バタバタの文化祭 中編
「調理台の中で蓋つきの容器を探してくれ。それにお茶をそそいで冷凍庫で凍らせる。中冷で2時間はかかるが、ローズガーデンは1時間制だ。なんとかなる。暑い昼に備えるぞ」
ピッチャーの中に凍らせたお茶を入れればローズガーデンでも冷えたままだと伝えると頷く。
「分かりました」
皆が見つけた容器に、テープを貼り黒:野草茶、赤:ハーブティーと書いておく。
「野草茶は黒ケトルで作るから注ぐのを間違えないようにして」
第三段階のジュレの層は最も厚みがあり、固まるのに時間がかかるので、俺はレモネードを作ってピッチャーを冷蔵庫で冷やす。
「2時間は平和なはずなんだよな。席数も埋まるけど、ローズガーデンに運んだもので初回は足りるから」
「なるほど」
「固まるまでにあと1時間はあるから、台車でレモネードを運んでくるよ。お茶もピッチャーに入れて冷えている分は木箱に入れて」
「それ、俺達がやりますよ」
「ソルレイ様はここにいて下さい」
「あーうん。じゃあ3人で行って。ローズガーデンの様子も見て来てくれる?」
「任せてください」
俺とシュレインは二人で蝶々を型抜きする。
「ゆっくりでいいよ。ジュレは15時までは持つはずだ」
「ソルレイ様。俺は昼までだと思います」
「え!? あ、ミスった」
「あ、すみません」
「いやいや、俺が悪いよ」
ミスった蝶を省き、作業を続ける。
最後までやったので、ベロンとジュレを捲り上げた。
うん、失敗は1つだけだ。
後は可愛い蝶だな。
「ソルレイ様、さっき4人掛けなのに2人計算していたでしょう? あれは危険ですよ」
「そうかな? でも倍だよ」
「凄く混んでガーデンの入り口で待たれたら、ノエル様はきっと45分にすると思うんです」
「利用時間を変えるのか。それは考えていなかったな。4人掛けで4人が席に座り、45分か。4時間後に1時間増えるということは2回転増えるから……え!? 640個もいるのか!?」
思わず大きな声を出し、周りに頭を下げる。
「400個しかないから240個足りない。15台作らないと間に合わない。無理だな」
「やっぱり無理ですか?」
「うん、無理だよ。まずボウルの数がない」
「ですよね」
「そもそも全員ジュレを頼む計算をしているけど、クッキーもケーキも食べるだろう?」
食べるよな。
余るのか?
「家族や先生達に渡したチケットはケーキですもんね」
「うん。今作っているので時間になるから午後からは作らないよ。仕上がるの18時になる」
「文化祭は16時までですからね」
「うん。17時半までに片づけて、皆でご飯を食べに行こうと思ってる。打ち上げの店を予約してあるんだ」
「分かりました」
1時間経ったので最後の花と蝶たちを舞わせ黄色のジュレを流し込む。
1時間後に緑のジュレを流し込めば終わる。仕上がりは、13時だ。
チーズケーキにフォークで模様をつけピスタチオを散らす。また冷蔵庫に入れておいた。仕上がって30分後に3人が戻ってきた。
「おかえりと言いたいが、1時間半も何をやっていたんだ?」
シュレインがそれほどなのかと息を呑むように尋ねると、首を縦に振る。
「アレをしてコレをしてと女子達が……」
「子供達は食べ終わったらすぐに席を立つようで、回転数が早いみたいなんです。親子連れは長いみたいなのですが、食器を下げてとか、洗ってとかそういうのが多かったです」
子供は、みんなレモネードを選択するため役に立った。喜んでいたことを知る。
「空いたピッチャーを預かって来ました」
「向うで洗って来ました」
働き者の3人に礼を言って、レモネードを作って冷凍室に入れた。冷蔵室では、間に合わないという判断だ。
レモネードに使える蓋付の容器を探し出し、レモネードを凍らせておく。氷変わりになる。
野草茶とハーブティーも迎賓館の更に冷えている物と入れ替えて、ローズガーデンに持って行ったと聞き、様子を教えてもらう。
