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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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獅子心中の虫

「でも将棋って相手がいないとできないだろ? ここに来ていつも何してるんだ?」

「相手がいることを想定して、一人で指している」

「……そ、そうか」



 その光景を想像すると凄く悲しくなるな。



「せっかくだ。手合わせ願おう」

「……ああ」



 将棋はやったことないが、ルールは大体頭に入った。分からないことがあったらその都度さっきの初心者本で確認しよう。こんなレベルでは到底敵わないだろうが、別に勝つ必要もないしな。振り駒で先手後手を決め、対局が始まった。



「将棋は実に奥深い。常に変化する盤面に順応し、相手の思考を読み、最善の一手を導き出す。それは戦闘にも通ずると思わないか?」



 先手の昼山が、真ん中の歩の駒を右斜めに動かした。



「っておい、何してんだ」

「見ての通り、歩を動かしたのだ」

「そうじゃなくて、歩は斜めに動かせないだろ」

「……ふむ。ではこうしよう」

「後ろにも動けないから!」



 まさかこいつ、まともに将棋をやったことないのか? ルールもよく分かってないのに将棋を語ってたのかよ。


 その後も俺は昼山に色々と教えながら対局を進めていく。ってなんで初心者の俺が教える側なんだよ。



「王手」

「ふっ、やるな。では王を盤外に避難させるとしよう」

「避難とかできねーよ! 勝手にルールを創造するな!」

「何? しかしこの盤面だと、どこに動かしても王を取られるではないか」

「ああ。だから詰みってやつだ。要はお前の負け」

「ば……馬鹿な……!!」



 悔しさを顔に滲ませる昼山。初めてなのに勝っちゃったよ。俺が強いんじゃなくてこいつが弱すぎただけだが。



「……ふっ。この俺を将棋で負かすとは、なかなか見所がある。特別に俺の弟子にしてやってもいい」

「誰がなるか!」



 こいつ、実は戦闘以外ポンコツなのか? 風格と威圧感はどこに消えたのか。



「……そういえば、あの時の問いにまだ答えてもらってなかったな」



 駒を並べ直している最中に、俺はそう切り出した。



「問い?」

「お前がニーベルングとかいう非道な組織に所属していた理由だ」

「それならもう答えたはずだ。獅子身中の虫、とな」

「…………」



 そういやそんな諺を口にしてたなと思いながら、俺はスマホで意味を調べてみる。獅子心中の虫……獅子の体内に寄生した虫が獅子を死に至らせること。味方でありながら災いをもたらす者の喩え。そう書かれてあった。



「さしずめ俺は、ニーベルングという獅子に寄生する虫だったというわけだ」

「はっ、随分と大きな虫だな。つまりお前は……」

「察しの通りだ。端的に言うと、俺はスパイとしてニーベルングに潜り込んでいた」



 あんな連中の下につくような男ではないと思っていたが、やはり裏があったのか。



「それはお前の独断か?」

「いや。俺は『ムーンライト』というチームに所属していてな。そのリーダーからスパイの任務を受けたのだ。それはニーベルングを壊滅させるための足掛かりでもあった」



 意外だな。てっきり一匹狼だと思っていたが、昼山もどっかのチームに所属していたのか――ん? ムーンライトって、なんか聞き覚えが……。



「とはいえ俺個人としても、罪のない子供達を戦闘の道具として利用していたニーベルングは看過できなかった。だがどうにも俺は向井から完全に信用されていなかったらしく、子供達との直接的接触は許されず、ビル内での行動も制限されていた。奴の警戒心だけは見上げたものだったな」

「……お前ほどの実力者なら、そんな回りくどいことしなくても真正面から組織を壊滅させられただろ」

「それは買い被りだ。いくら俺でも参加者四人が相手では分が悪い。中でも厄介だったのが、向井の【無効】だ。あのスキルの前では俺も打つ手がなかっただろう」



 それは俺も身をもって味わった。奴には攻撃もスキルも一切通用しなかった。だからこそ千夏が向井をどうやって倒したのか気になるところだ。



「獅子心中の虫とは言ったが、実際には虫にもなれなかったわけだ。我ながら情けない話だ。しかしある時、予期せぬ出来事が起きた。それが……」

「俺達とニーベルングの闘い、か」

「そうだ」



 将棋の二局目を開始し、昼山が真ん中の歩の駒を一マス前に進めた。ようやく駒の動きを覚えたようだ。



「ならどうして俺の邪魔をした? お前もニーベルングを潰したかったのなら、俺達と利害は一致していたはずだ。むしろ俺達に協力するべきだったろ」

「何の面識もない奴等に協力しろと? そんな賭けに出るほど俺は勝負師ではなかったものでな。あの時はスパイとして向井の側近という立場を優先したまで。だからお前と闘ったのも立場上、仕方のなかったことだ。悪く思うな」



 その瞬間、思わず俺は椅子から立ち上がり、昼山の胸ぐらを掴んだ。



「何が悪く思うなだ……お前のせいで千夏を助けることができなかったんだぞ……!!」



 こいつの邪魔がなければ、俺は千夏のもとに駆けつけることができただろう。そうすれば千夏が向井に殺されることもなかったはずだ。



「それは責任転嫁というやつだ。お前が俺を瞬殺していれば何の問題もなかっただろう。お前にそこまでの強さがなかった、ただそれだけのことだ」

「なんだと……!!」




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