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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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一桁台の参加者

「自分でも分からない、といったところか。まあいい、君の身体は後ほど兵藤にじっくりと調べてもらうとしよう。それで三つ以上のスキルを所持する方法が判明したら御の字だ」



 そう言うと、向井は俺に背を向けて階段を上り始めた。



「おいどこに行く気だ!! 目的は俺じゃないのか!?」

「君の相手をしてあげたいのは山々だが、私は一度始めたゲームは最後までやらないと気が済まないタチでね。彼女との鬼ごっこが終わるまで大人しく待っていてくれ」

「待てるか!!」



 俺は【氷結】を発動して巨大な氷塊を生成し、それを放って階段を塞いだ。攻撃が通用しなくとも足止めくらいならできる。



「無駄なことを……」



 向井が溜息交じりに右手を氷塊に触れさせる。次の瞬間、俺は衝撃に目を奪われた。その氷塊が一瞬にして消滅したからだ。


 どういうことだ、今のはただ行き先を塞いだだけで、向井への攻撃ではない。なのに何故……!?



「何をそんなに驚いている? 君のスキルを無力化した、ただそれだけのことだ。勿論スキルで生成された物体もその限りではない」



 そんな馬鹿な、向井の【無効】を取り込んだ里菜ちゃんはスキルまでは無力化できなかったはず。なのに何故……!?



「君が考えていることを言い当ててあげようか? 前に自分が闘った子供はスキルまでは無力化できなかった。なのに何故今、自分のスキルが無力化されたのか。だろ?」

「……!!」



 まったくその通りなので、何も言い返せなかった。こいつの【無効】は攻撃を無力化するだけのスキルではないというのか。だがそれだと里菜ちゃんとの矛盾が説明できない。



「他者にスキルを付与する方法を発見した兵藤は見事という他ない。が、一つだけ欠点があった。それは与えたスキルがオリジナルよりも劣化してしまうことだ」

「劣化……!?」

「私の【無効】は攻撃やスキル、あらゆる事象を無力化できる。しかし私のスキルを与えられた者は、攻撃だけを無力化できたり、スキルだけを無力化できたりと、半端な能力しか得られなかった。ま、コピーがオリジナルを超えられないというのはよくある話だ」



 そういうことか。流石の真冬もそこまでは見抜けなかったようだ。実際に試したわけではなかったから仕方ないが……。


 しかしあらゆる事象を無力化できるなんて反則にも程がある。おかげでスキルを中心に練っていた策が全て崩れてしまった。だがマルチプルということを考えたら、それくらいは当然か。



「お喋りはそろそろ終わりにしようか。鬼ごっこの最中だというのに相当な時間をロスしてしまった。早く追いかけないと彼女を退屈させてしまう……」

「待て!! 逃げるのか!!」



 向井を止めなければ。だが攻撃もスキルも通用しない相手をどうやって……!? こいつは後回しにして先に千夏を捜しに行くべきか……!?



「よっぽど私と離れたくないようだね。心配せずとも、君の遊び相手はちゃんと用意してある。もうすぐ来るだろう」

「何……!?」



 直後、俺の右腕の痣が光り出した。近くに転生杯の参加者がいる。間違いなく向井の側近三人の中の誰かだ。


 どこから来る!? 右か左か、それとも上か!?



「!!」



 突如足下の床に亀裂が生じ、そこから一人の男が飛び出してきた。まさかの下から!!



「がはっ!!」



 防御や回避が間に合うはずもなく、男の拳が俺の腹部に炸裂。俺は吹き飛ばされた勢いで二十階の天井――つまり二十一階の床を突き破った。



「いってえ……」



 俺は腹を押さえながら起き上がる。幸い致命傷には至らなかった。周囲を見渡すと、ランニングマシンやダンベルなど様々なスポーツ用品が置かれている。ここはトレーニングルームか……?



「ようこそ。俺のお気に入りの空間へ」



 先程の男が穴の空いた床から跳躍し、着地した。こいつは……昼山当真! 顔写真を見た時に強者のオーラを感じ取った男。最も遭遇したくなかった奴だ。



「俺の名は昼山当真。〝5〟の痣を持つ参加者だ」



 昼山が右腕の痣を見せる。一桁台の痣の参加者と出くわしたのは初めてだ。つまりこいつは第八次転生杯が始まった初期に仮転生し、今日まで生き残っているということ。やはりかなりの強者だ。



「月坂秋人、だな。お前とは一度手合わせしたいと思っていた」



 昼山はやる気十分といった模様。こんな状況でなければ受けて立つところだが――



「お前の相手をしている暇はない!! 俺は千夏を、仲間を助けに来たんだ!!」

「……そうか。助けに行きたければ行くがいい。ただし!」



 昼山が左右の拳をぶつけ合う。その衝撃波は俺のところまで届いた。



「俺を倒すことができたらな」

「……だろうな」



 やはり簡単に通してはくれないか。どうやら闘うしか道はなさそうだ。



「安心しろ、手加減はしてやる。お前は殺すなと向井に命じられているからな」

「ほざいてろ!!」



 俺は【怪力】を発動し、昼山に向けて突っ走る。こいつのスキルは不明だが、様子見なんて言ってる場合じゃない。速攻でこいつを倒して千夏のもとに行く!




おかげさまで連載開始から一周年を迎えることができました。今後ともよろしくお願いいたします。

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