夢の続き
(こんなのスキンシップの内にゃ。まあ、私もああいうことしたの初めてだし、思ったより恥ずかしかったけど……)
(え? 今なんと……)
(何でもない。とにかく千夏ちゃんもやってみるにゃ! 秋人くんってムッツリっぽいから喜ぶこと間違いなしだよ!)
(無理です! あんな大胆なこと、私にはできません!)
(いいの? 秋人くんを他の女の子に取られちゃっても。というか実を言うと私も秋人くんって結構タイプだし、私が取っちゃうかもよ?)
(じょ、冗談はやめてください!!)
(にゃっはっは! でもこの程度のことで躊躇ってたら何も変わらないよ? もう一度言うけど、千夏ちゃんは圧倒的に積極性が足りないにゃ。だからやりすぎるくらいが丁度いいと思うよ)
(やりすぎる……くらいが……)
(そう。秋人くんの彼女になりたいでしょ? 秋人くんと沢山デートしたいでしょ? だったら躊躇ってる場合じゃないにゃ!)
(……分かりました。やってみます)
(その意気だよ千夏ちゃん!)
また二人で何か話してる。そんなに俺に聞かれたら困る内容なのか? 気になってしょうがない。やがて二人が戻ってきた。
「す、すみません。お待たせしました」
「……二人とも、さっきから何をコソコソ話してるんだ?」
「えっ!? そ、それは……!!」
「こらこら秋人くん。女の子同士の秘密の会話を詮索するなんてデリカシーがないよ?」
「まあ……そうだな」
朝野の言う通りだと思ったので、これ以上は聞かないことにした。すると今度は千夏が俺の隣りに座った。
「……千夏?」
「あっ、えっと、この方が教えやすいと思うので、隣り、よろしいですか?」
「まあ、全然いいけど」
「ありがとうございます。そ、それでは再開しましょう」
何故か若干緊張した様子だが、引き続き千夏は丁寧に勉強を教えてくれる。しかし困ったことにさっきより距離が近いので、千夏の良い匂いが俺の煩悩をくすぐってくる。これではなかなか集中できない。
(今だよ千夏ちゃん!)
(は、はい……!)
千夏は更に身体を寄せてきた――かと思えば離れ、また寄せてきたかと思えば、また離れる。これを何度も繰り返していた。何がしたいんだ……?
(何やってんの千夏ちゃん! ほらガッといこうガッと!)
(や、やっぱり無理です! そもそもこんなことをして意味があるとは……)
(……はあ。しょうがない、こうなったら強硬手段にゃ!)
突然、朝野が机の下に潜った。何してんだこいつは。
「きゃあっ!?」
「うおおおっ!?」
直後、千夏の座っている椅子が大きく傾き、千夏が俺にもたれ掛かってきた。必然的に二つの柔らかいモノが俺の身体に押し当てられる。な、なんという破壊力……!!
「ご、ごめんなさい!!」
「いやこちらこそありがと――じゃなくて! 大丈夫か!?」
「はい……」
そんな俺達の様子を、朝野は机の下からニヤケ面で眺めていた。お前の仕業か! 一応感謝しとくけど勉強の邪魔すんな!
「…………」
「……千夏?」
千夏はすぐに離れるかと思いきや、なかなか離れようとしない。赤面しながらも俺の身体にもたれかかったままだ。一体どうしたんだ千夏。俺としてはこのままでも全然構わないけども。もしかして千夏もこの状況を望んでいる……!?
(あいつまた女子とイチャイチャ……!!)
(しかもさっきと別の女子じゃねーか……!!)
(チェーンソー持ってくるか……!!)
またしても周囲の生徒達の心の声が聞こえてきた。しかもさっきより憎悪が増している気がする。これは冗談抜きで殺される。
「っ!?」
その時、背後から凄まじいオーラを感じ取った。振り返ると、そこには先程の図書委員が鬼のような顔で立っていた。千夏は慌てて俺の身体から離れる。
「す、すみません! これは、その……!!」
「貴方達、図書室から出て行ってください」
「えっ!? いや、これはちょっとした事故というか……」
「出て行ってください」
「「……はい」」
俺達はめでたく図書室を出禁になったのであった。
☆
第七次転生杯に参戦してから、約二年が過ぎた。依然として他の参加者との生き残りを賭けた闘いは続いている。ここまで僕と京谷のタッグは無敗、まさに敵なしだった。
ここはとある廃ビルの一階。今日もまた僕達は危なげなく勝利し、一人の参加者を壁際に追い詰めていた。
『テメーの仲間は全員殺した。残るはテメー一人だ』
『くっ……くそが……』
京谷がゆっくりとその男のもとに歩み寄っていく。そいつは全身ボロボロで、立ち上がることすらできない有様だ。もう闘う気力も残っていないだろう。
『ま、相手が悪かったな。オレと大地に勝てる奴なんて存在しねーんだよ。せいぜいあの世でお友達と反省会でも開くんだな』
『……待て、京谷』
トドメを刺そうと京谷を、僕は呼び止めた。
『あん? 何だ大地?』
『こいつは僕がやる。いつもトドメは京谷に任せてばかりだったしな。たまには僕にも汚れ役をやらせてくれ』
『……ククッ。別に汚れ役なんて思ったことはねーんだが、お前がやりたいってんなら譲ってやるよ』
『ああ』
僕はその男の前に立った。いざ殺すとなると勇気がいるものだな。さて、どうやって殺そうか。
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