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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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6歳の頭脳

「はあ……」



 昼休み。俺と春香はいつものように弁当を持って屋上に集まっていた。あとは千夏が来るのを待つだけだ。



「どうしたのよ、溜息なんかついて。せっかくの千夏ちゃんの手作り弁当がマズくなっちゃうでしょ」

「今日、中間テストの答案が返ってきただろ? それが全教科赤点で……」

「全教科赤点!? まったく、日頃から勉強をサボッてるからそんなことになるのよ。どうせ授業もロクに聞いてなかったんでしょ?」



 まったくその通りだ。まさかこんなに長く高校に通い続けることになるなんて思ってなかったし。



「そう言う春香はどうだったんだよ。どうせ春香も俺と似たようなもんだろ?」



 なんせ春香の実年齢は6才。学力はまだ足し算引き算レベルだろうし、高校のテストなんて意味不明な呪文のように見えていたに違いない。



「まあそう落ち込むなって。六歳に高校のテストは早すぎるしな。なんなら今度俺が九九を教えてやろうか?」

「何言ってんの? アタシは全教科80点以上だったわよ」

「……はあ!? 嘘だろ!?」

「本当よ。これが証拠」



 春香が俺に成績表を見せる。確かにどの教科も80点以上。衝撃のあまり俺は気を失いそうになった。



「馬鹿な……何故6才に高校のテストが解ける……!?」

「前にも言ったでしょ。確かにアタシの心は6才のままだけど、身体が16才になったことで頭脳もそれ相応に発達したって。ま、さすがに真冬には敵わないけどね」



 なんてこった。恐るべし6才である。



「で、でも春香だって中間テストのことは当日まで知らなかっただろ!?」

「ええ。いきなりのテストにはビックリしたけど、授業の予習復習は毎日やってたから特に問題なかったわ。ちゃんと準備できてたらもっと高得点を狙えただろうけど。まあでも初めて高校のテストの雰囲気を味わうことができたし、楽しかったわ」



 俺の知らないところで春香はしっかり勉強してたのか。なんか段々と自分が情けなくなってきた。



「……ところで千夏はまだ来ないのか?」

「千夏ちゃんなら、生徒会の仕事があって遅れるみたいよ」

「また生徒会か。千夏も大変だな」



 腹が減ったので早く食べ始めたいところだが、それは千夏に悪いので、千夏が来るまでのんびりジュースでも飲んで待つとしよう。



「……あっ」



 いつの間にかペットボトルが空になっていることに気付いた。新しいのを買いに行こうとしたが、ふとあることを思いついた。



「なあ、春香の【逆行】を使えば、この空のペットボトルを開封前の状態に戻すこともできたりするのか?」

「……まあ、やろうと思えばできるけど」

「マジか! それじゃ無限に飲み放題だな! だったらこのペットボトルにスキルを使ってくれないか?」



 俺がお願いすると、春香は呆れたように溜息をついた。



「アンタねえ、人のスキルを何だと思ってるのよ。言っとくけどアタシのスキルって凄く体力を消耗するし、そんなホイホイ使えるもんじゃないの。緊急時以外はできるだけ使わないようにしてるから、そのお願いは却下よ」

「ははっ。冗談だよ」



 と言いつつも少し期待してしまった。でもそうだよな、こういうスキルの使い方は良くないだろう。俺だってタクシー代わりに【操縦】のスキルを使わされたり、かき氷が食べたいからと【氷結】のスキルを使わされたりしたら、あまり良い気持ちはしないし。



「ついでに教えておくわ。秋人はこれまで何度もアタシの【逆行】のお世話になったと思うけど、それらは全てアタシの〝右手〟の効果によるものよ」

「……右手? ひょっとして、右手と左手で効果が違うのか?」

「そうよ。まあ、大まかな部分は同じだけど。左手で触れた場合は、右手よりも十倍のスピードで対象の時間を巻き戻すことができるの」

「は!? だったら――」

「だったら左手だけ使ってればいいだろ、って言いたいんでしょ? だけど左手の効果には大きなデメリットがあるのよ」

「デメリット……。あっ、分かった。春香は右利きだから左手が使いづらいとか、そんなとこだろ?」



 ちょっとボケたつもりだったが、春香にジト目で睨まれてしまった。



「す、すまん。続けてくれ」

「そうね……。口で説明するより実際に見てもらった方が早いかも」

「いいのか? さっき緊急時以外は使わないって言ってたのに」

「今回だけは特別よ。何かちょうどいい物は……」



 ふと、春香が手元のお茶と俺を交互に見る。



「……このお茶を秋人の制服にぶっかけていい?」

「どうした突然!?」

「いいからいいから。ちゃんと最終的には元に戻してあげるわよ」

「まあ、そういうことなら……」

「それじゃ遠慮なく!」



 春香が俺の制服に思いっきりお茶をぶっかけてきた。何このプレイ。



「あっはっは! 見事にずぶ濡れになったわね!」

「笑ってないで早くしろ!」

「ごめんごめん。それじゃ左手で【逆行】を使うわよ」



 春香が俺の制服に左手で触れる。すると瞬く間に制服から水気が消えていった。



「うおっ、本当に早いな」

「でしょ? でも見てて」

「……あれ!?」



 俺は声を上げた。しばらくすると制服が濡れた状態に戻ってしまったからだ。



「これが左手のデメリット。左手は巻き戻すスピードが早い代わり、一定時間が経つとスキル発動前の状態に戻っちゃうのよ」

「なるほどな……」



 それじゃ実戦で左手を使ってもあまり意味はないってわけか。俺が思いつかないだけで何か活用方法があるのかもしれないけど。



読者の皆様からのブックマークと評価、本当に励みになっております。今後ともよろしくお願いします。

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