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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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オタンコナス

 千夏と一定の距離を置いて、帰り道を歩く。正直俺が自分の正体を明かした時、千夏は俺のことを諦めてくれると思っていた。俺が普通の人間ではないと分かれば、自然と心も離れていくだろうと。だが、そうはならなかった。


 そう簡単に割り切れるほど、私の心は単純じゃない――先程の千夏の言葉が、俺の心に深く突き刺さっていた。



「……ただいま」

「あっ、秋人も帰ってきた! こんな夜遅くまでどこほっつき歩いてたのよ! 心配したんだから!」



 アジトに帰宅すると、春香が怒った顔で出迎えてくれた。



「ごめん。ちょっと色々あってな……」

「ついさっき千夏ちゃんも帰ってきたんだけど、なんか様子がおかしかったのよね。千夏ちゃんと何かあったの?」

「いや、別に……。疲れたから寝かせてくれ」

「あっ、ちょっと秋人!」



 春香の横を素通りし、そのまま自分の部屋のベッドに飛び込んだ。やはりこっちのベッドの方が落ち着くな……。


 それにしても、明日からどんな顔で千夏と話せばいいのやら。そんなことを考えてる内に、俺は深い眠りについた。





 翌朝。今日は月曜だが、また体調が悪化したため、学校は休むことにした。まあ、体調関係なくとても学校に行ける気分じゃなかったけど。もし学校で何か起きたら春香が連絡をくれるだろうし、その時はすぐに駆けつけよう。



「「あっ……」」



 朝食にしようとリビングに向かうと、千夏とばったり出くわした。もう九時を過ぎているので、とっくにアジトを出たとばかり思っていたが……。



「えっと……おはよう」

「お、おはようございます」

「……学校は?」

「体調が優れないので、今日はお休みすることにしました」

「そうか。俺もなんだ」

「そうですか……」

「…………」

「…………」



 やばい、めっちゃ気まずい。昨日あんなことがあったのだから当然だけども。それにどうしても千夏の裸が脳裏に浮かんで――ってこんな時に何を想像してんだ俺は!



「とりあえず、朝食にするか」

「そ、そうですね」



 俺と千夏は椅子に座り、春香が作ってくれたであろうフレンチトーストを食べる。その間、俺達の会話はゼロ。ただただ重い空気が流れていた。もはやフレンチトーストの味も分からない。真冬はどうして来ないんだ、もう朝食は済ませてしまったのか。とりあえず何か話題を……。



『ついにスカイカー、通称〝空飛ぶ自動車〟の試験飛行に成功しました。有人での飛行に成功したのは今回が初となります。現時点の飛行可能時間は五分程度とのことで、今後更に改良を進めていきたいと――』



 その時、テレビからこのようなニュースが流れてきた。よし、これだ。



「へー、凄い時代になったもんだ。もう映画の中だけの話じゃないんだな。千夏もいつか乗ってみたいだろ?」

「そ、そうですね」

「えーっと何だっけ、空飛ぶ飛行機だっけ? ああ違った、空飛ぶ自動車だ。空飛ぶ飛行機ってまんまじゃねーか!」

「あはは……」

「…………」

「…………」



 あ、これ駄目だ。しかもかえって空気が悪くなった気がする。





「はあ……」



 俺は部屋のベッドに寝転がり、大きな溜息をついた。結局何の解決策も見出せないまま夕方になってしまった。別に無視されてるわけじゃないし、険悪という程でもないけど、なんだか千夏との間に見えない壁ができてしまった感じだ。こんな時ってどうすればいいんだ。ヤ○ー知恵袋にでも相談してみるか……?


 そんな時、スマホに電話が掛かってきた。朝野からだ。



『やっほー秋人くん! 秋人くんも千夏ちゃんも学校休んでたから心配したにゃ! 具合は大丈夫!?』

「あ、ああ……」

『そっか! よかったにゃー!』



 今の精神状態で朝野のテンションはなかなかキツいものがあるな……。



「用件はそれだけか? なら切るぞ」

『ちょっと待った! 秋人くんに聞きたいことがあって!』

「聞きたいこと? 何だよ」

『またまた惚けちゃってー。昨夜の千夏ちゃんとの営みのことに決まってるにゃ! 秋人くんの初体験の感想を是非聞かせてほしいなー!』



 勝手に初体験って決めつけんなよ。いや確かに未経験だけども。朝野の実年齢は春香と同じくらいだと思ってたけど、こういう話に興味津々なあたり、意外ともっと上なのかもしれない。しかしよく異性にそんなことを堂々と聞けるもんだ。



『せっかく私が御膳立てしてあげたんだし、それくらい聞く権利はあるよね!? で、どうだったどうだった!? 千夏ちゃんってベッドの上だと豹変するタイプだと予想してたんだけど、どう!?』

「いや、それが……」



 俺は昨日の出来事を簡潔に朝野に話した。



『えっと……。つまり秋人くんは、千夏ちゃんに手を出さなかったと?』

「だからそう言っただろ」

『…………』

「……朝野?」



 急に大人しくなった。なんだか嫌な予感。



『……実はね。秋人くん達がホテルに入った直後、千夏ちゃんが私にこっそり電話を掛けてきたんだにゃ。私はそういう経験が一度もないから、ちゃんとできるか不安って言ってた』

「へ、へえ……」

『きっと千夏ちゃんは、すっごく勇気を出したんだよ。女の子にとって初めて身体を捧げることが、どれだけ覚悟のいることか……!! なのに秋人くんはそれに応えず、千夏ちゃんに恥をかかせたってこと……!?』

「いやそういう問題じゃ――」

『秋人くんの……秋人くんの……オタンコナスーーーーー!!』




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