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【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】  作者: ダイヤモンド


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巨大氷人形

「……さない」



 俺の指が触れる寸前、雪風が呟いた。



「お前は……貴様だけは……絶対に許さない!! うおおおおおおおおおおアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!」



 雪風を中心に発生した氷が驚異的なスピードで膨張し、部屋を埋め尽くしていく。こいつ、まだこんな力が……!!


 氷の膨張は部屋を突き破っても尚止まらず、俺は退避する間もなくそれに巻き込まれてしまった。これ、やばいんじゃ……!?




  ☆




 一方その頃、地上では――



「とりゃあっ!!」



 朝野が星の弾を放ち、最後に残った氷人形を粉砕する。これでようやく全ての氷人形が破壊された。



「やっと全部消えた……」

「助かった……」

「もう逃げ回らなくて済む……」



 安堵の表情を浮かべる生徒達。しかし依然として学校が氷の牢獄によって閉ざされているという状況は変わらない。



「ふっふっふ。完全復活した私にかかれば、こんなの大したことないにゃ!」

「調子に乗らないの」

「あいたっ!」



 ドヤ顔の朝野にチョップをかます春香。



「問題はまだ何も解決してないんだから。秋人が雪風を倒すまで気を抜いたら――」



 その時だった。地面が大きく揺れ始め、春香達は尻餅をついた。



「な、なになに!? 地震にゃ!?」

「多分違うわ! まさか……!!」



 明らかに地中で何か起きている。間もなく激しい地鳴りと共に、グラウンドの至る所に亀裂が生じた。


 生徒達から悲鳴が上がる。やがてグラウンドは完全に崩壊し、そこから巨大な〝何か〟が姿を現した。



「何……これ……」



 唖然とする春香達。その正体は、一体の氷人形だった。ただしそのスケールは先程まで春香達が闘っていた氷人形とは比べものにならず――校舎を優に超えるほどの、尋常ではない大きさだった。



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」



 怒り狂うように氷人形が咆哮する。常軌を逸したその存在に、その場にいた誰もが未曾有の脅威と戦慄を覚えた。



「何だよ……これ……」

「どうしたらいいのよ……こんなの……」

「今度こそお終いだ……」



 ようやく一つの脅威が去った矢先に現れた、超巨大な氷人形。再び絶望の底に突き落とされた生徒達は、もはやただ呆然とすることしかできなかった。



「……そうだ、秋人は!? 秋人はどうなったの!?」



 まさか雪風に敗北したのでは――そんな予感が春香の脳裏を過ぎる。



「ゲホッ、ゴホッ!!」



 その時、崩壊したグラウンドの中で、大きく咽せる人物の姿を春香の目が捉えた。間違いない、秋人だ。



「秋人!!」



 春香はすぐに秋人のもとへ駆けつけた。




  ☆




 氷の膨張に巻き込まれた俺は、そのまま押し出されるような形で地上に舞い戻った。運が良かった、下手したら地中で窒息死していたかもしれない。その代わり口の中に大量の土が入ってしまったので凄く苦しい。


 顔を上げると、一体の巨大な氷人形が怪獣のように咆哮していた。氷の膨張の行き着いた先がこいつか。とんでもないな……。



「秋人!!」



 大きく咽せる俺のもとに、春香が駆けてきた。



「春香! よかった、無事だったんだな」

「それはこっちの台詞よ! それより何あの化け物!? あれも雪風の仕業なの!?」

「みたいだな。俺もビックリだ」



 雪風の奴、まさか本当に弟の死で覚醒してこんなものを誕生させたというのか。今のところ大きな動きはないが、いつ暴れ出してもおかしくない。



「あれ、春香のスキルで何とかならないか?」

「無理よ。これだけ大きいと、戻せる時間はせいぜい三秒が限界ね」



そういや春香の【逆行】は対象の質量や接触度によって戻せる時間は変わってくるとか言ってたな。三秒では気休めにもならない。



「あっ! 秋人くん発見!」

「秋人さん!」



 春香にやや遅れて、朝野と千夏が駆けつけてきた。二人も無事みたいでよかった。



「秋人さんなら必ず生きて戻ってくると信じてました……!」

「ああ。でもまだ安心はしてられない。あの化け物をなんとかしないとな」



 だが果たして俺達でなんとかできるものなのか。正直倒せるイメージが全く湧かない。



「ところで秋人、雪風との闘いはどうなったの? 雪風は今どこよ?」

「さあな。だけど多分まだ生きて――」

「あっ!? みんな、あれを見るにゃ!」



 朝野が巨大氷人形を指差す。その胸部あたりに人間らしきシルエットが見えた。おそらく雪風だと思われる。



「まさか、あれが雪風!? なんであんなところに……!?」

「……そうか。雪風は今、巨大氷人形と一体化しているようだ」

「一体化!? 何それ!?」



 巨大氷人形が雪風の力で存在を維持しているのなら、あれと闘わずとも雪風さえどうにかできれば消滅させられるのではないか――そう考えたりもしたが、あれと雪風が一体化している以上、それも困難となった。



「どうやら闘うしかなさそうだね!」

「朝野の言う通りだな」

「でもあんなの、本当に倒せるんですか……!?」

「分からない。だけどやるしかないだろ」



 俺達が諦めてしまったら、今度こそ全滅は免れない。だったら選択肢は一つだ。



「タカ……シ……タカ……シ……!!」



 先程から巨大氷人形は嘆くように雪風弟の名を連呼していた。どうやら一体化したことで雪風の意志が乗り移ったと見える。



おかげさまで100話達成しました。引き続き応援よろしくお願いします。

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