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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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42番目の参加者

 グウの音も出ない。実際そのせいで夜神と無意味な闘いをする羽目になったし、反省しよう。



「そもそもアジトの周辺は常に監視してるから襲撃の兆候があったら事前に対処するし、仮に襲撃があったとしても『できるだけ早く戻ってきて』なんて言い方はしない」



 そう言われるとそうだが、転生杯に参加している以上、最悪の事態を想定してしまうのは致し方ないことだろう。



「……でも、私のことを心配して急いで戻ってきてくれたのは、嬉しかった。ありがと」



 気恥ずかしそうに真冬が言った。まあ、真冬の照れ顔が見られただけでも必死に走ってきた甲斐はあったな。しかしエミリアさんには失礼なことをしてしまった。後日ちゃんと謝りに行こう。



「だったらなんで、あんな切羽詰まった感じで電話してきたんだ?」

「ある人物の情報を入手して、ちょっと興奮してただけ」

「ある人物?」

「ん。とりあえず座って」

「……ああ」



 言われるまま椅子に座ると、真冬が真面目な顔つきで俺を見つめてきた。可愛い女子に見つめられるのは悪い気はしないが……。



「な、何だ?」

「……生前、秋人に殺人の濡れ衣を着せた真犯人。秋人は今でも、その真犯人に復讐したいと思ってる?」



 真冬からの思いがけない質問に、俺は目を丸くした。



「なんで、そんな……」

「いいから答えて」



 何故今更そんなことを聞くのか。真冬の真意は分からないが、俺の答えは一つだ。



「当たり前だ。その為に俺は転生杯に参加したんだからな」



 強い意志を込めて俺は言った。しかしそいつの正体は未だに掴めていないが現状だ。唯一の手掛かりは、現場に残されていた〝42〟の数字。おそらく転生杯の42番目の参加者ということを示唆しているのだろうが……。



「……そう」



 真冬は小さく息をついた後、ある物を手に取って俺に見せてきた。



「それ、広瀬から奪ったっていうUSBメモリだよな?」

「ん。破損してデータが読み込めなくなって、その復元をしてるというのは前にも話したと思うけど……。その過程で、ある人物の情報が出てきた」

「ある人物? 何か気になる参加者でも――」



 その時、俺は全てを理解した。何故真冬があんな質問をしたのか。そして〝ある人物〟というのが一体誰なのか。



「まさか……!!」

「ん。そのまさか」



 真冬がモニターの方に身体を向け、キーボートを叩く。間もなくモニターに、ある男の情報が顔写真と共に表示された。



「USBメモリに記録されていたのは、数字ごとに振り分けられた様々な人物の情報。この数字は間違いなく参加者の痣を示している。つまり……」



 俺は立ち上がり、大きく目を見開いた。その男に振り分けられていた数字が、まさに〝42〟だったのである。



「つまりこいつが……42番目の参加者……!!」



 俺の身体が震え出す。ついに、ついに見つけた。三人の人間を殺し、その罪を俺に擦り付け、俺を死刑へと追いやった真犯人。これが武者震いというやつか。なりを潜めていた俺の復讐心が、再び湧き上がってくるのを感じた。



「ありがとう、真冬。真冬が仲間で本当に良かったと、改めて思ったよ」



 その男の名は細道宗吾。顔写真だけ見る限りは爽やかな好青年であり、とても凶行に及ぶような奴には見えないが、人は見かけに寄らないってやつか。肝心のスキルに関する情報こそなかったものの、細道の現住所はしっかりと記載されていた。



「よし。そうと決まれば今すぐこいつの所に――」

「待って秋人」



 復讐を果たすべく早速動き出そうとしたが、真冬に腕を掴まれた。



「何だ? 言っておくが止めても無駄だぞ」

「今更止めたりしない。そもそも止めるつもりだったら、こんな情報を秋人に教えたりしない」

「……だよな」

「ただ、この情報の出所は広瀬だから、信憑性は定かじゃない。まずはこの男が本当に42番目の参加者かどうか確認する必要がある」

「…………」

「それに黒田の時と違って、今回の相手は転生杯の参加者。どんなスキルを持ってるかも分からないし、確実に復讐を成功させたいなら、入念に下調べをした方がいい。そのあたりのことは私に任せて」



 真冬の言ってることは正しい。俺は一旦気持ちを鎮め、椅子に座り直した。



「……そうだな。頼んだ、真冬」

「ん」



 その後の話し合いの結果、復讐の決行日は三日後となった。それが俺の衝動を抑えられる限界ラインだ。その間に真冬が有力な情報を集めてくれると信じよう。



「それと、この件は春香には内緒にしといてくれないか」

「……どうして?」

「春香はアイドル部の活動で忙しい上に、朝野の勉強係まで任せちゃったからな。これ以上、余計な負担は掛けたくないんだ」



 俺がそう言うと、真冬は小さく微笑んだ。



「秋人、変わったね。出会ったばかりの頃だったら、そんな優しい言葉は出てこなかったと思う」

「そうか?」



 言われてみれば確かに、あの頃の俺だったら復讐のことしか考えず、それと無関係のことに気を回したりはしなかっただろう。



「俺も甘くなったってことかな……」

「別にいいと思う。少なくとも私は今の秋人の方が好き」

「え? それってどういう……」



 無意識の発言だったのか、みるみるうちに真冬の顔が赤くなった。




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