「ローズガーデンは、大人だけなので静かでした。みんなバラを見ながら美味しい菓子を食べられるなんて、と喜んでいましたよ」
「そうなんだ。よかったよ」
「平民もハレの服を着て食べに来てますね」
平民が小金貨1枚を出すのか。食べたらなくなってしまうお菓子に。
驚いた顔をしていたのだろう。アレクは真面目な顔で言った。
「一生の記念ですね。菓子コンクールの優勝者は、王宮で働いていたり、上級貴族家や高級ホテルの抱えるパティシエだったりで、手が届きません」
「……そうか」
いい日になるといいのだけれど。
皆でお茶を作り冷やしていると、ノエルから伝言を預かったと言うクラスメイトが調理室にやって来た。
「ソルレイ様、ノエル様からです。45分にしていいかと聞かれましたが、どうしますか?」
「せっかくだから、このまま1時間にしようよ」
先程の話を聞いたら時間を削る選択肢はない。平民には、一生に一度の記念だ。
「それもいいと思います」
ハルドとアレクは賛成だ。物言いたげなシュレインに首を振った。
「完売次第終了でもいいと思う」
「あれだけ増やしましたもんね」
「それもそうですね」
「あと20分したら最後のジュレを流し込む。冷やしておくだけだけど、出来上がるのは13時だ。その作業が終わったら見てくる。ノエル様と話もしたいから3人はここにいて。シュレインはさっき留守番だったから、息抜きに一緒に行こう」
「分かりました」
最後の工程の作業を終えたので、チーズケーキを1つずつ、蓋をして持って行く。
まだ冷蔵庫にあるのだが、二人だけなので2つだ。
てくてくと歩き、中庭でラウルの頑張る姿を見る。
子供がたくさん来ているから盛況だ。
この分ならペナルティーの心配はない。
気づいたラウルがにっこり笑って手を振るので、俺も笑って頷いた。
両手が塞がっていることに気づいて大きく頷いた。
「ラウルツ君ですね」
「うん、行こうか」
チーズケーキをそのままローズガーデンに運び入れ、ノエルと売り切れ御免で13時に6台ずつ、これ以上は文化祭の開催時間の関係上無理だと伝えた。
「13時からやっても18時を回るから間に合わないよ」
「16時までだからな。分かった。それならば、時間を短縮せずともいいだろう」
「うん」
ノエルから、カルムスとダニエルをブルーローズの咲き乱れる静かなテーブル席に案内したと聞き、お礼を言った。
10時か。いい時間に来たな。お昼は暑いしな。
食べたら調理室に見に来てくれると聞き安心した。
「足りない物はある? 今は冷やしているから13時まで手が空くよ」
「こちらは大丈夫だ。相手は、大人だからな。平民の相手より貴族相手の方が楽だ。それに、あんな感じだぞ」
じっと眺めた後に口に入れ、顔を綻ばせて食べている。
普段は煩い貴族達も黙って食べているので、給仕も楽らしい。
「問題は迎賓館か。見て来るよ」
「ああ、頼む」
迎賓館は打って変わって賑やかで、『わぁきれいー!』という子供の声が飛び交っている。
そして、付添いの大人はもう少し見ていたいのに、子供がパクンと食べ、その食べ進めるスピードに一口欲しいと慌てて言っている。
皆、見事にレモネードだな。
エプロンをつけ、開いたテーブルの食器を下げて席を整える。
「私もやります」
シュレインと手伝いに入ると、迎賓館担当になった女子や男子達から助かったと声が漏れた。
「凄い数だね」
「ひっきりなしです」
「並ばれていますからね」
「人員整理に二人抜けているんです。勝手に入って来ちゃうから、案内があるまで入れませんと言っているんです」
弱った顔をしていた。
「アハハ。それなら俺が外に出るよ。領民たちで慣れているからね。時間を稼いでくるからゆっくり整えてくれればいい」
俺はそのまま外に出ていた二人に中の給仕をするように言って中に入れた。
「みんなー! 聞いてー! お菓子を食べるルールだよ!並ばないと入れないからねー!順番を抜かした子は最後尾に行ってもらうよー!」
