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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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【火炎】のスキル

「今日は高校の下見だけのつもりだったけど、こうして出会ったからには話が別だ!! 共に転生杯の参加者である以上、俺達は闘わなければならない!! ファイヤー!!」

「……ああ。相手になってやるよ」



 俺は千夏のノートを鞄に入れる。雪風の時は直接闘うまで相当な時間を要しただけに、こういう真っ向から勝負を挑んでくる奴はなんだか清々しさを感じてしまう。


 一つだけ心残りなのは再テストを受けられなくなることだが、さすがに転生杯の方が優先なのでやむを得ない。千夏には後で謝って、再々テストに望みを託すとしよう。



「闘う前に俺のスキルを教えてやろう!! スキルを秘匿したまま闘うのは俺の主義に反するからな!! 俺のスキルは――」

「どうせ炎系のスキルだろ?」

「な、なにいいいいい!? どうして分かった!?」



 そりゃそんなファイヤーファイヤ叫んでたら幼稚園児でも分かるだろ。



「ふっ、その通り!! 俺のスキルは【火炎】!! 俺が発する炎はあらゆる物を燃やし尽くすのさ!! ファイヤー!!」



 火炎、か。こいつのスキルを奪うことができたら、俺は氷と炎の二つの属性を操れるようになるわけか。めっちゃカッコイイなおい。いよいよ本格的に少年漫画の主人公っぽくなれそうだ。などと言ってみるが……。



「……っ!!」



 ここにきて更に激しい頭痛が襲ってきた。くそっ、こんな状態じゃスキルを奪うどころかまともに闘える気がしない。しかしこうして他の参加者と遭遇してしまった以上、闘う以外の選択肢はないだろう。



「では始めようか!! 君も全力をぶつけてこい!!」

「なっ、ちょっと待て!! こんな場所で闘ったら生徒達を巻き込んで――」

「ファイヤー!!」



 俺の話も聞かず、炎丸がいきなり炎をぶっ放してきた。瞬時に俺はスキル【氷結】を発動し、目の前に氷壁を生成して炎から身を守った。



「ほう、氷系のスキルか!! 相手にとって不足なし!!」



 俺の主力スキルである【怪力】は炎と相性が悪そうだし、ここは【氷結】を軸に闘うのが得策だろう。相手によって戦法を変えられるのは複数のスキルを所持している俺の強みだ。



「俺の炎と君の氷、どちらが上が勝負だ!! ファイヤー!!」

「だから待てって!! ちょっとは人の話を――」

「むむっ!?」



 突然、炎丸の動きが止まる。ようやく俺の話を聞く気になったのかと思いきや、なんと炎丸の〝72〟の痣が光っていた。一方、俺の痣には反応がない。ということは……。



「正義の少女戦士、只今参上ー!!」



 少女戦士に変身した朝野が星に乗って登場し、俺と炎丸の間に華麗な着地を決めた。やっぱりか。朝野も俺と同じく再テスト組なので、いつ学校に現れてもおかしくないとは思っていたけども。



「ほう、彼の仲間か!! まさか一日に二人もの参加者と出会えるとはな!!」



 別に仲間ってわけじゃないけど、わざわざ否定するのも面倒なのでそういうことにしておこう。



「秋人くん、ここは私に任せるにゃ!」

「……朝野がこいつと闘う気か!?」

「その通り! 秋人くんはこれから再テストでしょ? 千夏ちゃんの為もちゃんと受けて合格しないと!」

「いや、再テストは朝野もだろ! それはいいのか!?」



 朝野は悟りを開いたような笑顔を俺の方に向けて、言った。



「私はもう……諦めたにゃ」

「朝野……お前……!!」

「とにかくここは私が引き受けるにゃ! 秋人くんは早く校舎の中へ! テスト始まっちゃうよ!」



 何を言っている、こいつは俺の獲物だ――と言いたいところだが、今は万全の状態じゃないので正直助かる。こいつのスキルを奪えないのは無念だが、致し方ない。



「君が代わりに闘うと!? よかろう!! 女子だからといって手加減はしないぞ!!」

「ふふーん。ただの女の子だと思ってたら痛い目見るよ!」

「ちょっと待て二人とも! こんな場所で闘ったら生徒達を巻き込むかもしれないだろ! 闘うなら人気のない場所にしろ!」



 よーしやっと言えた!



「なるほど確かに!! ではこの近くの河川敷に場所を移そうじゃないか!! 先に行ってるぞファイヤー!!」



 炎丸は猛ダッシュで走り去っていった。ある程度は良識のある奴で助かった。



「うわ速っ! いやー、元気な男子だにゃ。秋人くん、私があの人を倒しちゃっても文句言わないでよ?」

「言わないから安心しろ。それに多分あいつ、かなり手強いぞ。そう簡単に倒せる相手じゃないと思うけどな」

「大丈夫! 少女戦士の辞書には勝利の二文字しかないにゃ!」

「ははっ、そいつは頼もしい」

「それじゃ行ってくるね! 秋人くんも再テスト頑張って!」



 朝野は再び星に乗り、河川敷の方へ飛んでいった。少しは人の目を気にしろよ。





 再テスト開始数分前、俺は教室に着いた。朝野のおかげでなんとか間に合った。他にも再テスト組と思われる生徒が数人いて、こんな会話が聞こえてきた。



「なあ、さっき女の子が空を飛んでなかったか……?」

「はあ? 何言ってんだお前。テスト前に動揺させる作戦のつもりなら下手すぎるぞ」

「いや本当に見たんだって! あれ絶対空を飛んでたから!」



 やっぱり目撃されてるし。そのうち支配人が記憶を改竄してくれるからいいものを。




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