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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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密かな涙

「ごめんごめん、冗談よ。それより秋人、昏睡状態になった原因は何? 確か三日前のニーベルングとの闘いでは昼山って男と一戦交えたのよね? やっぱりそいつの仕業?」

「いや。ここ最近ずっと身体の不調が続いてたから、そのせいだと思う」

「……ここ最近ずっと?」



 今度は俺を睨みつける真冬。なんだか嫌な予感。



「そんなの初耳だけど……春香は知ってた?」

「ううん。私も今初めて聞いたわ」

「……つまり秋人はずっと体調が悪かったにもかかわらず、それを私達に黙ってたってこと?」

「えーっと、まあ、そういうことになるかな。はは……」

「…………」



 真冬は無言で俺の両頬を引っ張った。



「いはいいはい! 何ふんだよ!」

「どうして黙ってたの、そんな大事なこと。私達に相談してくれてたら、こんなことになる前に対処できたかもしれないのに」

「その、余計な心配をかけたくなかったというか……。でも結局、心配かけちゃったよな。ごめん」

「今度何かあった時は、ちゃんと相談して」

「真冬の言う通りね。その為の仲間なんだから」

「……ああ」



 真冬と春香の優しさに、俺は胸が熱くなった。本当に良い仲間達に巡り逢えたものだ。



「それで、身体の不調の原因に心当たりはあるの?」

「ああ、俺の【略奪】だ。今まで数々のスキルを奪ってきたけど、そのせいで身体の負担がとんでもないことになってたらしい。人間が所持できるスキルは二つが限界だと向井も言ってたしな」

「へー、そうなんだ。真冬は知ってた?」

「……知ってたらもっと前に秋人に伝えてた」

「まあ、そうよね」



 俺のようにスキルを複数所持することなんてレアケースだろうし、知らないのが普通だろう。



「でも不思議よね。なんで急に快復したのかしら」

「その辺は俺もよく分かってないけど……。きっと身体に何らかの変化が起きて、複数のスキルに順応できるようになったんだろ」

「……そんな都合の良いことある?」

「実際、今は何ともないしな。とにかく今後は大丈夫だから安心してくれ」



 大地の言葉を信じるなら、だが。



「……本当に?」



 真冬が俺の手を握りしめ、潤んだ目で見つめてくる。



「ああ。もし何か違和感を覚えたら、今度はちゃんと相談するよ」

「……ん。約束」



 それから俺は三日前のニーベルングとの闘いの顛末を二人から聞いた。兵藤は春香が倒して死亡、広瀬は真冬の殺害に失敗して自害したという。どうやら敵を取り逃がしたのは俺だけらしい。体調が最悪だったとはいえ、なんとも不甲斐ない。


 向井も死んだので、ニーベルングは昼山以外の三人が脱落したことになる。子供達も救出できたし、この闘いは俺達の勝利と言っていいだろう。しかし素直に喜ぶことなどできない。その代償はあまりにも大きかったからだ。



「……千夏は? 千夏は今、どこにいるんだ?」



 ここまで無意識に聞くのを避けてきたが、俺はついに踏み切った。春香と真冬はやるせない顔で俯く。短い沈黙の後、春香が口を開いた。



「分からないわ。あの時追いかけたかったんだけど、気を失った秋人を放っておくわけにもいかなかったし」

「……そうか」



 やはりここには戻ってきてない、か。最後に見た千夏の顔が脳裏を過ぎる。千夏は本当に俺達のことを忘れてしまったのだろうか。千夏を助ける為にニーベルングと闘ったというのに、その千夏がいなくなっては……。



「これから千夏の行方を追ってみる。見つかったらすぐに知らせる」

「……ああ。頼んだ真冬」



 あの時俺が気を失わなかったら俺達は千夏を追うことができたかもしれないし、真冬も俺を看病していた時間を千夏の捜索に費やすことができただろう。今回は皆に迷惑をかけてばかりだ。



「とりあえず、お蕎麦でも作って持ってくるわね。お腹空いてるでしょ?」

「……ああ。ありがとな」



 正直あまり腹は減っていないが、三日間何も食べていなかったのだから、何か腹に入れておいた方がいいだろう。



「真冬は自分の部屋で休んだら? 秋人の看病で疲れてるでしょ」

「……すぅ」



 いつの間にか、真冬はベッドに顔を伏せて寝息を立てていた。



「って、もう寝ちゃってるし。秋人が元気になって安心したのね。このまま寝かせといてあげますか」

「え? いや、それはまずいだろ」

「どうして? 何がまずいの?」



 不思議そうに首を傾げる春香。相変わらずこういうことに関しては鈍いな。健全な男と無防備な女子を二人きりにすることがどれだけ危険か分かっていないらしい。



「ほら、ちゃんと自分のベッドで寝かせた方が疲れも取れるだろ」

「んー、それもそっか。まったく、秋人も真冬も世話が焼けるわね。よっと」



 春香は真冬を抱えて退室した。いくら中身が6歳とはいえ、いい加減そういうことも学んでほしいものだ。



「……千夏」



 ふと、俺はその名を呟く。春香が蕎麦を持ってきてくれるまでの間、俺は人知れず涙を流していた。




  ☆




 翌朝。すっかり鈍ってしまった身体を軽く動かそうと、俺はアジトの廊下を歩いていた。体調はもう何の問題もないし、完全復活と言っていいだろう。




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