親も子もはっとしたように綺麗に並ぶ。
そうすると前ではなく横に回り込む。
側面に移動すれば、皆から見えるからな。
「お菓子について話しまーす!お菓子は全部で3種類あるけど、選べるのは1つだけだよ。兄妹で来ている子もいるねー?」
子供達は素直にコクンと頷く。
「好きな物を食べて欲しいから、お兄ちゃん、お姉ちゃん『おまえはこれにしろ』『これにして!』とか言っちゃ駄目だよ? 弟君も妹ちゃんも『お兄ちゃんはこれにして!』『これも食べたい―』『お姉ちゃんはコレね!』なんて言わないようにね? 約束できるかな?」
はーいと控え目に返事が聞こえた。
「うーん。できないみたいだね。これじゃあ中には入れられないなあ。約束できるかなー?」
「はーい!」
今度は、大きな声が返ってくる。
「それじゃあ、みんなは大丈夫そうだ! じゃあ次はお父さん、お母さん! 子供一人につき1つ。一度限りがルールです。ルールを破ってもう一度並ぶといったことはおやめください。子供には、好きな物を食べさせてあげて下さいね。 子供さんから貰うのはOKです。隠れるように慌てて食べるお父さん、お母さんが多いようですが、気にせず、一口もらって下さい」
みんなもお父さん、お母さんに一口あげてねー? と、言うとはーいと返事をする。
どんなお菓子か気になると思うので、見本を真ん中に置いてあるので、それを見てどれにするか決めたら案内された席に着いてね。
ピンク色のエプロンをしたお姉ちゃんやこんなエプロンをしたお兄ちゃんがいるよ。エプロンを持ち上げて説明をする。
「勝手に席に着くのはダメだよー。皆も今日は貴族らしさを味わってね。お手洗いは先に行くんだよー。席は案内してくれるからなくならないからね!」
中からOKですと言いに、シュレインが来たので、何組通せるかを聞き、10組を中に入れる。
残りは10組だ。
どこから来たのー?や、もう食べたいお菓子は決まっているのー?とか他愛もない話をして30分後に12組を入れた。
11時と昼前なので客も途切れた。
カルムスが来る筈なのでシュレインと俺は調理室に戻るため迎賓館の中に入った。
泣いている女の子とお兄ちゃんがいたので、どうしたのか聞くとお兄ちゃんが一口くれないと言う。
女の子の皿は空だ。
お兄ちゃんは白いチーズケーキを食べている。
「お兄ちゃんには、一口あげたの?」
「え? う、ううん」
「じゃあ、もらえないね。一口あげるから一口ちょうだいって頼まないと」
そう言うと涙を溜めた。
「そっちがよかった!」
「お兄ちゃんが決めたの?」
「……」
「自分で決めたね?」
「……」
唇を引き結んで涙をこらえている。頭を撫でると涙がこぼれ落ちそうだった。
「泣いたらいつもお兄ちゃんはくれる?」
コクンと頷く。
「だから泣くんだね。泣かれたお兄ちゃんは悲しいよ」
「お母さんとお父さんは一口あげなさいって言ったのにくれなかったもん」
「うん。そうか。それが正しいことだと思う?」
「……分からない」
「お兄ちゃんはどうして一口あげないといけないの?」
「ノノが妹だから」
「ノノが妹だと1口あげないといけないの? そんなルールないよ? ここでは好きな物を頼むんだ。お兄ちゃんのものはお兄ちゃんのもの。ノノはあげなかったからもらえないよ。ルールはちゃんと教えたでしょう? ノノも返事をして入ったね?」
涙をこぼしながら頷くので、チーフで拭いて頭を撫でる。
お兄ちゃんの頭も撫でる。
「これはお兄ちゃんのものだよ」
泣きそうな顔で頷くので出る前の涙を拭ってやる。
頭を掻くお父さんと申し訳なさそうな顔をするお母さんに、
「お兄ちゃんに優しくしなきゃメッ!だよ!」と、言って席を離れた。
少々恥ずかしかったが、ノノが分かればそれでいいのだ。
様子を見ていた周りの席の子にもお父さんお母さんにも微笑む。
「さあ!食べ時を逃がさないで食べてー!冷たいお菓子だよ!」
