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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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平和な昼休み

「春香のスキルについてはよく分かったから、早く制服を戻してくれ」

「そんな急かさないの。すぐに右手で戻して……」



 しかし言葉の途中で、春香は身体をダランとさせた。



「……春香? どうした?」

「ごめん。実はさっきの休み時間、空になった菓子パンの袋にこっそりスキルを使って、もう一度パンを食べたりしてたというか……」

「何だそれ!? 言ってることとやってることが違うんじゃないか!?」

「お腹が減って死にそうだったから仕方なかったの! ある意味緊急時だったの! とにかくそんな訳で、もうスキルを使うだけの体力は残ってないわ」

「は!? それじゃ俺の制服は!?」

「……濡れたままってことになるわね」

「おおおおおい!! まだ午後の授業もあるのにどうすんだよ!」

「直に乾くでしょ。お詫びにアタシのお茶あげるから。飲みかけだけど、いい?」

「……しょうがないな」



 今回だけは許してやろう。そう思いながら、俺は春香の飲みかけのお茶を受け取ったのであった。




  ☆




 一方その頃、千夏はちょうど生徒会の仕事を終え、弁当を持って廊下に出たところであった。きっと秋人達を待たせてしまっているという焦りから、早歩きで屋上に向かっていたが――



「きゃっ!?」

「うにゃっ!?」



 曲がり角で女子生徒とぶつかってしまい、互いに転倒した。



「す、すみません! 急いでいたもので……!!」

「こっちこそごめんにゃ……ってあれ?」

「あっ。貴女は……」



 その女子生徒は朝野だった。朝野は千夏の顔を見て目をパチクリとさせる。



「確か千夏ちゃん、だったよね? 私のこと分かる?」

「勿論です。朝野さんですよね。先日は色々とありがとうございました。秋人さん達も、朝野さんが協力してくれて本当に助かったと言ってましたよ」



 この千夏の発言を聞いて、朝野は首を傾げる。



「んん? もしかして千夏ちゃん、この間の闘いのこと覚えてるの?」

「……あっ!?」



 思わず両手で自分の口を塞ぐ千夏。そう、通常であれば一般人は記憶を改竄され、雪風の事件のことは何も覚えてないはずである。つまり千夏が特別な一般人であることが朝野にバレてしまう。



「おかしいにゃー。転生杯の参加者でもないのに、記憶を改竄されていないなんて」

「あ、朝野さん。これは、その……!!」

「まーいいや! 改めてよろしくね、千夏ちゃん!」

「え? はい、こちらこそよろしくお願いします……」



 朝野は細かいことは気にしないタイプであった。



「あっ、ごめんね。急いでるんでしょ?」

「はい。これから秋人さん達と屋上でお昼ご飯を食べるんです」

「そうなんだ! それ私も混ざっていい!? 今日は友達みーんな学食で、一緒にお弁当を食べる人がいなくて困ってたところなんだにゃ!」

「はい、私は全然大丈夫ですよ」



 朝野と秋人達が休戦中だということは千夏も知っていたので、快く承諾した。こうして千夏と朝野は一緒に屋上に向かった。




  ☆




「すみません、お待たせしました!」

「みんな待たせたにゃ!」



 やがて千夏が屋上に来た。何故か朝野も一緒である。



「あれ? 秋人さん、どうして制服が濡れてるんですか?」

「……気にしないでくれ」

「生徒会の仕事お疲れ様、千夏ちゃん。で、なんで朝野までいるのよ」

「私も春香ちゃん達と一緒に食べたくて! 駄目かな?」

「まあ、別にいいけど」

「やった! それじゃいただきまーす!」



 俺はお待ちかねの弁当の蓋を開ける。おっ、今日の主役はハンバーグか。もう見ただけで美味いというのが分かる。



「すみません、私が来るまで待っていただいて」

「謝らなくていいって。昼休みはまだまだあるしな」

「あの、もし今後も遅れて来るようなことがあったら、先に食べ始めてもらっても全然構いませんので……」

「何言ってんのよ千夏ちゃん。こういうのはみんな一緒に食べるからいいんでしょ」

「弁当を作ってくれた本人が来る前に食べ始めるのも胸が痛いしな」

「あ、ありがとうございます……!」



 俺は女子三人と他愛もない雑談をしながら弁当を食べる。なんだかこうしていると、本当にただの学生になったような気分になる。



「あっ、そのハンバーグ美味しそうにゃ! もーらい!」

「ちょおおおい朝野!! なに俺のハンバーグ勝手に食ってんだよ!!」

「んー、ソースと挽肉が絶妙に調和していて、旨味たっぷりの肉汁が口いっぱいに広がっていく……。最高にゃー」

「誰が食レポしろっつった!! 聞いてんのかおい!!」



 俺はわりと本気で怒っていた。千夏の手作りハンバーグ、せっかく楽しみにしていたのに一口で全部食べられてしまった。



「ごめんごめん。凄く美味しそうだったから、ついやっちゃったにゃ」

「あ、秋人さん。私のハンバーグでよければ差し上げましょうか?」

「いやさすがにそれは千夏に悪いし……」



 すると朝野が良いことを思いついた顔でポンと手を叩いた。



「そうだ! 私のニンジンあげるから、それと交換したってことにしよ!」

「ハンバーグとニンジンが釣り合うか!! そういうのは価値が同じものじゃないと――」

「まあまあそう言わずに。そりゃっ!」

「むぐっ!?」



 朝野が自分の箸で俺の口にニンジンを突っ込んできた。これ間接キスじゃ……!?



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