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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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ファイヤー男

『……俺のスキルは【爆弾】といってな』



 すると突然、その男が喋り出した。



『右手で触れた物体を、爆弾にすることができる。ただしそれには三十秒以上、物体に触れる必要がある。そして爆発の威力は、その物体の質量に比例する……』

『今さらスキルの種明かしか? そんな状態じゃ、まともな物体に触れることも――』

『大地、離れろ!!』



 背後で京谷が叫ぶ。そこで僕は、男が右手を自らの腹部に触れさせていることに気付いた。まさかこいつ、自分自身を爆弾に……!!



『ハハハハハ!! お前らも道連れだあ!!』



 次の瞬間、男の身体が大爆発を起こした。



『がはっ……!!』

『大地!!』



 僕は派手に吹き飛び、床を転がった。もろに爆発を喰らったが、咄嗟に距離を取ったので幸い命に別状はなかった。京介が叫んでくれなかったら危なかっただろう。


 だが安堵したのも束の間、今の爆発で天井が崩れ、俺の真上から巨大な瓦礫が落下してきた。避けようにも身体が動かない。思わず僕は目を閉じた――



『……!?』



 何故か数秒経っても痛みがこない。僕は恐る恐る目を開けてみる。



『なっ……京谷!?』



 すぐ近くに京谷の顔があった。京谷が背中で瓦礫を受け止めてくれていたのだ。だがそんなことをしてタダで済むはずもなく、大量の血が滴り落ちていた。



『京谷!! 大丈夫か!?』

『……あー、いってえなあ……』



 よかった。重傷ではあるが、致命傷というほどではなさそうだ。僕はなんとか起き上がり、瓦礫を払いのけた。



『京谷、どうしてこんな無茶なこと……』



 僕が聞くと、京谷はやや気恥ずかしそうに顔を逸らした。



『ケッ、仲間を助けるのに理由なんざいるかよ。言わせんな馬鹿』

『京谷……』



 僕は改めて思った、京谷は最高のパートナーだと。京谷とならこの転生杯も、絶対に最後まで勝ち残れるだろう――




  ☆




 また、見てしまった。大地と京谷という二人の人物が登場する、あの夢を。これで何度目だろうか……。


 最初の頃は起きた時にはほとんど忘れていたのだが、最近はだいぶ記憶に残るようになってきた。俺が見たのは第七次転生杯中の出来事で、夢の視点である大地は京谷はタッグを組み、転生杯を共に闘い抜いたようだ。


 だが現在俺が参加しているのは支配人いわく第八次転生杯なので、俺とは何の関係もない。それ以前に大地と京谷という人物にも心当たりがない。なのに何故、こんな夢を何度も見てしまうのだろうか。



「……っ!?」



 不意に激しい頭痛に襲われる。数日前は頭が重く感じる程度だったが、日ごとに症状が酷くなっていた。原因は相変わらず分からないままだ。さっき見た夢と何か関係してるのか? いやでも調子が悪くなる前からあの夢は見てたし……。奇妙な夢といい原因不明の不調といい、一体俺の身に何が起きているというのか。



「秋人さん、起きてますか?」



 すると部屋の外から千夏の声がした。



「ああ、起きてるぞ。どうした?」

「今日は再テストがあるので、そろそろ準備した方が……」

「……あっ!」



 そうだ、再テスト。万が一受け損ねたらこの数日間の苦労が水の泡だ。俺は手早く準備を済ませた。



「んじゃ行ってくる!」

「はい、テスト頑張ってくださいね!」



 千夏に見送られ、俺はアジトを出た。身体のコンディションは最悪だが、今日まで付きっきりで勉強を教えてくれた千夏の為にも、何としても合格しなければ。千夏が作成してくれたテスト対策ノートを読み返しながら、俺は学校へと向かう。


 そして午前九時前、俺は陸奥高校前に着いた。土曜日なので生徒の数は少なく、運動部の生徒をちらほら見かけるくらいだ。


 っと、のんびり歩いてる場合じゃない。あと十分ほどでテストが始まってしまう。早く教室に入らないと。



「ファイヤアアアアアーーーーー!!」



 その時、どこからかデカい声が響いてきたかと思えば、一人の男が土埃を巻き起こすほどの勢いで俺のもとに走ってきた。



「驚かせてしまってすまない!! 俺が誰かって!? 俺は転生杯の参加者!! 君もそうなんだろ!? 俺の名は――」

「黙れ」

「……えっ!?」



 突然現れたその男を、俺は鋭く睨みつけた。



「これから大事な再テストがあるんだ。俺が今日の為にどれだけ必死に勉強してきたと思っている? 邪魔だ失せろ!!」

「えっ……えっ……?」



 動揺する男の横を通過する。まったく、何なんだあいつは。さっきから俺の痣が反応してるし――


 ん? 痣が反応? 右腕に目をやると、確かにリストバンドの下が赤く光っていた。俺は足を止めて素早く振り返る。



「お前、転生杯の参加者か!?」

「だからそう言ったじゃないか!!」



 いかん、再テストのことで頭が一杯だったから危うくスルーするところだった。



「出鼻を挫かれてしまったが、改めて自己紹介をしよう!! 俺の名は炎丸剛史!! 72の痣を持つ転生杯の参加者だ!! ファイヤー!!」



 右腕の〝72〟の痣を見せつける炎丸。なんかやけに暑苦しい奴だな。俺の苦手なタイプだ。



「この高校に複数の参加者がいると聞いて来てみたけど、まさかこんなに早く出会えるとはな!! ファイヤー!!」



 やはり雪風が引き起こした一連の騒動を聞きつけてやって来た参加者か。こういう奴が現れることを想定して高校に通い続けていたが、正解だったな。土曜日の、しかもこんな朝っぱらから出くわしたのは予想外だったけども。



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