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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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高校デビュー

 いや、当たらすも遠からずか……? しかし圭介は相変わらずだな。こいつと話してると平穏が戻ってきたって感じがする。厳密には転生杯の真っ最中なわけだから平穏とは程遠いけども。



「よーし、秋人の快気祝いだ! 俺ら二人でクラスの連中に爆笑ショートコントをブチかましてやろうぜ!」

「なんでそうなる!? どうせスベるのがオチだろ!」

「馬鹿なことを言うな。この俺様が直々に考えたんだぞ、スベるなんて万に一つも有り得ねえよ! ほら読んでみろ!」



 圭介から台本を押し付けられる。それはお坊さんの「ナンマイ(何枚)ダー」というダジャレで終わる、あのしょうもないコントだった。



「おいこれ前にもやっただろ! 盛大にスベったの忘れたのか!?」

「なに言ってんだ? これはまだ披露したことないやつだし、台本をお前に見せるのだって初めてだろ」

「はあ? あの凍りついた空気を忘れたとは言わせ――」



 あ、そうか。支配人の改竄によって圭介には氷の牢獄に閉じ込められていた時の記憶がない。だからこのコントをやったこと自体覚えていないのか。



「す、すまん。俺の勘違いだったようだ」

「ハハッ、病み上がりで寝惚けてんのか? とにかくやろーぜ!」

「いや待て、やるとは一言も――」

「ほら早く来い! ホームルーム始まっちまうだろ!」

「…………」



 俺は否応なく教壇に立たされた。どうしてこうなるんだ。



「はいはーい!! みんな注目ー!! 爆笑ショートコントの時間だぜ!!」



 クラスの生徒全員が俺達に注目する。スベると分かっているコントをやる気持ち、一体誰が分かってくれようか。生徒達にも前回の記憶はないのでこのコントを見るのは今回が初めてということになるが、記憶が残っている俺には結果など分かりきっている。ただの同じことの繰り返しだし。



「ナンマイダー」

「ってダジャレじゃーん!」



 オチまで言って、コント終了。ほら見ろやっぱりだだスベリ――



「おー、なるほど」

「ナンマイダーと何枚だを掛けたのね」

「上手い上手い」



 生徒達は俺達に温かい拍手を贈った。あれ、コントの内容は前回と全く同じなのに、思ったより反応が良かったな。あの時とは状況が全然違うってのが大きかったか。その場の空気って大事なんだな、爆笑は起きなかったけど。



「おおい!! 俺が欲しかったのはそんな反応じゃねえ!! 拍手とかいいから笑えよ!!」



 圭介が不満を叫ぶと、今度こそ爆笑が起きた。圭介は納得がいかなかったようだが、俺としては前回のような大惨事にならなかっただけでも御の字だ。それに結果的に爆笑は起きたし、ある意味成功と言えるのではないだろうか。



「しっかし圭介の奴、変わったよなー」

「ああ。前はあんなに根暗だったのにな」



 俺が一息つきながら教壇から降りると、気になる会話が耳に入ってきた。



「圭介って根暗だったのか?」



 その会話をしていた男子生徒二人に近寄って聞いてみる。



「ああ。新学期が始まった頃は、休み時間もずっと本ばっか読んでるような奴でさ」

「俺らが話しかけても、ほぼ無視だったよな。ザ・陰キャって感じ」

「圭介が変わったのは、五月頃か? ちょうど月坂が転入してきたあたりだな」

「あまりにも明るくなりすぎて最初別人かと思ったわ。それまでの陰キャっぷりが嘘みたいにクラスに溶け込んでいったよな」

「高校デビューってやつかねえ」

「ははっ。高二の五月にデビューって、随分と中途半端だな」



 二人の会話を聞きながら、他の生徒達と談笑する圭介に目をやる。俺は陽キャの圭介しか知らないので、圭介にもそういう時期があったなんて想像もつかないな。何かキッカケでもあったんだろうか。




 昼休みになり、俺は売店まで昼飯を買いに行く。春香から一緒に食べようと誘われていたので、弁当、お茶、菓子パンを購入後、屋上へ向かった。ちなみに菓子パンは俺が食べる為ではない。



「遅いわよ秋人!」



 屋上に着くと、そこでは春香が不機嫌そうな顔で俺を待っていた。



「すまん、四限目の授業が長引いたんだ」

「言い訳禁止! 罰としてなんかちょうだい!」

「……はいよ」



 俺は菓子パンを春香に手渡した。



「やったーメロンパン! 今日のところは大目に見てあげる!」



 すぐに春香はご機嫌になった。やはり買っておいてよかった。一緒に住んでるので春香の思考パターンもだいぶ読めるようになってきた。



「なあ春香。昼飯に俺を誘ってくれるのは嬉しいんだけど、いいのか? もうクラスの友達もいるだろうし、その子達と食べた方が楽しいんじゃないか?」



 弁当を食べながら、春香に聞いてみる。千夏がいた頃ならともかく、今は俺と春香の二人だけ。わざわざ俺と食べる必要もないだろう。



「何よ、アタシと食べるのが嫌なわけ?」

「そんなわけないだろ。ただ、クラスの友達より俺を優先してくれる理由が気になっただけだ」

「んー、ぼっちの秋人が寂しい思いをしなくて済むように?」

「勝手にぼっちって決めつけんな!」

「ま、それは半分冗談として……」



 春香が俺の弁当に箸を伸ばして卵焼きを摘む。




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