声をかけるとまた自分達の会話に戻っていく。
クラスメイト達に後は頼むねと声をかけた。
「頑張りますわ!」
「やってみます!」
「今のは厳しいですが、やれるだけやります」
皆が決意するように言うので笑う。
「アハハ! 大丈夫だよ。喧嘩しても兄妹はすぐに元に戻るよ。放っておいてもいいんだ。ただ、お兄ちゃんが居心地悪そうだったからね」
無理に仲裁をする必要はないと言ってシュレインと調理室に戻った。
入ると既にカルムスとダニエルがいた。
「戻って来たか」
「カルムお兄ちゃん!ダニーもごめんね。ちょっと迎賓館に行っていたんだ」
「さっき来たところだ。いいぞ」
クラスメイトのいる調理台にいるので、何があったのかもう一度話を聞いたようだ。
カルムスもダニエルも席同士の間隔がホテル以上に離れているので、ゆっくりバラと菓子を楽しめたと褒めるように話す。
「で? どれだ?」
「この冷蔵庫とそこの冷蔵庫と12個分だよ」
「一つずつ見ていくから出してくれ」
「うん。皆は回っておいで。そろそろ交代の時間だ」
「はい!お疲れ様でした!」
4人にここはいいから回って来るようにと告げ、行かせることにした。
「調理台に出していくね」
「手伝いましょう」
「ダニーありがとう」
「いえいえ」
12個を空いている調理台に並べて、見守ると2つが弾かれた。
「嘗めた指を突っ込んでいるな」
気持ち悪いっ。
ダニエルも露骨に顔を顰めた。
「カルムお兄ちゃん、他は本当に大丈夫なの?」
「ああ、魔法陣で可視化してやろう」
凄い速さで魔法陣を書き複合の付与魔法陣と重ね、あっという間に12個の魔法陣をそれぞれのジュレの上に投げた。
この魔法陣を投げるのは、カルムス独特だ。
ポワンとジュレの上で魔法陣が広がり、手で触った跡や指紋が紫に浮き上がって見える。
指の形をした穴が、底から伸びているのが見える。
型ごと冷やしていたから最後の層が上を向いて冷やされていた。底から指を入れたようだ。
型が必要だったため皿に引っくり返したことで塞がれた形になり、気づかなかった。
「女子が戻って来たから二つやったところで慌てて逃げたのか」
「これはどうしますか?」
「間違えると駄目だから捨てるよ」
「いや、さっき聞いたが10日は持つのだろう? お前の愚息が嘗めた指を突っ込んだ手垢まみれの菓子だと送りつけるぞ」
ええ!?
「それがいいでしょうね」
「ダニー!?」
「俺が鑑定をしたと名前付きで送っておいてやる。箱に入れろ」
「もう!」
俺はガーネルクラスの子にここの冷蔵庫も使ってもらって構わないから持ち帰りの箱を2つ下さいと頼んで快く交渉を成立させた。
氷も大量にあるので喜ばれた。
冷蔵庫には“菓子の出る勢いが早く、冷蔵庫が開いたためガーネルに譲りました。ソルレイ・グルバーグ”と書いた紙を貼った。
薄皿も貰えたためそのまま箱に入れると、カルムスが高等科の教務課に行って贈るよう手配をして来るという。
「確か横笛を汚らわしい楽器だとソルレイを失格にしたのは、ルーイ・ビルジナスだったな?」
「うん。不合格にしたから受け直せないって言われた。いつもはコーリン先生だったんだ。試験の当日は知らない先生が来た。後で抗議しますって言ったけど、試験が多くて忘れてた。満点から落ちちゃったね」
元々、前期試験は免除のはずだった。ルミオルベを演奏するからというユナ先生との約束だったのだ。
学年末にお爺様になんて言おうかな、と頬をポリポリと掻く。
「ああ。いいぞ。俺が呼び出して抗議しておく。これも今すぐ届けろと言っておこう」
「え?」
「そうですね。試験をする前に失格にしたのだから当然です」
「そのコーリンも同罪だ。一緒に運ばせよう」
俺が呆気にとられているとクラスメイト達が来た。
交代の子達だ。
「じゃあな」
「ラウルツ様の方も見ておきますね」
「え? ああ、うん! ありがとう!」
