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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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強敵との再会

「ってのは半分冗談として、部室に忘れ物を取りに来ただけだ」

「そういやお前、将棋部だったよな」

「そうだが……ん? 俺が将棋部って秋人に話したことあったっけか?」

「……他の生徒から聞いたんだよ」



 本当は氷の牢獄にいた時に圭介から直接聞いたのだが、本人にはその時の記憶がないので、そういうことにした。圭介が将棋部なんてかなり意外だったのでよく覚えている。



「秋人こそ、こんな所で何してんだ? あーそうか、やっぱりお前もアイドル部員の着替えを覗きに――」

「お前と一緒にすんな!」



 なんかさっきも春香と似たようなやりとりしたなと思いながら、俺は事の経緯を圭介に説明した。



「あー、この学校ってそういう面倒な校則あったよなー」

「圭介はなんで将棋部に入ったんだ? 将棋が好きなのか?」

「いや別に。ほとんどやったこともねえ。一応ルールくらいは覚えたけどな」

「……じゃあなんで将棋部に?」

「部活動なんて真面目に取り組む気もないしな。今にも廃部寸前でまともに活動していない、幽霊部員でも問題なさそうな部活を選んだだけだよ」



 俺と同じかよ。圭介と思考がシンクロしてるってなんか嫌だな。



「ってことは、将棋部って部員は少ないのか?」

「ああ、俺を含めて二人だけだ。俺も部室にはたまーに寄るけど、適当に暇を潰して終わりだな。ま、だらけるには良い場所だ」

「……なら俺も将棋部にしようかな」

「ははっ。秋人も俺と同類ってわけか」



 というわけで、俺は将棋部に入部することにした。将棋のやり方は全然知らないが、そこなら面倒な活動もせずに済みそうだ。



「もう一人の部員はどういう人なんだ?」

「さあなー。多分その人が部長なんだろうが、滅多に会わねえし、ろくに話したこともねーから何も分かんねえ。名前は忘れた」

「いや名前くらい覚えとけよ」

「悪いな、俺は野郎には興味ねーんだ」



 そんな話をしながら、俺と圭介は将棋部の部室に着いた。失礼ながら将棋部って駒が散らばってそうとか埃が舞ってそうとか勝手にイメージしていたが、きっちりと整理整頓されており、清掃も行き届いているのが見て分かる。圭介がやったとは考えられないし、きっと部長さんが頑張っているのだろう。その部長さんはまだ来ていないようだ。



「お、あったあった」



 圭介が机の上に置いてあった携帯ゲーム機を手に取った。忘れ物ってそれか。こいつがまともに活動してないのがよく分かる。



「んじゃ、俺はこれで」

「えっ、圭介もう帰るのか?」

「言っただろ、忘れ物を取りに来ただけだって。それにこれからバイトだし早く帰らなきゃなんねえ」

「だったら俺も――」

「いやいや、入部するなら部長に挨拶くらいしといた方がいいと思うぞ。今日来るかは分かんねーけど、とりあえず待ってみたらどうだ?」



 圭介の言うことはもっともだ。元社会人として挨拶はちゃんとしておこう。



「ほい、鍵。忘れずに職員室に返却しとけよ」



 圭介は俺に部室の鍵を投げ渡して去っていった。一人残った俺は、本棚をなんとなく眺めてみる。当たり前だけど将棋関連の本ばっかりだな。ただ待つのも退屈だし、将棋部に入った以上は俺もやり方くらい覚えておくか。俺は初心者用の本を一冊手に取り、椅子に座って読み始めた。


 対戦には9×9の将棋盤と8種類の将棋駒を用いる。駒を交互に動かし、先に相手の王を取った方が勝ち。駒の配置と動きは……と、俺は将棋のルールを頭の中に入れていく。


 それからどれくらい経ったか、不意に部室のドアが開いた。どうやら部長さんのお出ましのようだ。一体どんな――



「なっ……!!」



 その人物の顔を見た瞬間、思わず俺は立ち上がった。部室に現れた人物、なんとそれは――昼山だった。


 歴戦の戦士を彷彿とさせる風格、他者を寄せ付けない圧倒的な威圧感。間違いない、ニーベルングとの闘いで俺の前に立ちはだかった男だ。そいつが今、俺の目の前にいた。



「強者の気配がすると思ったら……まさかお前だったとはな」



 泰然とした表情で呟く昼山。俺はすぐさま戦闘態勢に入った。



「そう警戒するな。今お前と闘う気はない。あの時の決着をつけたいのは山々だが、この場で俺達が拳を交えれば周囲への被害は避けられない。それはお前も望むところではないだろう?」



 こいつの言う通りだ。もう無関係の人間を巻き込みたくはない。俺は気持ちを鎮め、椅子に座り直した。同じく昼山も正面の椅子に腰を下ろす。



「……だったら何の用だ?」

「愚問だな。将棋部の部室に来てやる事といえば一つだろう」



 昼山は机に置いてあった将棋盤を手元に寄せ、駒を並べ始めた。俺も釣られて駒を並べていく。



「まさか将棋部の部長って、お前なのか?」

「部長になった覚えはないが、この部室には時々顔を出している。そもそもここの生徒でもないしな」



 どうりで制服も着てないわけだ。どうやら将棋部の部長というのは圭介の勘違いだったらしい。つーか生徒じゃないなら不法侵入だろ。



「お前こそ何故ここに?」

「色々あって、将棋部に入部することにしたんだよ」

「そうか。確か部員が一人いたと思うが、今日は来ていないようだな」

「そいつの紹介で入部した。今日はバイトだとよ」

「なるほど」



 なんかこいつと普通に話すのって変な感じだな。やがて俺達は駒を並べ終えた。




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