎて消滅したら笑えないぞ。とりあえず逮捕されないことを祈ろう……。




  ☆




『くそっ……ここまでか……!!』

『なんて強さだ……!!』

『勝てる気が……しねえ……!!』



 目の前で全身傷だらけの三人の男が恐怖に怯えている。僕達はこいつらと闘い、終始圧倒したまま追い詰めた。



『ククッ。これで分かったか? オレ達は最強なんだよ』



 僕の隣りにいる青年が、三人を見下ろしながら不敵に笑う。こいつは僕の相棒、京谷。僕はこの第七次転生杯において京谷とタッグを組み、ここまで難なく勝利を重ねてきた。この闘いもそうだ。



『あばよ、雑魚ども』



 京谷がトドメを刺す。間もなく三人とも塵となって消滅した。



『やったな京谷』

『ああ、今回も楽勝だったな。もはや転生権はオレ達の手に渡ったも同然だ』

『それは気が早すぎるんじゃないか?』

『んなことねーだろ。オレ達に勝てる奴なんて存在しねーよ』

『そうだな。京谷となら誰にも負ける気がしない』

『ククッ。分かってんじゃねーか、大地』



 僕と京谷は互いの拳を合わせる。京谷となら必ず最後まで勝ち残れる――この時まではそう信じて疑わなかった。




  ☆




「…………」



 朝になり、目が覚めた俺は、ゆっくりと身体を起こした。


 最近、妙な夢を見るようになった。起きた時には内容はほとんど忘れているのだが、その夢には京谷と大地という二人の人物が登場し、大地の視点で話が進む。


 まるで過去に自分が体験した出来事を見ている感覚なのだが、京谷なんて名前は知らないし、そもそも俺は大地などという名前ではない。かと言って赤の他人の出来事にも思えないという、なんとも不思議な夢である。


 まあ、所詮夢は夢。大した意味はないだろうと、俺はそこまで深く考えなかった。





 黒田を殺害してから一週間が過ぎた。その間は幸か不幸か、他の参加者と遭遇することは一度もなかった。ちょっと前には三日連続で参加者と出くわしたというのに、このペース配分はどうにかならないものか。


 ちなみに黒田を殺してから今日まで逮捕されたり事情聴取を受けたりすることもなく、アジトで普通に日々を過ごしている。まだ安心はできないが、一週間何もないということは多分この先も大丈夫だろう。二度目の獄中生活は回避できそうでよかった。相変わらず報道は続いてるからテレビを観る度に胃が痛くなるけど。



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