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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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向井と側近達

 ここはニーベルングの内部。その地下一階の一室では、兵藤による子供達の人体実験が行われていた。何十人もの子供達が頭に複雑な装置を付けられ、固いベッドの上で寝かされている。


 兵藤が手元のダイヤルを回すと、装置を通じて子供達に強力な電流が迸った。子供達の肉体の耐久力を確かめるテストである。当然、子供達は苦しそうに呻き声を上げる。



「いちいち喚くな!! これくらい耐えろ能なし共!!」



 兵藤の怒号が響き、子供達は必死に声を押し殺す。これに耐えられなければ残酷な制裁が下されることは明白だった。


 ちなみに兵藤以外に地下への立ち入りが許されているのは、総帥の向井とその側近の広瀬のみ。一般の組員はこのような実験が行われていることすら知らない。中にはうっかり秘密を知ってしまった者もいたが、その者達は一人残らず消されていた。



「進捗はどうだ、兵藤」



 そんな折、スーツ姿の男が室内に入ってきた。彼こそニーベルングの総帥にして兵藤達のリーダー、向井である。



「これは向井様。現在、転生杯の参加者に匹敵する段階にまで達した子供は53人といったところです」



 深々と頭を下げながら兵藤が答える。



「53人か……。まだまだ少ないな」

「申し訳ございません。どいつもこいつも能なしばかりで手を焼いています。より一層厳しく教育していきますので、どうかご容赦を」



 向井は軽く室内を見渡した後、小さく口元を歪めた。



「転生杯には参加者同士で闘わなければならない、などといったルールは存在しない。ならば我々が馬鹿正直に闘う必要はない。利用できるものは利用するのが賢明だ。こいつらには我々に代わって存分に働いてもらおうではないか」

「全くもって、おっしゃる通りでございます」

「しかし転生杯だけの使い捨てというのも面白味がない。スキルを宿したこいつらを日本中で暴れさせ、社会を混沌に陥れるのも一興かもしれないな……」



 悪辣な笑みを浮かべながら向井が呟く。



「お言葉ですが向井様。転生杯の支配人が存在する以上、それは難しいのでは? 彼女の改竄能力は凡手の業ではございません」

「そうだな。しかしあの支配人といえど全能ではないはず。社会全体が混乱に陥った時、果たして彼女はどこまで対応できるのか、試してみるのも面白そうではないか」

「なるほど、確かに胸が躍りますね」



 転生杯の支配人によって一般人の記憶の改竄や痕跡の抹消が行われていることは、既に向井達も実証済みであった。



「スキルの実験の方はどうだ? やはり一人の子供に注入できるスキルは二つが限界か?」

「はい。三つ以上のスキルが発現した事例は今のところ存在しません。三つ目のスキルを注入した時点で死亡してしまいます。やはり肉体が負荷に耐えられなくなるのでしょう。以前捕らえた転生杯の参加者でも試してみましたが、結果は同じでした」

「つまり転生杯の参加者を含め、人間が所持できるスキルは二つまでというわけか」

「そういうことになります」



 向井は腕を組み、不可解な顔をする。



「だが広瀬の情報によれば、月坂秋人という三つ以上のスキルを使う男がいるらしいではないか」

「それが謎なんです。普通なら肉体が限界を通り越して、とっくに死亡しているはずなのですが」

「複数のスキルと見せかけてそれら全てが一つのスキルなのか、月坂秋人の身体が特殊なのか……」

「なんにせよ月坂秋人、興味深い男です。是非とも捕らえて色々と調べたいですね」



 気味の悪い笑みを浮かべながら兵藤が言った。



「そういえば、その月坂秋人の撃破に失敗した子供が連れ去られたそうだな」

「実験体35番のことですか。申し訳ございません、私の失態です。しかし我々のことに関しては絶対に口を割らないように教育しておりますので、その子供から情報が漏れる心配はございません」



 実験体35番とは、昨日秋人と闘った里菜こと。兵藤は子供達のことを名前ではなく番号で呼んでいる。そもそも子供達の名前など知りもしなかった。



「まあいい。駒はいくらでも替えがきくからな」

「この失態、必ずや月坂秋人を捕らえて挽回してみせます」

「期待しているぞ、兵藤」





 ニーベルングの二十一階には、広々としたトレーニングルームがある。その中央には厳つい顔をした男が立っていた。彼の名は昼山当真。向井の側近の一人である。



「昼山、準備はいいかしら?」



 その背後にいる小柄な女が昼山に声をかける。彼女の名は広瀬歩美。同じく向井の側近である。



「……ああ。いつでもいいぞ」



 昼山が返事をする。彼の目の前には、人間の姿を模したロボットが配置されていた。その数、実に五十体。全て広瀬の製作物である。



「それじゃ、始めるわね」



 広瀬が手持ちのボタンを押すと、五十体のロボットが一斉に稼働を始め、昼山に襲い掛かってきた。これらは戦闘特化型のロボットであり、その運動能力は人間を遙かに凌駕する。転生杯の参加者といえど、この数が相手ではさすがに厳しい――


 しかし数十秒後には、全てのロボットの残骸が床に転がっていた。昼山はかすり傷すら負っておらず、余裕の表情である。




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