皆に冷蔵庫を譲った話と、鑑定をして貰った話をしてここにあるのは何もされていないので試食で出そうと話した。
昼になったので、来てくれた4人にレモネードと凍らせたお茶の話をして2台の台車で持って行ってもらった。
昼の様子を見て来て欲しい、昼ご飯で人はいないかもしれないけど、と笑いながら送り出したが、一人だけ伝令に帰って来た。
「昼なら空いていると思ったようでガーデンの方が並んでいます!」
「あ。逆に狙い目だと思ったのか」
「それにジュレのセットとケーキのセットを頼む人が多いそうです」
「なるほど。大人買いならぬ大人注文か」
セットのお茶を無駄にしてもいいという判断だな。
待たれているとノエルのことだから気にするだろう。
「悪いけどもう一度伝令に行ってくれる?」
「はい!」
「並んでいる人に時間の書いたチケットを渡して、その時間に来るなら確実に入れるようにする。整理券だ」
「ああ! 交代制だからですね!?」
「そうそう。遅れたら入れないし、紙を失くしても入れない。渡した人が覚えていたら別だけどね」
紙で整理券を作る。
1時間ごとだ。
16時で終わりの為、15時が最終の入店になる。
16席分を作った。
「ノエル様に渡して。“並んでいる人が気になるならこれを並んでいるグループ順に配布して下さい”と。失くしたら権利を失うから注意してって言ってね」
全部配布したら持っていない人は入店を断ることになる。
もしくは迎賓館との調整になると思う。
「分かりました!」
俺は、持ち帰られた迎賓館のデキャンタやピッチャーに次のレモネードを作るのだった。
お茶もケトルに作って水のボウルに浸けておく。
13時になって最後のジュレを運べば、俺の仕事は終わる。
そう思っていたのが、誰も戻らず40分後に違う4人が来た。
「ソルレイ様! ジュレはできていますか!?」
「うん。できているよ。俺一人だからどうしようかと思っていたんだ。ドリンクを運んでもらったんだけど忙しいのか誰も戻って来ないから……」
1時間経つのでそろそろ誰か来るかと思っていたと笑う。
「!?」
「それで行ってくれ、と頼まれたのか」
「レモネードとお茶を運んでもらったんだ。取りに来たのはジュレ?レアチーズケーキってそこに沢山入っているけど出ない?」
残ったら皆で食べてもいいな。
「いや、出ています! 足りなくて迎賓館から移動させていますね。子供はジュレの方が、人気があるらしいので」
「往復で運んだほうがいいな!」
「女子に声をかけられてもノエル様の命だと言うぞ!」
「そうだな!」
そんな感じなのか。
皆が出て行ったので、2年生に声をかけてクレープを売ってもらった。
お腹が減ったのだ。
皮だけもらい余っている卵でスクランブルにして自分で作るのだが、甘いのも欲しいなとラウルとノエル分も含め3つもらって、冷凍庫で冷やした。
お金はファリスで支払う方がいいか聞くと、お願いします、と言われた。
ボウルに見せる用に作ったジュレは18時頃になるなと思いながら完成させ冷蔵庫に入れた。
2往復目に、
「このジュレは鑑定して試食用になったから、運び終わったら違う4人にこっちに来てくれるように頼んでくれる?」
「食べたいです」
「俺も食べたいです」
「安全が確約されたなら食べたいです」
試食はお金を持っていない平民用だと伝えた。
「どうせなら、凍っている方を試食して欲しいんだけど…」
1度も試食されることなく、迎賓館で眠っている方を言う。
「あ!忘れてましたね!」
「迎賓館の冷凍室で凍ったままだよ。大人用と子供用の2つずつあるから32切れずつだね」
「ローズガーデンが暑いのでそのまま出しましょう!」
「え? 試食は?」
「大丈夫ですよ!氷菓だといいます!」
「今の時間限定だと言いますよ!」
「うーん。苦情は出ると思う?」
大丈夫です!と合唱され、折れた。運んだらここで試食のジュレを食べに戻ってくるといいと話した。




