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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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あの時の後悔

「……どういうこと?」



 俺が作戦の概要を伝えると、真冬は納得した顔で頷いた。



「シンプルだけど、その方法なら細道のスキルを封じられるかも。ただし問題は……」

「どうやってその状況までもっていくか、だな」



 ネックになるのが参加者の痣だ。細道に接近すれば互いの痣が反応し合ってこちらの存在に気付かれるため、その時点で作戦の成功率が大幅にダウンする。何か良い手はないものかと俺が頭を悩ませていると、真冬がこう口にした。



「秋人。その作戦、私にも協力させて」

「ん? もうとっくに協力してもらって――」

「そういう意味じゃない。私もその場に出向いて、秋人に力を貸したいってこと」

「……は!?」



 俺は驚きを隠せなかった。それもそのはず、いつも後方で俺達をサポートしている真冬が、自ら前線に出ると言い出したのだから。



「何を言ってんだ真冬!? 冗談だよな!?」

「冗談じゃない。本気で言ってる」

「真冬も言ってただろ、細道はかなり手強い相手になるって!! もし真冬の身に何かあったら……!!」

「分かってる。それでも協力させて」



 真冬の目から確固たる意志が伝わってくる。しかし分からない、俺が知ってる真冬は自ら火中に飛び込むような真似はしないはずだ。ニーベルングとの闘いの時は緊急事態だったのでまだ分かるが、今回はそういうわけでもない。



「一体どうしたんだ真冬。なんでそんな……」



 真冬は俯く。そして短い沈黙の後、静かに口を開いた。



「私の、沢渡達への復讐。秋人はそれに協力してくれた。だから今度は私の番」

「いや、これだけ情報を集めてもらっただけでも十分協力して――」

「それだけじゃ駄目!」



 強い口調で言葉を遮られ、思わず俺は気を呑まれた。



「これは、私自身の為でもあるの」

「……どういう意味だ?」

「あの時、私には沢渡達を殺す勇気がなかった。だから代わりに秋人が沢渡達を殺してくれた。でもそれは、私の復讐を秋人に押しつけてしまった、ということ……」

「俺には押しつけられたなんて自覚はないぞ」



 真冬は右の拳を握りしめ、自分の胸に当てた。



「それでも、あの時のことがずっと、罪悪感として私の中に残ってる。だから私にも、秋人の復讐を背負わせて。そうすれば、少しだけ心が軽くなる気がするから」

「……そうか」



 やはり真冬はまだ、あの時の後悔を完全に断ち切れてなかったのか。そこまで言われたら異論などあるはずもない。



「勿論、何の考えもなく協力すると言ってるわけじゃない」



 俺の作戦に、真冬が追加の案を出す。それを聞いて俺はまたしても驚いた。



「危険じゃないか!? もし失敗して真冬の身に何かあったら……!!」

「危険は承知の上。これくらいしないと協力する意味がない」



 とっくに覚悟はできているようだ。本当は止めたいが、俺も腹を括って真冬の意志を尊重すると決めた。それに真冬の〝記憶を読み取るスキル〟は、尋問の際に細道が口を割らなかった場合の保険にもなる。



「分かった、その作戦でいこう。ただし無茶だけはしないでくれよ」

「ん」



 斯くして細道への復讐は、真冬と二人で臨むことになった。



「……秋人。一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「何だ?」

「晴れて細道への復讐を遂げることができたら……。その後、秋人はどうするの?」



 どこか不安げな眼差しを、俺に向ける真冬。



「どうするって、今まで通り転生権を手に入れる為に闘い続ける。それだけだ」

「……そう」

「? なんでそんなこと聞いて――」

「ごめん、ちょっとトイレ」



 どこか誤魔化すように真冬は早足で部屋を出る。俺は真冬の質問の意図を汲み取れず、ただ首を傾げていた。




  ☆




 ファミレスでの勤務を終えた細道は、人通りの少ない帰り道を一人で歩いていた。居酒屋でも寄っていかないかとバイト仲間に誘われたが、細道は丁重にお断りした。理由は勿論、同棲中の彼女がいるからだ。そもそも現在未成年の細道を居酒屋に誘うなど無神経にも程がある。



「今日の夜食は何かなー」



 鼻歌交じりにそんな独り言を呟く細道。仕事の日はいつも同棲中の彼女が夜食を作って自分の帰りを待ってくれている。彼女は店でキッチンを任されているだけあって、料理の腕はかなりのものだ。



「!!」



 突然、細道は右腕に強い痛みを感じ、足を止めて袖を捲った。右腕の〝42〟の痣が反応している。近くに転生杯の参加者がいる合図だ。細道は素早く周囲を見渡す。通行人はほぼいないので参加者が現れたらすぐに分かるはず――


 ふと、誰かの足音が聞こえた。細道はその方向に駆け出す。そして十字路を左に曲がると、その先に一人の女子が立っていた。右腕の〝51〟の痣が、細道の痣と同様に赤く光っている。間違いない、あの子が参加者だ。



「あっ……!!」



 その女子は細道の姿を見た途端、怯えた顔で一目散に逃げ出した。



「待て!!」



 細道はすぐさま追いかける。しかし鬼ごっこも長くは続かなかった。その女子の逃げた先が行き止まりだったからだ。こうなっては袋のネズミである。



「残念だったな」



 震える女子に、細道は一歩一歩、近づいていく。




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