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間小話 暖かな春と輪

 教会に持って行くビスケットとクッキー作りで調理室に集まった時に、お爺様が亡くなった話をした。


 エリットとアインテール国の貴族なのに何故か知らなかったアレクも知るところになり、それで次の日の魔法の授業で心が乱れてすごい水魔法になったのかと納得された。

 ラウルも学校でなにやらやってしまったらしく、ミュリスに噂になっていたと聞き、二人で苦笑いだった。


 魔力の雫で十分発動できていた魔法に、膨大な魔力の中から少しだけ使うという慣れない作業に目下苦戦中だ。

 今までは魔力全部を放り込んで課題をこなしていたため、どうしても魔力を注ぎ過ぎてしまう。加減が分からないことが一番の問題で、どの魔法がどれくらいの魔力量を必要としているのかを二人で確かめ合っている最中だった。


「未だに乱れています。ノエル様には、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」


 魔法の授業で組んでくれているノエルには、苦労をかけ通しなので謝る。2回目に乱れた時は、無理やり魔力をぶつけて隔絶魔法で抑え込んだ。

 その時も、作ってもらった魔道具をつけて来たから気にするなと言ってくれたのだ。


「気にしないでいいと言っただろう。領地の仕事と勉強を頑張っているんだ」

「ありがとうございます」

 お礼を言って、焼き上がったビスケットを取り出して冷ます。

「このお菓子、私達で行ってきましょうか?」

 ノエルの言葉を聞いたクラウンがそう申し出てくれエリットが同意をする。

「そうだな。それがいいだろう。少し休んだ方がいいぞ」

「そうですよ。後は、子供達に配るだけですからね」

「やっておきますので、休んで下さい。無理はよくありません」


 アレクとミュリスもそう言ってくれ、ラウルと顔を見合わせてから『『お願いします』』と頭を下げた。


 二人で急いで帰ると、休むでもなく、真っ直ぐ書斎に向かう。

 皆には悪いが、やるべきことを片付けたい。

 ラウルは隠し部屋を引き続き探し、俺はお爺様の椅子に腰かけ、溜まっていた書類仕事を一気に仕上げにかかる。


「ふぅー。これでダニーも一息つけるはずだ」

「お兄ちゃん、お疲れさま。アリスにお茶とお菓子を頼んだからね」

「ありがとう。終わったから隠し部屋を探すのを手伝うよ」

「うん!」


 お爺様がナゾナゾのような物を残してくれているので、楽しみながらの捜索だ。

 見つけたいようなまだ見つけたくないような。そんな気分で探しているからか遅々として進まない。

 心の問題は、時間が解決してくれるものも多いため、ラウルのことを思うと、隠し部屋の発見はゆっくりでもいいかとも思う。


「別荘はすぐに分かったのにね」

「なにせ税金の書類があったからな。あれは逆に見つからないと、まずいことになってたよ」


 気づかずに滞納が発覚をして、一斉に取り立てに来られると、ハニハニの利益を補填しないといけなくなる。

 そう教えると、他国にある沢山の別荘を考えると大変だよねと笑う。

「でも、あんなにあるとは思わなかったな」

「アハハ、本当だね」

 ラウルが笑ったことに安心をして、笑みを浮かべた。

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