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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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最高の料理人

「むぐっ……!!」



 ま……不味い……!! 見た目通りの味だった。以前冗談交じりに「真冬ってゲテモノ料理とか作っちゃいそうなタイプ」と言ったが、どうやら的中してしまったらしい。千夏も悶えそうになるのを必死に堪えている様子だ。



「……どう?」



 不安げな表情で真冬が聞いてくる。



「す、すごく個性的で、良いと思うぞ! なあ千夏!?」

「は、はい! 私はとても好きな味です!」



 俺と千夏が苦し紛れに答える。不味いなんて言えるわけがない。真冬の気持ちを考えたら、そんなことは口が裂けても――



「まっず!! これのどこがオムライスなわけ!? 料理下手にも程があるでしょ!!」



 春香あああああ!! 空気読めよコラ!! どんだけデリカシーないんだよ!!



「……ごめん。ちゃんとレシピ通りに作ってるつもりだけど、どうしても上手くいかなくて」



 沈んだ表情で真冬が呟く。ほら見ろ傷ついてるじゃないか。



「まあでも、アタシ達のことを想って一生懸命作ったというのは伝わってくるわ。ありがと真冬」



 なんだかんだ言いながらも春香は食べ進める。同じく俺と千夏も。



「みんな、無理して食べる必要は……」

「大丈夫。全然無理してないから」

「はい。料理は愛情ですからね」



 やがて俺達はオムライスを完食した。しかし真冬には申し訳ないけど、やっぱり味はアレだな、うん。成長に期待して今日まで様子を見てきたけど、多分この先も変わらない気がする。


 雪風を倒して七日振りにアジトに帰宅した時、真冬は俺達の顔を見た途端、思いっきり泣き崩れた。きっと心の底から俺達のことを心配してくれたのだろう。だから何かしてあげたいという気持ちは分かるし、凄く嬉しいんだけども……。



「な、なあ真冬。そこまで料理に拘る必要はないんじゃないか? なんというか、人には向き不向きがあるんだし、そろそろ――」

「ううん」



 首を横に振る真冬。その目はメラメラと燃え盛っていた。



「正直、私は料理を甘く見てた。もっともっと修業を積んで、いつか世界中の誰もが認める最高の料理人になってみせる」

「何言ってんだ!? 目を覚ませ真冬!!」

「その気持ちだけで十分ですから!! 無茶はしないでください!!」



 なんとか真冬を説得した結果、明日の朝食からまた春香と千夏の当番制に戻ることが決まった。ホッとする反面、真冬の手料理が今日で終わりなのは少し残念でもあった。



「そういえば千夏ちゃん、今日は朝から生徒会の仕事があって早めに家を出ないといけないのよね? 後片付けはアタシ達に任せて、学校の準備しちゃっていいわよ」

「えっ……いいんですか?」

「勿論。こういう時はお互い様でしょ」

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて……」



 春香と千夏の会話を聞いて、俺は首を傾げる。



「ん? 千夏って生徒会役員だったのか?」

「はい、書記を務めています。そんな大した仕事はしてませんけど……」

「知らなかったの? そういうとこよ秋人」

「……すまん」

「い、いえ! 私もちゃんと話してなかったので!」



 ちなみに先日、体調不良を訴える生徒や怪我を負った生徒が〝何故か〟続出し、とても授業を行える状況ではなかったため、昨日まで休校という措置が取られていた。原因は言うまでもなく雪風が引き起こした一連の騒動だが、今となっては転生杯の参加者(と千夏)以外は知る由もない。そして今日から学校が再開するというわけだ。



「秋人さん、春香さん。お先に失礼します」

「いってらっしゃい。気を付けてね」



 千夏は俺達に一礼し、アジトを出た。それを見て俺はあることに気付く。



「千夏の制服、夏服だったな」

「ええ。六月になったから衣替えしたみたいね」



 もうそんな時期か、と俺はカレンダーに目をやった。仮転生してからというもの日付の感覚が曖昧なので実感がない。



「それじゃ俺達も夏服にしないと駄目だよな」

「あら、意外ね。もう『俺達が学校に行く意味はない』って言わないの?」

「……そうも言ってられなくなったからな」



 先日の事件で、陸奥高校には複数の参加者がいると他の参加者に知れ渡ってしまっただろう。それにより再び陸奥高校が戦場になる可能性は大いにある。また多くの犠牲者を出さない為にも、常に学校は警戒しておかなければならない。



「でもどうする? 俺達は正規の生徒じゃないから夏服なんて持って――」

「ん」



 真冬がサッと紙袋を差し出してきた。



「夏服もちゃんと用意しておいた。こっちは春香の分」

「流石は真冬! 頼りになるわね!」



 いやホント、真冬には恐れ入る。紙袋を受け取った俺は、自分の部屋で着替えを済ませた。おお、我ながらよく似合ってる。スカート丈はこれくらいでいいだろうか。



「っておおい!! これ女子の制服だろ!!」



 リビングに戻ってくるなり俺は叫んだ。



「ぷふっ……大丈夫……凄く似合ってるから……」



 笑いを堪えながらスマホを構える真冬。



「撮るのやめろ!! さてはわざとだな!?」

「ごめん、わざと。でも着る前に気付いたと思うんだけど」

「……まあ、こういうのは一応乗っておかないとな」



 いやノリ良すぎだろ、と我ながら思うのであった。



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