復讐の下準備
「なるほどな……」
流石は真冬。俺の記憶を視ただけでそこまで導き出すとは、俺みたいな凡人とは着眼点が違う。俺達は細道のスキルを【時空移動(仮)】とした。
「でもそのスキル、いくら何でも強すぎないか?」
時間と空間を自由に移動できるスキルなんてチートにも程がある。マルチプルですらそれほどスキルを持つ奴はいないだろう。
「そこは私も引っ掛かってる。何か厳しい制約とか発動条件があるのかも……」
「まあスキルの対処は後で考えるとして、まずはどこで細道と対峙するかだ。細道の自宅に奇襲をかけるのが一番手っ取り早いだろうけど、なんせマンションだしな。戦闘になった場合、他の住民に被害が出るかもしれない……」
「正確には細道の自宅じゃなくて、細道と同棲してる女の自宅だけど」
「……は!? 同棲!?」
「ん。名前は若杉佐由、19歳の女子大生。この女についても調べたけど、ただの一般人で間違いない。細道はこの若杉という女の自宅で生活してる」
モニターに若杉という女の顔写真が映し出される。なかなか可愛いなオイ。こんな女子大生と同棲なんて羨ま――って、美少女二人と同居してる俺が言ったらバチが当たるな。むしろ俺の方が勝ってるという自信がある。今日までどれだけ良い思いをしてきたことか。
「なにニヤついてるの秋人」
「いやあ、俺は恵まれてるなと改めて思っただけだ」
「……何の話?」
「気にしないでくれ」
16歳の分際でどうやって女子大生とお近づきになったのか気になるが、それは置いておこう。しかし彼女と同棲しているのなら、尚のこと自宅への奇襲はできない。一般人はできる限り巻き込まないのが俺の信条だからだ。
「細道と若杉はマンション近くの『エンジョイフル』というファミレスで週3、4日働いてる。細道はホール担当、若杉はキッチン担当。二人とも勤務時間は基本的に13時から23時まで」
モニターに店の画像が出る。エンジョイフルは全国展開しているファミレスであり、俺も生前に何度か行ったことがある。しかし仮転生しても尚ちゃんと働いてるとはご苦労なことだ。きっと若杉とはこの店で出会ったのだろう。狙うとしたら勤務終了後の帰り道が最適か。黒田の時と同じだな。
「細道に仲間は?」
「いないと断言していい。過去に誰かと組んでいたという情報もない」
それなら他の参加者に邪魔される心配もなさそうだ。俺の復讐に水を差されたくはないからな。
「この情報はいらないかもだけど、細道のスマホをハッキングして若杉とのLINEを見たら、細道は『そうちゃん』と呼ばれてた」
「下の名前が宗吾だからそうちゃん、ね。てかスマホまでハッキングできるんだな真冬……」
「ん。だから秋人のスマホにエッチな画像や動画が沢山保存されてるのも知ってる」
「へー、それはビックリ――え!? 嘘だろ!?」
「冗談。さすがの私も仲間のプライバシーを侵害したりはしない」
「な、なんだ……」
俺は胸を撫で下ろす。危うく俺の性嗜好がバレるところだった。
「でも今の反応、やっぱり図星なんだ」
「うっ……」
しまった、カマをかけられていたのか。真冬はジト目で俺を睨んでいる。なんとか弁明しなくては……!!
「安心しろ真冬! どんな画像も動画も、真冬の生の裸に勝るものはないからな!」
「~~~~!!」
バチーン。真冬のビンタが俺の頬に炸裂。うん、今のは完全に俺が悪い。
「話を戻すけど、今日のシフト、細道は出勤で若杉は公休になってる。この場合の細道はかなりの確率で、勤務が終わったら寄り道せず真っ直ぐ帰宅している」
もうそこまで調べていたとは。つまり細道は今日、マンションまでの帰り道を一人で歩くことになる。
「決まりだな。決行は今夜23時だ」
ただし即座に殺しはしない。三人の人間を殺害し、その罪を俺に被せた動機を尋問しなければならない。少なくとも俺と細道の間に面識はなく、顔にも見覚えはないので、俺を恨んでの犯行という線は薄い。ただの愉快犯だとしても、果たしてここまで手の込んだ真似をするだろうか。まあ本人に直接聞けば分かることだ。
「だけど細道のスキルが私の推理通りだったとしたら、かなり手強い相手になる。勝算はあるの?」
「そうだな……」
俺は【時空移動(仮)】を操る細道との闘いを脳内でシミュレーションしてみる。俺がどれだけ攻撃しても空間移動により回避され、仮に追い詰めたとしても過去への時間移動により事実そのものを改変されてしまう。真冬の言う通り厳しい制約や発動条件があったとしても、それが分からない以上は手の打ちようがない。
「真正面から闘うのはリスクが高いし、やはりスキルを使わせないのが一番だ。となると細道の彼女を利用しない手はない」
あまりこういうやり口は好きではないが、確実に復讐を果たす為にも、今回ばかりは強攻策を使う。
「もしかして若杉を人質に取る気?」
「まさか。一般人を巻き込むわけにはいかないし、たとえ復讐の為であってもそんな卑劣な手は使わない。あくまで利用するのは〝名前〟だけだ」
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