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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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拒絶の真相

「どうでもいいから、そろそろ帰ってくれる?」



 冷淡な声で真冬が言った。容赦ないな。



「悪いが帰るつもりはない。何故なら泊めてもらうつもりで来たのだからな。さあ真冬、久々にパジャマパーティといこうじゃないか!」

「帰って」

「え? いや、ちゃんとお泊まりセットも持参して……」

「帰って」

「もうこんな時間だから電車もないし……」

「帰って」

「……はい」



 哀愁の漂う背中を見せながら、外に出る夜神。さすがに少し気の毒である。



「秋人、春香、そして真冬。同盟を結んだ以上、これから協力して第三勢力との闘いに臨むこともあるだろう。せいぜい足を引っ張らないよう、腕を磨いておくことだ。ではまた会おう」



 そう言い残し、夜神は颯爽と去っていった。あれだけ醜態を晒しておきながら、よくもカッコつけられるものだ。



「さて、寝るか……」

「私も寝る……」



 なんか今日はいろいろありすぎて本当に疲れた。俺は部屋のベッドに飛び込むと、そのまま眠りについた。





 午前三時過ぎ。空腹のあまり、俺は目が覚めてしまった。そういや昨日の昼から何も食べてなかった。春香を助けようと必死で夕飯どころじゃなかったし、夜神が用意したスイーツバイキングにも全く手をつけなかったからな……。


 とりあえず何か胃に入れようと、俺は身体を起こしてリビングに向かった。



「……ん?」



 冷蔵庫が開いている。その傍には魚肉ソーセージを口にくわえるパジャマ姿の真冬がいた。俺と目が合い、顔を真っ赤にする。



「ち、違っ……!! これは、その、冷蔵庫に爆弾を仕掛けようと思って……!!」

「言い訳が怖い!!」



 小腹が空いたと正直に言えばいいのに。乙女心は複雑だ。



「……秋人は?」

「俺も腹が減ってな」



 冷蔵庫の中を覗くと、魚肉ソーセージの他にもチーズやナッツがあったので、それらを手に取った。



「チョイスが完全におっさん」

「ほっとけ」



 欲を言うとビールのつまみにしたいところだが、今は未成年だから酒は買えないんだよな。この生活にも慣れてきたとはいえ、やはり久々に飲みたい気持ちはある。



「それじゃ、おやすみ」

「待ってくれ真冬」



 そそくさとリビングから立ち去ろうとした真冬を、俺は呼び止めた。



「何?」

「少し話がしたいんだけど、いいか?」

「……話?」

「ああ。時間が時間だし、無理にとは言わないけど」

「……ん」



 明かりをつけ、俺と真冬はソファーに腰を下ろした。なんだかこんな深夜に女の子と二人きりだと、妙に緊張してしまう。



「話って?」

「いやまあ、大したことじゃないんだけど、ちょっと気になったというか……。真冬と夜神のことだ」



 やっぱり、という真冬の顔。



「あっ、もしこれ以上触れられたくないなら、遠慮せず言ってくれ」

「……別に。本当は隠しておきたかったけど、あの人が好き放題喋ったせいで、もうどうでもよくなった」

「ははっ、そうか」



 俺は一旦頭の中で言葉を整理した後、口を開いた。



「真冬が夜神と縁を切った理由について、聞きたくてな」

「……生理的に受けつけなくなったから、そう言ったはずだけど」

「本当にそれだけか?」

「……どういう意味?」



 仮転生してから今日までの様々な出来事が、脳裏を過ぎる。



「真冬達の仲間になって、転生杯を闘っていく中で、思ったんだ。真冬は仲間のことをとても大事にしてるんだなって」

「そ、そんなことは……」



 照れ臭そうに真冬は頬をかく。一番印象に残っているのは、ニーベルングとの闘いの後に昏睡状態から目覚めた時だ。あの時の真冬の顔は今でも忘れない。一体どれだけ俺のことを心配していたことか。



「そんな真冬が、それだけの理由で夜神と縁を切るなんて、どうにも信じられなくてな。何か他に理由があったんじゃないか?」

「…………」



 短い沈黙の後、真冬が静かに口を開いた。



「私があの人と……恋歌と組んでた時は、恋歌が戦線に出て私がそのサポートをする、そういう闘い方だった」

「夜神もそう言ってたな」

「だけど恋歌は、大抵のことは一人でこなせる人だった。私がちょっと教えただけでハッキングのやり方まで覚えちゃうし」

「まあ、万能タイプって感じはするな」

「その内、私は必要ないんじゃないかと……。むしろ恋歌の足を引っ張ってるんじゃないかと思うようになった」

「……それで、自分から夜神のもとを去ったのか」



 真冬は小さく頷いた。夜神のことを想っての行動だったんだな。そのせいで夜神は相当こじらせてしまったようだが。



「それから春香と出会って、秋人と千夏の四人でチームを組んで……。今はちゃんと仲間の役に立ってるという自信があるから、そういう悩みもなくなった」

「はは、それはよかった」

「……ごめん。ちょっと調子に乗ったかも」

「そんなことないだろ。実際、真冬には何度も助けてもらったからな。真冬が仲間で本当に良かった」

「……そう言ってもらえると嬉しい」



 裏を返せば、俺には一人で闘えるほどの力はないということになる。しかしそこは重要ではないだろう。確かに総合的な能力では夜神に及ばないかもしれないが、この転生杯は個々の力だけで決まるわけではない。仲間同士で足りない部分を補い合うことも、立派な一つの闘い方だ。




ブックマーク・評価をいただけると部屋の掃除が捗りそうです。よろしくお願いします。

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