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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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男or女

「!」



 その時、浴場のドアが開いた。現在この城に男は俺一人だし、女子の誰かだ。まあ間違いなく春香だろう。正直ちょっとだけ期待していた自分もいるが、建前上ちゃんと注意はしておこう。



「おい春香、入ってくるなとあれほど――ブーッ!?」



 俺は盛大に噴き出した。入ってきたのは春香ではなく、なんと夕季であった。



「おまっ、何してんだよ!?」

「え? 僕もお風呂に入ろうかと……」



 何が駄目なのか分からない、という夕季の顔。タオルで首から下を隠してはいるが、女子が男湯に入ってくるなど大問題だ。



「痴女かお前は! それとも実はそういうキャラだったのか!?」

「いや男ですよ僕!?」

「……え?」



 衝撃の事実に、俺は一瞬言葉を失った。



「す、すまん。聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれ」

「だから男ですって! 確かによく勘違いされますけど、一人称が僕って時点で気付いてくださいよ!」

「いわゆる僕っ子なのかと……」



 言われてみれば中性的な顔立ちだし胸もないので、男であっても不思議ではない。しかし胸以外のボディラインは女にしか見えないので、どうにも信じられない。



「だったらなんでタオルで隠してるんだ。男同士なら問題ないだろ」

「それは、その、なんとなく……」



 顔を赤くしてモジモジする夕季。仕草も完全に女だ。というか下はまだ分かるが上まで隠す必要ないだろ。やはりこの目で直接確かめてみるしかない。



「ちょっとタオルを取って見せてもらっていいか?」

「変態!!」

「ぐはっ!?」




 夕季の投げた洗面器が俺の顔面に直撃したのであった。




「わあっ、本当に温泉なのね!」

「よーし春香ちゃん、潜水勝負するにゃ!」

「こらこら、まずは身体を洗え」



 しばらくすると、女湯の方から女子三人の声が聞こえてきた。



「春香ちゃん、やっぱりおっぱい大きいにゃー。とりゃっ!」

「ひゃっ!? 何すんのよ!」

「うひょー、しかも柔らかっ! 羨ましいにゃー」

「ちょ、やめっ……!!」

「ふむ。確かに良い乳だ」

「なにアンタまで触ってんのよ!!」



 頭の中でいかがわしい妄想が膨らんでいく。俺も交ざりた――何でもない。やがて身体を洗い終えた夕季が、俺からやや距離を置いて湯船に浸かった。



「あ、あまりこっちを見ないでくださいね!」

「はいはい」



 さっきの発言で誤解されてる気がするが、こちとら男の裸なんぞに興味はない。てっきり春香が入ってきたと思ったのに……って何をガッカリしてるんだ俺は。



「だいたい男ならなんでメイド服とか着てたんだよ。あんなの見たら誰だって勘違いするだろ」

「あれは、夜神さんに言われて仕方なく……」

「ああ、お前が好き好んで着てたわけじゃないのか」

「当たり前です! 夜神さん、いつも僕にいろんな服を着せて遊ぶんですよ。この前はセーラー服、その前はナース服……はあ」



 暗い顔で溜息をつく夕季。だいぶ苦労しているようだ。



「昼山さんと朝野さんも破天荒な方ですし、一緒にいるだけで大変というか……。あ、すみません。愚痴みたいになってしまって」

「……そんなに大変なら、どうして『ムーンライト』に入ったんだ?」

「入ったというか、入らされたというか……。ほら、夜神さんも朝野さんも昼山さんも、バリバリの戦闘タイプじゃないですか。だから一人くらい面白いスキルを持った人を仲間にしたいということで、夜神さんから目を付けられたんです」

「それで強引に引き入れられた、と……」

「はい。でも夜神さん達は凄く強いですし、このチームにいれば安心だと思いました。僕一人だけではすぐに脱落してたでしょうし。ですから今となっては入って良かったと思ってます。情けない理由ですけどね」

「……いいんじゃないか、それでも」



 この転生杯は最後まで生き残りさえすればいいので、強いチームを隠れ蓑にするのも一つの手段だろう。どれだけ力があろうと脱落してしまったらそこで終わりなのだから。



「まあ、お前のスキルが面白いのは確かだな。【遊戯場】だっけ」

「はい。皆さんの特訓の場として使ったりもしてます。それくらいしかお役に立てませんからね」

「…………」

「どうしました?」

「……いや、別に」



 支配人が転生杯で闘うための力として参加者にスキルを与えたというのなら、夕季のスキルは〝闘うための力〟という主旨からは外れてる気がする。どんなスキルも使い方次第だとは思うが……。


 そういえば、夕季のことでまだ確認していないことがあった。俺は夕季の方を見つめてみる。しかし湯船に隠れていて肝心のものは見えなかった。



「何ですか、そんなに僕を見て! やっぱり僕の身体が目当てなんですね!?」

「んなわけあるか!! やっぱりって何だよ!? ただお前の右腕を見ようとしただけだ!」

「右腕……もしかして参加者の痣ですか?」

「ああ。お前のはまだ見てなかったと思ってな。見せてくれよ」

「えっと、それが……」



 夕季が湯船から右腕を出す。痣のある部分には防水フィルム付きの包帯がキッチリと巻かれていた。




ブックマーク・評価をいただけると強くなれる理由を知れそうです。よろしくお願いします。

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